第248話 砂漠で新人育成?
「パンケーキが美味しいにゃん」
「よ、よかった~」
「貴方がお作りに?」
「は、はい。僕、これぐらいしか役に立てないから……」
畑を見た後はペルシアとルガールを城に招待してお茶を楽しんでもらった。パンケーキはキララが作ってくれた。紅茶も美味しくいつも淹れてくれるのはキララだった。
「キララはいつも美味しいお菓子を作ってくれるしラクの毛づくろいをしてくれるのもキララだよ。これぐらいなんてことはない。大切な仲間で掛け替えのない王国の民だよ」
「ンゴンゴ♪」
「お、王様――」
キララの目が凄くウルウルしていた。そ、そんな目をされると逆に照れるかな。
「……頬が赤いのがちょっと気になりますですの」
「流石妾の王は男女問わず魅了するようであるな」
うん? 魅了? その言い方はちょっと気になるところだけど、国にとって必要のない民なんていないからね。
「陛下宜しいでしょうか」
「スイム。うん、良かったらお茶とお菓子はどう?」
「ありがとうございます」
スイムも部屋に入ってきて紅茶を菓子を口にした。
「陛下、この後アリババ殿の依頼をこなしに向かおうと思っております」
「にゃん。お兄たまのにゃん?」
「はい。アリババ商会は冒険者ギルドにとっても大切な顧客ですからね。今回も色々と素材を頼まれましたから」
そうそうアリババ商会からギルドへの仕事が多いんだ。それもアリババ商会と付き合いのある相手からも必要なものを聞いて持ってきてくれるから仕事は結構多いんだ。
「それなら僕も付き合うよ。こないだのシュデルとのこともあるし、魔法の技量を上げておきたいからね」
「にゃん、それならうちもといいたけどにゃん。色々見せてもらいたい物があるにゃん」
「それなら、そうだモルジア一緒についていってもらってもいい?」
「うぅ、本当は同行したいところですの。ですが、お兄様の頼みならわかりましたですの!」
「ふむ、素材集めなら妾も遠慮しておこうかのう。そろそろ一度住処にも戻っておきたいしのう」
フィーが僕にそう伝えてきた。フィーは時折僕と初めて出会ったあの場所に戻っているんだ。
その時はいつも一人でいくんだよね。
「そうだにゃん。ホルスに渡したい物があったんだにゃん」
ふと、ペルシアから声が掛かった。そして彼女が手渡してくれたのは小さな革の袋だった。
「これは?」
「魔法の袋にゃん。これがあれば五百キロぐらいの物が入るにゃん」
「ふふ、残念ながらお兄様には私がおりますですの。私の空間魔法があればもっと物が入りますの!」
横からモルジアが口を挟んできた。確かに入る量ならモルジアの空間魔法の方が上だね。
「それは知ってるけどにゃん。常に一緒なわけじゃないにゃん。今だって別々に動くにゃん。だからいざというときのために持っておくといいにゃん。特にホルスにとって砂が大事にゃん。念の為詰めておくといいにゃん」
むぅ、とモルジアが唸っていたけど、モルジアも頼りにしていると伝えたら機嫌が直ったよ。そしてこれはこれでありがたく使わせてもらうことにした。
早速砂を何種類か入れておく。
「では、そろそろ参りましょうか。今回は新しく冒険者の仕事をしたいという者も同行しますからね」
「そうだね。ならスーも宜しくね」
「ス~♪」
スーが甘えるように頬ずりしてきた。僕とスーは常に一緒だしね。
そして僕はスイム達やライゴウと依頼の為に国を出た。
「うぅ、緊張する」
「大丈夫だよ皆がついてるんだし」
「俺は寧ろワクワクするぜ。バンバン活躍してやる!」
新しく冒険者として活動したいと申し出てきたのはヘンデル、グレテル、ベアードの三人なようだ。
確かに皆最近はライゴウやアローネやスイム達から手ほどきを受けていたみたいだしね。
ちなみに水の竜団からはスイムとクロールが同行している。
「ふっ、この依頼、イケメンな僕がいれば秒で達成さ」
「獲物を探すだけで秒なんてとっくに過ぎてますよ」
髪を掻き上げて格好つけるクロールに向けて冷静にスイムが指摘した。
「ところで目的の素材は?」
「はい陛下。先ずは――」
そして僕たちはスイムから聞いた獲物を探して砂漠を回る。今回は新人三人のこともあるからバラバラには動かない。
「さて、先ずはあのビックスナマジロからいきますか」
スイムが獲物を指差して三人に言った。ビックスナマジロは巨大なアルマジロといった様相の魔物だ。
この死の砂漠ではまだ手頃とされる相手な方だ。
「やってみます。氷魔法・氷結矢!」
先ずはヘンデルから仕掛ける。ヘンデルは氷属性の資質があった。ちなみに氷属性は水属性とも親和性がある。だから自然と水魔法が使える。
「――ッ!?」
ビックスナマジロに氷の矢が命中した。だけどそれだけでは倒せない。ただ、命中した箇所が凍てつき動きが鈍くなった。
「任せて!」
そして今度はグレテルが矢を連射。これが止めとなった。もう一匹いたビックスナマジロはベアードが相手していたけど、サポートはクロールがやっていた。
「ふふ、僕の鮮やかな魔法で動きを封じたよさぁ」
「おう!」
ベアードは熊の獣人だけど、それがより熊らしさがました状態で強烈な攻撃をかましていた。
「ベアードは獣化闘争が使えるようになりましたからね」
何でも獣人は先祖の記憶を体内の魔力で呼び起こす力があるようで今ベアードが使ってるのがそれなようだね。
「ス~」
「うん。皆凄いよね」
ビックスナマジロぐらいなら余裕なようだ。
「この調子でどんどんいきますか」
それからも順調に魔物を倒して素材を狩っていく。
「あの相手はスナモドラゴ……あれは少々手強いので皆は見ていた方がいいでしょう」
だけど今群れている獰猛そうなトカゲの群れを見てスイムが警戒心を高めた。大きなトカゲだ。マッチョなベアードと同等ぐらいの大きさがある。
「やっと俺の出番が来たな」
「ライゴウも油断しないように」
「ふふ、僕の華麗な魔法の出番だね」
スナモドラゴは顎の力が強い。それに尻尾には毒のある棘が備わっている。あれで動きも速い。でもスイム達なら問題ない――
『グォオォオォオオアァアアアァアオォォオオオォオン!』
その時だった。巨大な砂柱が湧き上がったかと思えばとんでもない物が出現しスナモドラゴの群れがひと呑みにされてしまった。
お、大きい。それにこの姿、まさか――
「お、おいおい! こいつってまさか!」
「えぇ、まさかでなくても間違いないでしょうね。砂漠に潜むとされる凶悪な竜――砂漠竜です」
◇◆◇
「うぅ、まさか本当にこんなところまでつきあわされるなんて……」
「いい加減諦めろ。それよりも、あれがそうなんだな?」
泣き言を口にするアングルにセサミが聞く。アングルはメガネを直しながらその質問に答えた。
「あぁ、あれが目的のバラムドーラだ――」




