第269話 砂漠でイフリータの試練
プールの色気が通じない相手が現れた。理由は相手はガチムチな男でありお兄様タイプやショタが好きというつまりそういうことだった。
「何かとんでもない相手な気がするにゃん!」
ペルシアが不安そうな顔を見せた。他の連中は大分倒したのだがたった一人の兵が加わるだけで戦況が傾くことだってある。
「猩猩漢魔法――猩猩猩猩!」
「おお! 出るぞゴリ姉さんの猩猩漢魔法!」
まだ立っている生き残りが叫ぶ。どうやら名前もゴリなようだ。
「いや姉さんって……」
「そう言わないとめっちゃ切れられる!」
目を細めるプールだが、皆がこわごわと声を上げた。どうやら仲間からも一目置かれる存在なようだ。
「ウフフ――どう? この完璧なボディ!」
そして魔法によってすっかりゴリラになったゴリが決めポーズで自信を覗かせた。
「予想はしていたけどまんまだったにゃん」
オイールらを相手していたペルシアですら思わず叫ぶ。
「えぇ。でも甘いわね。うちには獣になる魔法が使えたり先祖返りで獣化する仲間がいるのよ。そんんなのもう没個性ね!」
プールがビシッと言い放った。確かに獣化出来る仲間は多い。何なら逆に人化してしまう仲間もいるほどだ。
「ウフフ。獣化ですって? 私の魔法をそんじゃそこらの獣化と一緒にしないことね! 私の魔法は一度この姿になってしまえば後はゴリラに出来ることは大体何でも出来るのが特徴なのよ!」
「にゃん! ゴリラに出来ることは何でもかにゃん!」
「そう例えばこれよ! ゴリラ召喚!」
そしてゴリが突如胸をゴリゴリ叩き出した。いわゆるドラミングだがなんと、するとどこからともなくゴリラが現れ全部で五体になった。
「うふふ、どう?」
「それゴリラが出来ることじゃないわよね!」
「いきなり前提条件覆してきたにゃん」
プールが驚きペルシアも疲れた顔を見せた。しっぽがぺたんとなっている。
「ゴリラは細かいことは気にしないのよ!」
「逆にゃん! ゴリラはとても繊細で神経質にゃん!」
「細かいことは気にしない! いくわよ拳戦王震走」
ゴリが拳を地面に付け殴るようにしながら走ってきた。その度に衝撃波が撒き散らされていく。
「きゃぁあああああ!」
「プールにゃん!」
プールがふっ飛ばされる。
「はは、さすがゴリだぜ。あいつをこっちにつけて正解だった」
「にゃ、にゃんこうなったこっちも早く片付けるにゃん!」
「そうはいかねぇぜっと!」
オイールの魔法で飛ばされた手が、ペルシアのマジッククロスボウを奪っていく。
「にゃん!? 腕に固定されていた筈にゃん!」
「俺の投手魔法にはそんなの関係ねぇのさ。何なら嬢ちゃんの着ている服も纏めて奪ってやろうか?」
「にゃん! 変態にゃん!」
ペルシアの毛が逆立った。しかしゴーレムもまだ倒しきれていない。この状況はかなり不味いと言えるだろう――
◇◆◇
「ほれほれどうした。そんなことでは余になど到底勝てはせんぞ!」
イフリータとの戦いが始まってしまったよ。光輝く炎は僕の砂魔法でもガードしきれない。
炎だから砂鉄を利用しても間違いなく無理だしね。なら本体をどうにかするしかないね!
「砂魔法・銀砂縛!」
「ムッ!」
砂でイフリータを束縛する。使ってる砂は魔銀の砂だ。魔銀は魔法に対して耐性がある。
「これで動けないよね? 大人しく負けを認めてくれると嬉しいのだけど」
「ス~!」
僕とスーで降参を促す。かなりキツめに縛っているしそう簡単に抜けられはしないはず。
「貴様こんなもので負けをだと? 余を愚弄するつもりか! 核炎魔法・輝焔の噴華!」
イフリータの体から輝く炎が噴出した。まさに噴火であり炎の形は確かに華と言える美しさだった。
て、見とれてる場合じゃないよ! 砂が消滅したし!
「僕の砂があっさり……」
「ス~……」
肩の上ではスーが不安そうにしていた。イフリータは首をコキコキと鳴らしながら僕をジッと見ている。
「この程度で本当に貴様はあのスフィンクスを倒したのか?」
いやいや! 実際に戦ったわけじゃないからね!
「全く。拡大解釈も随分と中途半端なようだしな。こんなもので余を何とかしようなどと舐められたものだ」
確かに魔神だけあって強い……でもちょっと気になる言葉が……
「えっと、あの、ところでその拡大解釈というのは一体?」
「何?」
イフリータの眉がピクンっと跳ねた。えっと、何か不味いこと言っちゃったかな?
「……まさか貴様は知らんのか?」
「は、初めて聞きました」
「……つまり拡大解釈を知らず今の魔法を使っていたと、そういうことか……」
なんだろう? 知らなきゃ不味いことだったんだろうか? 顎に手を添えて何か考えているし。
「――本来なら魔法というのは万能ではない。出来ることにも限りがある。例えば火魔法であればどれだけ鍛錬をつもうと燃やせる範囲には限度がある。また燃やすという事以外に出来ることはそこまで多くはない」
まぁ確かにそれはそうだよね……
「しかし、拡大解釈を身につければ魔法における常識をひっくり返すことも可能だ。余の核炎魔法などこの魔法そのものが拡大解釈として出来ている理を破壊する炎――わかったか?」
「え? は、はい。ありがとうございます」
「ス、ス~」
よくわからないけど僕もスーもお礼を言った。でも結構親切な魔神さんだね。
「そうかならば。使え」
「え? つ、使え?」
「そうだ。教えてやったんだからさっさと拡大解釈をものにしろ。もう少しだけ遊んでやる。ただし余の気分次第であっさり消し炭すら残さない程に燃やし尽くされることも覚悟しとけよ!」
「えぇーー!」
「スーー!」
そんなぁ。今聞いたばかりなのにすぐに使いこなせなんて――




