第280話 砂漠の扉男
リタの魔法でセサミが炎に包まれた。リタの核炎魔法は強力だ。このままだともう骨も残らないかも……
盗賊とはいえ、気の毒かもと思えてしまうのが僕の甘いところなんだろうか……そんなことを考えていたらリタが生み出した炎が何かに吸い込まれるようにして消え去ってしまった。
「ぐ、ぐぞがぁあぁああ!」
リタの炎が消え去った後にはぼろぼろになったセサミの姿があった。体の多くがが炭化してしまっていて、足も一本失っている。この状態で生きてるのが不思議なぐらいだけど、セサミは片足で器用に経ちながら語気をを強めていた。
だけど、何より驚きなのはセサミの体が扉そのものに変化してしまっていたことだ。扉は開きっぱなしで中にはただ闇だけが広がっていた。
「まさか余の魔法を受けてまだ動ける余裕があるとはな」
「はは――危なぐぁったずぇ。扉で魔法をぉ、ぎ、吸収してぃ、ぬぁければなぁ、ゴホッ」
口からあぶくとなった血を吹き出しながら喋っている。あれはもう精神だけで立っているって感じだよ……
「なるほどなんとか凌いだということか。だが、その体ではもう戦うどころか、貴様の命も風前の灯だろう」
どこか哀れんだような目で、スイムが語りかける。確かにあの傷じゃ戦うのは不可能だし勝負は決しただろう。
「か、かか、あむぁいん、づぁよ!」
だがセサミは体の扉から瓶を取り出した。宝石のように輝く青白い液体が詰まっている。
そしてセサミはそれを口に含み一気に飲みほした。
「何だ? 何を飲んだ?」
「ほう――さては貴様……」
リタが興味深そうに呟く。すると液体を飲み干したセサミの体に変化。炭化して消え去った筈の部位が再生され傷も癒えていったんだ。
「はは、やったぜ。流石エリクサーの効果は絶大だ!」
エリクサーたしかそれって……
「むぅ聞いたことがあるぜ」
「おやおや、知っているのかライゴウ?」
ライゴウが思い出したように口にしたところでクロールが反応した。
ライゴウが大きく頷き説明してくれる。
「エリクサー――伝説の霊薬とされていて飲めばどんな傷や病でもたちどころに治してしまう奇跡の薬だ」
「それで怪我も治ったのか――」
「でもどうしてそんな貴重な薬を?」
ベアードとヘンデルが興味を示した。すると聞いていたセサミがニヤッと口元を歪めて答える。
「これまでさんざん奪ってきたからな。中にはこういった希少な品を隠し持っていた奴もいるってことよ」
「なるほど。ですが、それならばそう何本も持ってるものではないでしょう。いや、もう持ってないと考えるべき」
「だったら簡単なことよ」
言うが早いかリサが輝く火炎弾を撃ち込んだ。だけど、リサの魔法は扉に吸い込まれて消えてしまう。
「あっはっは! 無駄だ無駄だ! これが俺様の拡超扉魔法・開け護魔。この扉がある間は一切の魔法も攻撃も吸い込み続けるぜ。そして――」
セサミがパチンッと指を鳴らすと周囲に大量の扉が生まれる。て、一度にこんなに!?
「馬鹿な。一度に開ける扉は一つでは?」
「ふん。そんな制限は消えたのさ」
「なるほどな。それが貴様の拡超魔法の効果か。だがそれだけの効果がある以上、そう長くは維持できまい」
リサが一考した後、言い放つ。確かに攻撃が一切効かないというのは強力だけど、永久に効果が及ぶとは思えない。
「――ふん。だったらその前に決着をつけるだけだ。いでよ!」
セサミが叫ぶと扉から獅子や竜や巨大な鷹のような魔獣が次々と顔を出してきた。
「くそ、また魔獣か!」
「やれやれ。お前は馬鹿か? そんなもの余の魔法でけちらしてくれる」
リサが一歩前に出て断言した。う~ん実に頼りがいがある。
「何も考えずに襲わせたらそうだろうな。だがそんなミス俺がおかすかよ!」
そう言うと同時に扉から頭だけを出した魔獣達が炎や竜巻や電撃で攻撃してきた。うわわ、量が多い!
「チッ、あいつ扉から出さずに砲台にしやがったのか!」
「そういうことだ。幾らお前たちが強かろうとこれだけの魔獣の攻撃をしのぎ切れはしまい!」
セサミが高笑いを決めた。確かにこれは厄介だけど――
「馬鹿が!」
リタが魔法を連射する。強力な魔法でセサミを中心に大爆発まで起きたけどセサミも魔獣も無事だった。
「魔神と言う割におつむは弱いようだな。言ったはずだ! この扉があるかぎり魔法も含めて一切の攻撃はきかん!」
セサミは随分と強気だ。一切の攻撃が効かない? 全てあれに吸い込んでしまうということか――吸い込む?
「そうか!? ならこれでどうかな! 砂魔法・大砂波!」
「ス~!」
肩の上のスーも腕を前に突き出して気合を入れた。僕の魔法で砂が巨大な波となってセサミに襲いかかった。
「馬鹿が! 聞いてなかったのか!」
しかし、大量の砂はセサミの扉に吸い込まれていく。凄い吸引力だ。
「ふん、貴様は本当に無能だな。それでも王か?」
「そのつもりだよ。そしてこれで勝負は決まった」
「カカッなるほど。流石は我が主。余の目に狂いはなかったか」
僕が勝ちを宣言すると、リタも感心したように言ってくれた。
「は? 馬鹿か。貴様は何を――て、この砂いつまで?」
「いつまででも。この砂漠に砂がある限りね」
「――は?」
セサミが間の抜けた声を発した。その間も砂はどんどん吸い込まれていく。
「や、やめろこの馬鹿! 無駄だと言ってるだろうが! えいお前らあの馬鹿をまっさきに殺せ!」
魔獣が一斉に僕に攻撃してきたけど、それも想定内。僕への攻撃は全てスーの砂の防御で防がれる。
「皆は下がっていて。後は僕がなんとかするから」
そして皆に僕の意志を伝える。一方でセサミが苦虫を噛み潰したような顔を見せていた。
「お、お前どういうつもりだ!」
「見てのとおりさ。僕はリタのおかげでパワーアップ出来た。魔力もこれまでと比べ物にならない。だからこのぐらいの砂なら一日中流し続けても大丈。だけど君はどうかな?」
「ぐっ、し、しまっ!」
どうやら気がついたようだね。リタの言っていたとおりその状態はきっとそう長くは続かない。問題は効果が切れた後だ。魔法であれば消えるだけかもしれないけど、この砂は実際そこにあるものだ。
体に扉を作った状態で砂を飲み込み続けそして魔法が切れたら――そしてそれは間もなくして来た。セサミの扉が閉まっていきそして――
「ち、ちくしょう、ぐぼらぁあああぁおおぉぉおぉぉおあおぁあらあッ!?」
すべての扉が消え、そして後に残ったのは顔も腹もパンパンに膨らんで倒れたセサミの姿だったんだ――




