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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第五章 砂漠と帝国の刺客編

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第238話 怒れる皇帝と――

「そ、総軍でございますか?」

「そうだ! 急いで準備しろ! あの愚か者に目にもの見せてくれるのだ!」

「そうよ。シュデルが、シュデルがあんな愚か者のせいで、許せないわ!」

 

 皇帝に命じられた軍の幹部が戸惑いの表情を浮かべていた。彼は皇帝が誰が手の空いている者を呼べと言われて、あわてて駆けつけた帝国将軍の一人だが、こんなことなら来るんじゃなかったと後悔した。


 皇帝の口から先ず飛び出したのはシュデルに関する情報を敢えて周辺諸国に知らせるというものだ。


 これは先にトヌーラ商会側に帝国側が皇子を見捨てたなどという噂を広めさせないためでもあった。


 もっともこれにあたり皇后との話は面倒なことになったが、とにかく全て国を裏切ったホルスが悪いということで押し切り怒りの矛先をそちらに向けさせた。


 そもそも皇帝自身が怒り心頭であり、皇后にしても下手に文句は言えないという状況にあったのも大きいかも知れないが――とにかくそれとは別に皇帝はとんでもないことを言い出した。


 なんとバラムドーラ王国に総軍で侵攻し徹底的に叩き潰すというのだ。皇帝はどうやら鶴の一声でなんとかなると思っているようだがそう簡単な話でもない。


 そもそもシュデル率いる千鋭百鬼団が敗北したのがまずかった。帝国側はこの事実を国内で知られないよう緘口令を敷き隠蔽しようとしたが、今の帝国でそれを隠し切るのは不可能だ。


 結果的に敗北の余波として国内では各地でテロ騒ぎが頻繁に起こるようになっていた。強硬姿勢を貫く帝国の制度に不満を持つものも多い。


 マグレフ帝国によって無理やり国を奪われ支配された国も多くそうして虐げられてきた人々が反乱軍を結成し帝国に牙を持つことも少なくない。


 更にこれまで帝国が属国と小馬鹿にしてきた西側諸島の国々も舵取りが効かなくなってきており領海内での衝突も増えている。


 こんな状況で総軍を率いて攻め込むなど容易なことではなく、また納得できる話でもないだろう。


 だが、それを今頭に血が昇っている皇帝に言っても怒りを買うだけだと思い、とにかく話だけはしてみますと告げその場を後にした。


 それから三日後、彼は再び皇帝に呼び出され軍の準備はどうなったかと問われたわけだが。


「そ、その件は中止となりました」

「なんだと? 貴様、それは一体どういうつもりだ!」

「も、もうしわけありません。ですが、バラムドーラ王国への出撃は止めろという命がくだされまして――」

 

 汗をかきながら答える将軍であり、ぐぬぬ、と歯牙を噛みしめる皇帝。その時だった。


「わしじゃよ。その命令をそやつに伝えたのはな」


 どことなく飄々とした声が謁見の間に響いた。皇帝の目がクワッと見開かれる。何故、といった怪訝な感情が滲んでいた。


「ど、どうして、貴方が、父上がここに!」

「ほっほっほ。何、随分と手痛い目にあってると風の噂で聞いてのう。全く後を継がせればのんびり隠居生活を送れそうだと思っておったというのに、一体何だこの体たらくは?」

「くっ!」


 皇帝がうめき声を上げる。今目の前のにいるは帝国の名誉皇帝。つまり先代皇帝でありシャフリヤルの父であるシャイフ・マグレフであった。


「く、くるなら前もって言って頂ければ。それに母上は?」

「あいつならシャハルの相手をさせているさ。女は女同士が良いだろう。前もっていわなかったのは下手な言い訳を言わせないためだ。しかし、情けないことだ。だからあれだけ言っておいただろう? あいつの血を引くあの子は上手く扱えと。にも関わらずよりによって砂漠に追放とはのう」


 顎髭をさすりながらシャイフが目を眇めシャフリヤルを見る。


「……お前は弟に比べたら出来が悪くて心配だったが、人の上に立つ身になれば立場がお前を成長させると思っておったがどうやらわしの見込み違いだったかな?」

「そ、そんなことは! だからこそ今もあの裏切り者を始末するために!」

「そのためだけに軍を総動員させると? 本当にお前は変わらんな。昔から頭に血がのぼると見境がなくなる。そんな真似をしたら国全体がどうなるかも想像がつかんのか?」

「ぐっ!」


 シャフリヤルは何も言えない。先程まであれほどまでに強気だった彼も父の前では借りてきた猫のようにおとなしかった。


「……それで、止めたのですか?」

「そうだ。こんなやり方ではいずれ兵たちもついていけなくなる。全くわしが止めなかったらどうなっていたことか」

「し、しかしシュデルも敗れ、国から追放せざるを得ない状況にまで追い詰められた。このままなめられっぱなしでいいと父上は言われるのですか!」

「別にそうは言っておらん。ようはやり方を考えろと言っておるのだ。まぁ良い。近くにいるのだろう? デュハン」

「――こちらに」

「はっ?」


 シャフリヤルが目を白黒させる。なぜなら今の今までいなかったはずの黒衣の何者かがシャイフの側に立っていたからだ。


「全く、あいかわらず気配を消すのが上手い奴だ。さて愚息よ、今回わしは貴様に一つ手助けをしようと思ってな。このデュハンをお前につけてやる。こいつは切れものじゃぞ。せいぜい上手く利用するのだな。フフッ――」

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