第225話 砂漠にてドワーフの職人と人間の職人
「は? 姐さんが男? 何を言ってるんだてめぇ? 女に決まってるだろう」
「やっぱりかぁああ! うぉおおお!」
「あらあら、私が女だと何かあったのかしら?」
「へ?」
凄まじくテンション上がるロキだったけど、ロベリアが近づき、顎髭を擦った途端ロキがカチンコチンになって動きが止まった。
「な、なな、そんな、俺が――」
「ふふ、初なドワーフなのね」
「ふぉ!」
ロキが顔を真っ赤にさせて動きがぎこちなくなってるよ! あのロキをここまでとは。お、恐ろしい人かもしれないよロベリアは……
「ちっ、なんだこのドワーフ? 女相手に情けねぇ。ま、だが仕方ねぇか。今やドワーフなんて頭の化石化した無能の集まりだからな」
「――何だと?」
ザックの発言にロキが反応を示した。立ち上がり、ザックと正面切って相対する。
「小僧。随分と大きな口を聞いてくれるじゃねぇか」
「だが事実だろう? お前たちドワーフなんざ所詮長生きしてちょっとだけ鍛冶が得意ってだけの愉快な種族だ。技術の進化に無関心で新しいことにチャレンジしようとしない。通り一遍等の古臭いやり方だけを有難がる偏屈種族、それがテメェらだ。だから人間がとっくに技術面で追い抜いていても認めようともしないで過去の栄光にしがみつく」
な、何か凄い言われようだね。ドワーフについて何か嫌なことでもあったんだろうか?
「なるほど、どうやらテメェは他の有象無象のドワーフを指差してそんなことを言ってるようだが、北のドワーフを舐めてもらっちゃ困るな。俺らは技術とおっぱいには貪欲なのさ。それが本当にいいものなら古かろうが新しかろうがどんなものでも吸収していくぜ?」
「何か凄くいいことを言ってるようでも、途中の一言で全て台無しですの」
あ、はい。モルジアが呆れ目で呟いたよ。うん、まぁそれがなければね。
「ふん、口でならなんとでも言えらぁ」
「だったら俺の造った物を見せてやるよ。こっちへ来やがれ!」
「はッ! そこまで言うなら見てやるか。おいテメェら引き返すのは一旦保留だ」
ロキの話にザックが乗った形だ。興味を持ってくれたようで、職人にも残ることを示唆している。
「へいへい」
「頭が気分屋なのはいつものことだからな」
「おいドワーフさんよ。ここまで来て無駄骨は御免だからしっかりボスを納得させるの見せてやれよ」
「当たり前だ度肝を抜かせてやるよ」
職人たちはザックの心変わりにも動じていないね。慣れてるみたいだ。そして仕事につなげたいって気持ちが強そうでロキを応援している。
「しかし、あんたそこまで言って大したことなかったらどうすんだ?」
「ふん。そんときは二度とおっぱいと口にしねぇって誓ってやるよ」
「は? おっぱ?」
「ザック! 頑張るですの!」
「絶対に認めるでないぞザックよ」
「そ、その、ザックさん遠慮はなさらず!」
「ザック、絶対認めるんじゃないわよ!」
「ザック、そのエロドワーフに目にものみせてやって!」
「は? 何で俺が応援されてんだ?」
「ふむ、これがツンデレと言うやつか皆俺に惚れてるからな可愛い奴らだ」
『すげぇポジティブだな』
「愛、ではないわね、愛では!」
あぁ、ロキがあんなことを言うから女性陣の応援がザックに……
「ふふ、なにはともあれザックも興味を持ってくれたみたいね」
一旦この場を離れるロキとザックを見ながら笑顔を見せるロベリア。そのロベリアに気になったことを伝えることにした。
「はは……ですが、いきなりこんなに職人を連れてくるとは思いませんでしたよ。その、まだ決定ではなかったのですが……」
「それは勿論わかっているわ。でも建築の得意な商会が必要なのは確かなのでしょう?」
「それは確かにそうですね」
「簡易的な建物はロキが造ってくれましたが、やはりしっかりしたものは必要ですからね」
後ろからスイムも話に加わってくれた。
「そう。つまり早ければ早いほうが良いわけだし、だったら一緒に職人にも来てもらった方が手間がなくていいでしょう? 商売はフットワークの軽さも大事な要素だしね」
「ふむ。だとしても、もし王が受け入れなかったらどうするつもりだったのだ?」
「その時は引き返すしかないわね。そしてプレゼンテーションが駄目だったと反省して改善できるところは改善してまたくるわ。必要だと思われているところで断られるなんて商会の名折れだしね」
ふふっ、と口元を指で押さえて僕を見てきた。真剣な眼差しでもある。
そうか、トヌーラ商会はこの件に本気で取り組んでくれてるんだね。
「わかりました。僕も真剣に検討します。先ずはロキの判断待ちですが」
「勿論それで構わないわ。ま、ザックはザックで見極めようとしているみたいだけど、あのドワーフの自信ならきっと大丈夫よね」
「大丈夫でないほうがいいようなのだがのう」
隣に立ったフィーが肩をすくめてみせる。
「さて、実は今回来たのは建築に関しての話だけではないの。是非陛下ともう一つの件で有意義な交渉がしたくて」
「交渉ですか? それは一体?」
「ふふ、勿論奴隷取り引きについての交渉よ――」
そう言ってロベリアが不敵に笑った。いや、奴隷って……




