第267話 仕方のない犠牲
バラムドーラ王国内部にまでゴマ盗賊団が入り込んでしまっていた。おまけに警備に当たっていたゴーレムも暴走し暴れまわっている。
「くそ、こんなことになるなんてな。こうなったらもう多少の犠牲は仕方ないか――」
操られているゴーレムは多く、更に盗賊の姿もある。町に残っていた騎士とアローネや獣人の皆も頑張ってくれているがこのままではジリ貧だ。
サーチも塔の上から援護するが限界がある。だからこそ、サーチには決断が必要だった。
現状彼だけに許された権限がある。それを行使する時が来た。
「お前ら!」
サーチが声をあげ、直後空に向けて何かを打ち上げた。それは信号筒という魔導具だった。
使用すると魔力の弾が飛び空中で炸裂発光する。
これは攻撃にではなくある種の合図を知らせるために行うものだった。
そしてまもなくして――サーチの眼下で次々と爆発が起きた。戦車からの大砲による援護だった。
信号筒による合図はこの為にあった。いざとなったらロキの砲撃でバラムドーラを爆撃してもらう算段だったのだ。
「くっ、みんな済まねぇ!」
「仕方ないですよぉ~」
サーチが叫ぶと砲撃の範囲外に出ていた人々が声を上げた。誰一人死傷者は出ていない。いざとなった時に砲撃が行われることは彼らも事前に聞いていたからだ。しかし、折角作り上げた道路や建物の一部は被害は免れない。
サーチが気にしたのはそこだったが壊れた物は直してしまえばいいだろう。
「でも、ゴーレムも一気に減ったよね……」
アローネがやれやれといった様子で零した。だがその時だった。バラバラになった砂がまたくっつき元のゴーレムに戻ってしまう。
「な! ゴーレムが!」
「そんな……これじゃあ意味が……」
「くっ、よくもやってくれたな! ゴーレム全員ぶっ殺せ!」
爆発の中でもまだ動ける盗賊は何人かいた。そんな連中がゴーレムに命じる。
だが――ゴーレムはすぐさま盗賊共に向かっていき攻撃を加えた。
「な、待て待て! なんで俺たちを!」
「そんな操られていた筈、ぎゃぁあぁぁああ!」
こうしてゴーレムによって生き残っていた盗賊も排除された。
「へ? どうなってるの?」
「は! そうかおいらわかったっす!」
チャガマが叫ぶ。何かに気がついたようだ。
「きっと、一度壊れたことで状態異常が解けたっすよ! それで元に戻って盗賊を敵とみなしたっす!」
「おおなるほど。流石王の魔法だな!」
サーチが安堵し、この場にいないホルスに感謝した。
とにかくこれでこの場にいた盗賊は退治出来た。だが、肝心のゴーレムを操っていたオイールがこの場にはいなくなっていたわけだが――
「ちょっとあんたら何!」
「にゃ! こっから先は立ち入り禁止にゃ!」
城の前でプールとペルシアが入り口を塞ぐようにしてやってきた盗賊たちを威嚇していた。
だがそんな二人を見る盗賊の目は好色に満ちている。
「へへ、なかなかいい女じゃねぇか」
盗賊達が値踏みするように二人を見ていた。ペルシアも今は人化状態だ。故に自然に盗賊の目を引く。
「この状況でもこんだけ守りを固めていたってことは、ここがそれだけ大事な場所ってことだろう?」
「そ、そんなことないにゃ!」
「ここには何もないわよ!」
ペルシアとプールが彼らの推測を断固否定するが、否定すれば否定するほど怪しく思われてしまっている。
「それにこんだけゴーレムもいたしな。ま、全てもうこっち側のもんだが」
ニヒッとオイールが醜悪な笑みを浮かべた。そう城の前を守っていたゴーレムもオイールの魔法で操られてしまったのである――
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