第220話 砂漠で騙してみた
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アンラキから頼まれたことがあったのだけど、その内容に僕は驚かされた。
「このままだと、リスリーの誤解は解けないままだと思うのさぁ。そこで本当に申し訳ないのだけど、一芝居打ってもらえないかなぁ?」
それがアンラキの提案だった。作戦としてはクリムゾンに見張りに立ってもらい、その上で敢えてリスリーが地下牢に行くよう仕向けるというものだった。
アンラキによるとリスリーから薬さえ奪わないでおけば十中八九夕食に睡眠薬を混ぜる筈。それを逆に利用するという作戦だった。
ちなみに睡眠薬の効果を薄める薬をアンラキは持っていた。それを前もって飲んでおけば本当に眠ることはないという。
少し迷ったけど、アンラキから嘘をついている様子は感じられなかった。だから僕はアンラキを信用してクリムゾンにも一肌脱いでもらったんだ。
その結果が――今目の前で行われているこれだ。クリムゾンがリスリーを押さえて、アンラキが彼女に種明かしをしている。
「つまり、私は皆の手の中で踊らされていたわけか……」
「ごめんねリスリー。でも、君には真実を知ってもらいたかったんだ。そうでないと、あまりに君のお兄さんが報われない」
「…………」
僕が伝えるとリスリーが俯いた。そして鼻をすする。
「それなら、こいつを、殺させて! 兄の仇を討たせて!」
「それは――」
「駄目だ」
リスリーの訴えにどうしていいか考えながら答えると、クリムゾンがリスリーに向けて否定した。
「これは俺の考えでしかないが、キースはそんなこと望んじゃいないだろう」
「そんな! 私は騎士だ! 戦いとなれば人を殺す覚悟はある! ましてやこいつは私の!」
「それとこれとは別だ。それに恨みで言えば俺だって一緒だ。こんな連中切り刻んでやりたいさ。だが、恨みだけで殺したらきっと歯止めが利かなくなる。しかしキースはお前の心が壊れるのを望んじゃいなだろう」
「……」
だからクリムゾンも気持ちを抑えているのかも知れない。アンラキが言っていたんだ。リスリーは今非常に危うい状態だって。タガが外れたらきっともうそこから先抑えは利かなくなる。
だから真実は知らせても殺させないで欲しいと――
「……ライもお主のような美しい娘が手を血で染めるのは出来れば見たくはない」
そこにフェルが口を挟んだ。えっと、恐らくリスリーの説得をしようとしてくれているのかもだけど、あまりフェルは関係ないような……
「馬鹿が!」
その時だった。シュデルの声が牢に響きそしてフェルの持っていたカラドボルグがシュデルの手に収まった。
「むぅ、ライの愛剣が!」
「ふん。甘いんだよてめぇらは! 何が恨みだ殺す殺さないだ! そんな馬鹿げたことを話し合っているからこんな目にあう。さぁこれで俺も剣魔法が使える! これさえあればこっちの物だ! さぁ唸れカラド――」
「収納魔法」
「……は?」
カラドボルグを振り上げ、シュデルは剣魔法で力を引き出そうとしたようだけど、モルジアの魔法でカラドボルグが消えた。
うん、例え剣魔法でも、モルジアの魔法で収納されちゃうと意味ないね。
「ちょ、待て何だこれは!」
「それはこっちのセリフだ。てめぇ、性懲りもなく良くもそんな真似――」
ボッとクリムゾンの体が燃えた。手持ちの槍にも轟々と灼熱が纏わりつく。
「ま、待て待て! わかった! 俺が悪かった! だ、大体貴様言っていただろう? 復讐は駄目だと――」
「知ったことかぁああぁあああああぁああ!」
クリムゾンが槍を放つと火炎竜巻が起きて牢屋の天井を突き破ってシュデルが吹っ飛んでいった。
ま、まぁ天井は後で直すけどね……
「……貴方、言ってることとやってること違くない?」
リスリーがクリムゾンにジト目を向けた。一方クリムゾンが腕を組んで鼻息荒く答える。
「ふん。殺してはいない」
あ、はい。確かに落ちてきたシュデルは全身黒焦げだし、ところどころ炭化してるけど、生きては、い、いるね。
ちなみにこの後シュデルはケアによっていろんな意味で治療を施されました。ご愁傷さま……
「はぁ、なんだか馬鹿らしくなってきました。全く、でも隊長これからどうするおつもりで?」
結局リスリーはもうシュデルとワズイルのことは吹っ切れたようだ。冷静に考えてみたら真の仇はワズイルなんだけど、その後蟲を愛でる姿を見て、なんだかどうでもよくなったそうだ。もっといえば生きていたほうがつらそうだらかというのもあったようだけど……
「まぁ、想像つくだろうけど私達はこのまま帝国に返ったところで処刑されるのが落ちだ。つまり選択肢は限りなく少ない。その一それでも帝国に戻って処刑される。その二帝国に戻るが誰にも見つからないように毎日帝国の影に怯えながらひっそりと生きていく。その三この砂漠で本当にトレジャーハンターとしてやっていく。なお危険な砂漠で生き残る可能性は限りなく低い。その四、ここバラムドーラで優しい王様に忠誠を誓い幸せに暮らす」
「隊長、凄く雑な誘導尋問ですそれ」
「……実質選択肢が一つしかないな」
はは、全くだね。その中で選べるのってあまりないような。
「ま、恐らく選ぶのは決まっているだろうけど、ただそれには一つ難点があるのさぁ。ここにいるホルス王がそれを許可してくれるかどうかなんだけどねぇ。どうでしょう? 勿論、認めてくれるならこの国のために協力は惜しまないさぁ」
アンラキがそう申し出てきた。そして僕の答えはもう決まっている――
「うん。ようこそバラムドーラへ。僕たちは君たちのことを歓迎するよ――」




