第270話 砂漠で試練を乗り越えろ!
イフリータが拡大解釈というのを教えてくれた。
これが扱えるようになると魔法の常識がひっくり返るらしい。
そしてすぐにそれを僕に使えと言われてしまった。
「ほらほらどうした! 早くやってみせんか!」
「いやいや! そんなこと突然言われても!」
「ス~!」
イフリータの輝く焔が四方八方から迫ってくる。避けるだけで手一杯だ。ただ、これでもきっと手加減してくれているんだろうな。そうでなかったらとっくに詰んでそうだし……
「何を甘えたことを! 大体貴様は既にそれに片足を突っ込んでおろうが。出来ない理屈はないぞ!」
「え?」
「ス~?」
僕と肩のスーが顔を見合わせた。僕がイフリータの言っている拡大解釈を身に着けているってこと?
「えっと、あまり覚えがないのだけど……」
「だからチャンスをやったのだ。貴様は理屈も知らず無意識にそれに近いことをやっていた」
「そ、そうなの?」
「でなければ。砂以外の物さえも自在に操るなどできはせんだろうが」
す、砂以外……もしかして銀砂の事を言ってるのかな?
「えっと、銀砂のこと? あれは一応砂だから出来ないこともないと思うのだけど……」
「馬鹿を言うな。普通は砂と言えばただの砂だけのことを言うものだ」
「え? でも砂鉄ぐらいは扱えるよね? あと塩の砂とか宝石の砂とか……」
「無自覚にも程があるぞ」
「え~……」
「ス~――」
どうやら僕が砂魔法で扱っていた砂は普通ならありえないことだったらしい。言われてみれば確かに僕も最初は砂しかつかってなかったけど……
「魔法とはどれだけ自らと一体化し対話出来るかに掛かっている! さぁ見せてみろお前の真の力を! 核炎魔法・輝焔の網賽目!」
イフリータの手から網状の輝く焔が放たれた。あたったら絶対ヤバい奴だねこれ!
「砂魔法・四重砂合壁!」
「ス~!」
魔法で壁、一つじゃ時間稼ぎにもならないから四つ重ねて見た。
壁が全て賽の目のようになって崩れ落ちていく。だけど多少は動きを止めることが出来たから当たらずにすんだ。
「あんなの喰らったら……僕の体がバラバラになっちゃうよ」
「ふん。お前らのサイコロステーキが出来ていたことだろう」
「ス、ス~……」
スーがガタガタと震えていた。気持ちはわかるね。スーがサイコロのように……うん。あまり考えたくないね。
「お前はそうやってずっと逃げているつもりか!」
イフリータが叫ぶ。美人だけど、それだけに怒ると怖そう……でも、逃げてばかりか――
確かにずっと逃げていてもジリ貧だ。それにイフリータに見限られたらきっとすぐにでも僕は燃やし尽くされる。
イフリータは言った。魔法と一体化し対話出来るか、と。
そういえばロキにも言われたことがあった……
『坊主はもっと自分の武器を知った方がいいぞ。それと――もう少し自信が欲しいところかもな』
『武器を知って、自信をつける?』
『そうだ。特に見てて妙に後ろ向きなところを感じることがある。坊主は王だ。皆を守れる王になりたいなら時には民の為に矢面に立つこともある。より強大な相手と相対することもあるだろうよ。そんなときに果敢に立ち向かうためには何より自信が必要だ』
『……王として、か――』
『そうだ。坊主は民を犠牲にして逃げるタイプではないだろうが自信がない分自己犠牲に走りそうなのが怖いところだ。だから坊主絶対の自信を身に着けろ。俺のように自信が身につけばいくらでもおっぱいにむけて飛び込める!』
『いや、それは王として言わせてもらえば止めて欲しいのだけど――』
「……ふふっ」
「ス~?」
思わず笑みが溢れた僕の顔をスーが不思議そうに覗き込んできた。
はは、ロキは不謹慎なところもあるけど大事なことはしっかり教えてくれていた気がする。
「随分と余裕があるではないか」
「――うん。もう逃げない!」
「ほう――少しはマシな目になったではないか。それなら見せて見よ! 核炎魔法・輝焔の覇道!」
突き出したイフリータの右手から光線のように輝く焔が勅撰してきた。
「砂魔法――」
迫る焔を見据え、僕が魔法を行使すると正面にキラキラした壁が出来上がった。
「見損なったぞ! それでは今までと何も変わらないではないか!」
ムッとした顔を見せるイフリータ。確かに見た目は――でも違う。
「ただの壁じゃない! 反砂鏡だ!」
そう――壁じゃない。珪砂を利用して鏡化した砂。
「むっ、鏡ということか。だが愚かな。余の焔は理さえも燃やし尽くす。鏡程度でどうにかなるなど、むっ!」
輝く焔が僕の鏡に受け止められた。イフリータが驚いている。そう。確かに普通に珪砂を使っただけじゃ意味がない。だから僕は決意した。そして自らの力を信じて理さえも跳ね返す――砂鏡を作り出す!
「跳ね、返せーーーー!」
「スーーーー!」




