第261話 扉の中にある物
いよいよ本日書籍版発売です!
「あ、ありがとうございます! お姉さま!」
「ん?」
グレテルのピンチに現れ助けたのは人狼のルガールだった。まさに絶好のタイミングで飛んできてサンダーラナーガの一匹を切り飛ばしたのである。
胴体から分断された巨大な蛇は砂の上でビタンビタンッと跳ね続けていたが暫くして動かなくなった。
そしてルガールの脇に助けてもらったグレテルがピシッと抱きついて瞳をキラキラさせていた。
ルガールが女性だったことは以前の満月の晩のことからバラムドーラではよく知られていることだ。故にお姉さまと読んだのだろうが、その目はまるで恋する乙女の如くである。
「一匹をあんなにあっさり倒すなんて。かっこいい僕でも思わず惚れ惚れしてしまいそうだよ」
髪をかきあげながらクロールがルガールを称える。
「俺も負けてられないぜ」
「ならばライゴウ――水魔法・流水刃」
「うん?」
スイムの魔法でライゴウの持つ大剣に水が纏われた。しかも水は高速で流れ続けており切れ味が増している。
「これでより切れるようになってる筈です。電撃も刃だけに集中するはずですよ」
「ありがてぇ! おらぁ! 獅子両断!」
ダッシュしライゴウがサンダーラナーガの一匹を斬りつける。すると見事に胴体が切断された。しかも発せられた雷が剣に集まり水と電撃の組み合わさった付与を形成する。
「おお! かっけぇ!」
「……はは、なるほど。中々やるようだな」
「狼我風瘋爪!」
セサミが感心したように呟き、その瞬間にはルガールが残った一匹を切り裂いていた。
「本当に助かりました。でも――王様が」
「そ、そうだぜ! 王様が!」
ヘンデルとベアードが叫ぶ。サンダーラナーガは対峙し終えたが問題が解決したわけではない。まさに今さっきのことだが彼らの王であるホルスが扉の中に引きずり込まれたのだ。
「何? 陛下が? それは一体?」
「手短に話すとあのセサミという男は自在に扉を生み出す魔法が使え、その一つに陛下が引きずり込まれたのです」
疑問の声を上げるルガールにスイムが説明する。ルガールの目が元凶であるセサミに向けられた。
「はは、怖い人狼もいたものだ」
「貴様――今ならまだ間に合うぞ。陛下を解放しろ」
「冗談を。誰が解放するかよ。それにどっちにしろもう俺の力でもどうしようもない」
「あん? テメェが閉じ込めたのに何言ってんだ?」
ライゴウが眉をしかめた。確かにホルスを扉に引きずり込んだのはセサミの魔法だ。セサミは扉に入れた物を自在に出すことも可能だ。それならば出そうと思えば出せるだろう。
「俺の魔法は扉に何でもかんでも無尽蔵に入れてるってわけじゃない。これでもしっかり整理整頓はされてるんだぜ?」
「は? 何言ってるの?」
「それが今の話と何か関係あるのですか?」
グレテルとヘンデルが怪訝に満ちた声で疑問をぶつけた。
「はは、ところでお前ら魔法のランプの伝説は知ってるか?」
「おい! 答えろよ!」
「待ってくださいライゴウ。何か意図があるのかもしれない」
「う~ん。でも魔法のランプというと確か拾った人の願いを何でも叶えるという伝説のランプだよね? ま、イケメンの僕には必要のないものかな」
髪をかきあげるプールを呆れたような目で見てるベアードであった。
「そのとおり。だが実際はそんな生易しいものじゃねぇ。魔法のランプは別名迷宮のランプ。ランプをこすることで迷宮が生まれる。その迷宮を攻略すると願いが叶うとされているわけだ。もっともこの迷宮とやらが厄介でな。難易度が高い、というよりも入ったが最後生き残ることは不可能なダンジョンだ」
「……わけがわからないな。その話が何か関係あるのか?」
得々と話すセサミを不機嫌そうにルガールが見やる。一方でスイムは何かを考えるよう仕草を見せ。
「――まさか! あの扉の中に!」
そしてスイムが察したように口にすると、セサミがニヤリと口角を吊り上げた――
◇◆◇
「ふむ。どうやら新たな獲物がやってきたようだな。全くこんなところに閉じ込めおって退屈で仕方なかったが、さて――」
迷宮の奥にそれは存在した。セサミの作り出した扉の中に放り込まれ、それからずっとその存在はそこにい続けていた。折角作り出した迷宮も時折セサミが放り込んだ餌を待つばかりの状況であった。
しかもこれまでの餌はどれもが雑魚で満足に至らないものであった。そして――久しぶりの獲物。
「少しは暇つぶしになればいいのだがな――」
そう言ってソレは目を細めるのだった――
砂魔法!書籍版の発売日となりました。下の表紙が目印!発売から最初の一週間が大事でもありますので何卒宜しくお願い致します!表紙は勿論中の挿絵も素晴らしいので是非とも手にとって頂けると嬉しいです!




