第302話 砂漠で荒ぶる因縁の魔獣
工事を進める僕たちの前に現れた魔獣――僕が作った城に近い大きさの巨体で下半身は牛、上半身は屈強に男性といった姿だった。頭には湾曲した角が生えていてギラギラした瞳を僕たちに向けてきている。
「な、なんだか凄そうなのが出てきたよ」
「ス~――」
スーも不安そうにしているよ。ここまで順調に来ていたのに突然すぎるよね。
「チッ、また面倒なのが出てきたもんだね」
リタの声がした。厄介そうなのは確かだけど口ぶりからしてもしかして知ってる相手?
「リタあの魔獣が何か知ってるんですの?」
僕と同じ事を思ったのか妹のモルジアがリタに聞いてくれたよ。
「……あれはバルバトスって魔獣さ。ちょっとした因縁がある相手さ」
「ムッ。その声、貴様イフリータか!」
リタが答えるとバルバトスが声を上げてリタに目を向けた。どうやら本当に知り合いみたいだね。
「はぁ、気づかれたか」
「やはりそうか。しかし少し寝てる間にまさか人間なんかと一緒にいるとはな。一体どういう風の吹き回しだ?」
「そんなことあんたに関係ないだろう」
バルバトスからの問いかけにリタが素っ気なく答えた。バルバトスが不機嫌そうに眉を顰める。
一見すると険悪そうだけどこの魔獣は言葉だって通じる。それなら――
「待ってください! 僕たちは無益な争いをのぞんでいるわけじゃないんです」
バルバトスとリタの会話に僕は割って入った。見たところバルバトスは言葉が通じる相手だ。それなら話し合いの余地はあるかも知れない。
「なんだこのちいせぇ人間は?」
「やめな! 余の今の主だよ!」
リタがバルバトスに向かって声を上げた。それを聞いたバルバトスの瞳が大きく見開かれたよ。
「こんな人間がお前の主だと? おいおい一体どうしちまったんだお前は」
「あ、あの。話を聞いてもらっても?」
バルバトスが怪訝そうにしていてリタの顔が曇った。なんとなく今は僕の話を聞いてもらった方がいい気がした。
「なんだ人間風情が俺様に何のようだ」
「その、縄張りについてなんですが、僕たちはただここに地下水路を作りたいだけなんです」
「あん? 地下水路だと?」
バルバトスの興味が僕に向いた。チャンスだと思い僕は一通り現状を説明した。
「つまり水を流す為になんか色々やってるというこったな」
「そ、そうなんです! ですのでその間だけ少しうるさいかも知れませんが迷惑は掛けませんので工事を続けさせて欲しいんです」
そうバルバトスにお願いしてみた。一応このあたりはバルバトスの縄張りらしいし、もしかしたら対価を求められるかも知れないけど、そこは仕方ないと思う。出来るだけ揉めないよう話をまとめたいと思うよ。
「そういうことか――いいぜ。許可してやっても」
「え? 本当ですか!」
バルバトスの答えに安堵した。これは話せばわかるタイプかもしれないよ。
「ただし条件がある」
あ、やっぱりそうきたね。そこは予想していた。流石に何もないとは思えないからね。
「条件ですか。とりあえず聞かせてもらっても?」
「別に難しい話じゃないさ。今この場にいる女を全部俺によこせ。ついでにイフリータの主もやめろ。代わりにそいつも俺様が貰ってやる」
「……はい?」




