第271話 砂漠で覚醒する砂
――己の力を信じよ。砂に身を任し委ねるのだ。
そんな声が脳裏に浮かび上がった。そんな気がした。砂を感じ、砂と一体化する感覚。何かが変わった僕の中で何かが開けたようだ――
そして僕が生み出した珪砂の鏡はイフリータの輝く炎を受け止めて、跳ね返した。
「何ッ!?」
眼を見張るイフリータ。彼女の放った魔法は彼女自身が受け止めることとなった。
光り輝く炎にイフリータが飲み込まれる。凄まじい熱量を感じた。
「えっと、これ彼女は大丈夫なのかな?」
「ス、ス~……」
いやイフリータが使用する元々の魔法が凄いのだけど、自分自身の炎でやられちゃったとか、そんなことは、えっと、ないよね?
ちょっと不安になった僕だけど。
「クククッ、あ~はっはっはっは!」
段々とその姿が顕になりイフリータが突如大笑いを始めた。それにしても、杞憂すぎたね。見たところ怪我どころか軽い火傷すら負ってない。
「小僧、やるじゃないか。久しぶりに余の胸が高ぶったぞ」
「えっと、それじゃあ認めてくれますか?」
「ス~!」
どうやら僕の魔法を認めてくれたみたいだ。このまま無難に試練突破ということに――
「あぁ認めてやろう。好敵手としてな。さぁその力でもっとお前の強さを見せてみろ。言っておくが余は自分の炎ではやられんぞ。言うことを聞かせたければ、お前自身の魔法で余を屈服させてみろ!」
く、屈服って……うぅ、でもただ守ってても納得はしてくれなさそうだよ。
仕方ない――今ので感覚はつかめた。後は上手く応用して……
「ムッ?」
砂に自然と包まれ魔力が満ち足りていく。頭の中に新たなイメージ。
「拡超砂魔法――八砂ノ大蛇」
自然と魔法の名称が口を衝いて出た。砂、砂鉄、砂金、魔法の銀砂、金剛砂、珪砂、塩砂、砂糖――八種の砂が大蛇となり鎌首を擡げてイフリータを見た。
「ククッ、拡超魔法の域にまで達したか。この短時間でやるではないか」
嬉しそうにイフリータが微笑んだ。綺麗なんだけど――怖い。
「ならば余も見せてくれようぞ。拡超核炎魔法・輝焔の鳳翼!」
イフリータが両手を広げた。かと思えば輝く焔が翼のように広がり更にイフリータの全身に焔が纏われ巨大な輝く火の鳥となってこっちに向かってきた。
「ス~!」
「大丈夫!」
向かってきた火の鳥へ、僕が顕現させた八つの大蛇が立ち向かう。火の鳥に巻き付き締め付けていった。向こうの鳥も暴れている。
だけどさっきと違って焔に砂が焼き尽くされることはない。イフリータの魔法は拡大解釈による理さえも燃やし尽くす焔。
だけど僕も拡大解釈に目覚めた。その上向こうも拡超魔法で僕も拡超魔法だ。条件が同じなら後は相性の差が大きくなる筈。砂と火なら砂の方に分がある!
案の定、イフリータの輝く焔を受けても八つの砂の大蛇は燃えることがなかった。グイグイと火の鳥ごとイフリータを締め付けていく。
そして――
「クッ!」
焔が散り、剥き出しのイフリータに僕の大蛇達が絡みつく。
「こ、これで負けを認めてもらえますか?」
完全に動きを封じられたイフリータに問う。今度こそもう抜けられない、筈。
「ククッ、なるほど。しかしこれでまだ認めてなかったらどうする? こんなに股を開かせてどんなお仕置きがまっているのだ?」
「は?」
あ、改めて見ると……別に狙ったわけじゃないけど大蛇に縛られてイフリータは大きく両手両足を開いた状態だ。
うぅ、そ、そんなこと言われたら急に卑猥なことをしているような気持ちになってきた。
「フンッ!」
「あ!」
顔が熱くなって俯いた瞬間、イフリータが砂を引きちぎって拘束から抜け出てしまった!
「ククッ、拡大解釈を維持するには強い集中力が必要なのだ。その辺りまだまだ甘いようだな」
「あ、うぅ……」
「ス~……」
スーも肩の上でやれやれと首を振ってるよ。確かに今のやりとりだけで僕の集中力も途切れてしまった。
「――とは言え。不覚にも完全に身動きを封じられてしまったのは確か。拡超魔法もやぶられたのだし、仕方ない。負けを認めてやろう。貴様の勝ちだ」
「え? か、勝ち――僕の?」
「ス~!」
イフリータが負けを認めた。スーが肩の上で踊るように喜んだ。はは、どうやらイフリータに認めて貰うことが出来たようだね。
よ、よかった~……




