第262話 砂漠の扉の中
「う~ん、えっと、ここは?」
「ス~! ス~!」
目が覚めるとスーの声が聞こえてきた。そういえば僕は魔法を受けて扉の中に引きずり込まれたんだった。そのまま気を失っていたみたいだ。
だけど体は無事みたいで怪我もなさそう。スーの声が聞こえるから酷いことにはなって――
「キシャァアァアアアアアア!」
「ま、魔物!?」
「ス~! ス~!」
そう安心している状況でもなかった。赤い皮膚をしたカマキリみたいな魔物に囲まれている。発狂したように大鎌で何度も攻撃してきていた。だけどスーの防御のおかげで無事だったみたい。
「ありがとうスー。砂魔法・砂欠泉!」
魔法で砂を拭き上げ魔物を吹き飛ばした。ふぅ、それにしても扉に引きずり込まれるとき砂も引き寄せておいたから良かった。
砂があったからスーの力で防御出来たんだろうね。だけど今の魔法で砂が飛び散った。このままだと戦えない。
「ス~!」
スーが可愛らしい手で指し示す。あの赤いカマキリが起き上がって向かってくる。
今のじゃダメージがないのか。どうしようこのままじゃ、いや!
「そうだ。ペルシアから受け取っていた袋――」
思い出した。魔法の袋。この中に予め砂を詰め込んでおいたんだ。
「よし、これで戦える。砂巨烈拳!」
袋を開いたままにして砂を開放。巨大な砂の拳を打ち込んでやった。カマキリを殴りつけるけど、まだ起きてくる。
あれ? あまり効いてない?
「「「「キシャ~~~~~~~!」」」」
こいつら砂程度じゃびくともしない。結構頑丈だ。そして今度は大鎌を飛ばしてきた。大きなカマキリだけに鎌も大きい。
「砂魔法・砂壁!」
回転しながら飛んできた鎌を壁で防ぐ。攻撃は砂でも防げそう――
「キシャァアアァアアア!」
「ス~!」
後ろ!? 壁を作ったのを確認して瞬時に回り込んだのか。本当にスーには助けられてばかりだ。自動防御がなかったらここに引きずり込まれた時点で詰んでたかもしれない。
だけど、こいつら普通の砂だと効果が薄い。それなら――
「砂魔法・砂巨烈鉄拳!」
袋にはいろいろな砂を入れておいた。砂鉄もその一つだ。砂鉄の拳は砂より強烈だ。カマキリが吹き飛び壁の中にめり込んだ。
「キシャァ……」
「もう一発!」
更に砂鉄の拳を叩き込む。これで完全に息絶えた。
「キシャァアアァアァア!」
「残り三匹! 砂魔法・砂鉄大槍!」
魔法で生まれた砂鉄の大槍がカマキリの魔物を貫いていった。ふぅ、これで倒すことが出来たよ。
でも、改めて僕は周囲を見るけど。
「天井が高いね。壁もあって柱も見える。造りは随分しっかりしている。これが扉の中なんてね」
「ス~――」
スーが不安そうに口にした後、ヒシッと僕の首に抱きついてきた。僕が気を失っている間、怖い思いをさせたかも。
「ありがとうスー。おかげで本当に助かったよ」
「ス~♪」
撫でてあげると嬉しそうに目を細めた。でもスーがいてくれて本当に良かった。気持ち的な意味でもね。やっぱり一人っきりよりは誰かがいてくれると安心感が違う。
「それにしても……」
扉の中以外は本当何もわからないな。ただ、これって雰囲気的に迷宮っぽい気がするんだよね。
以前攻略したダンジョンも似たような雰囲気があったし。でも、だとしても何で扉の中にダンジョンが? わからないことばかりだけど――
「とにかく探索して見るほか無いね。出口を探さなきゃだし」
「ス~!」
うん。スーも張り切っている。そして改めて僕たちはこの中を見て回ることにした――
◇◆◇
「チッ、ありゃゴーレムか? 面倒だな」
セサミの魔法によってオイールはオアシスの近くにまで来ることが出来た。その上で目的の奴隷確保のため動き出すが町の前では砂や砂鉄で出来たゴーレムが目を光らせており侵入者を阻んでいた。
「どうしやすか?」
「そうだな。だったら逆に利用するか――」
部下に聞かれニヤリをオイールが口角を吊り上げる。そして気配を消してある程度近づき魔法を行使した。
「――ッ!?」
飛んできた手に気がつくゴーレムだがその時には既に手がゴーレムを貫通していた。
もっともゴーレムに損傷はない。壁をすり抜けるように手が抜けたからだ。
そしてゴーレムの動きが止まる。
「おい! こっちへ来い!」
オイールがたった今攻撃を仕掛けたゴーレムに呼びかける。するとゴーレムはその言葉に従いオイールの前までやってきた。
「はは。どうやら上手くいったようだぜ」
「流石オイール隊長。どんなものでも盗める盗手魔法は最強ですぜ!」
「ばかいえ。ボスがいる限り最強なんてありえるかよ。だけど、まぁ俺も伊達に拡大解釈に目覚めてないからな――」
そう言って不敵に笑う。以前のオイールの魔法は飛ばした手で掴んだ物をかすめ取る程度だった。しかし拡大解釈のおかげで盗める対象は物体だけではなくなり心や意志も盗れてしまう。
「さて、さっさと対象を見つけて俺の魔法で盗んじまうか。心ごとな――」
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