第212話 砂漠のハングリーワーム
薬の素材として必要なサンドプロネウラが、突如出現したハングリーワームという魔獣に喰われてしまった。
以前サンドワームを相手したことがあるけど、体の色が土色な上、サンドワームよりも大きい。
カセによるとサンドワームよりも強敵らしい。
「所詮は蟲みたいなものよ!」
するとフェルが飛び出し、そしてカラドボルグで攻撃を加えた。電撃が迸りハングリーワームの全身を雷が駆け巡る。
「おお、やったか!」
アンラキが興奮した様子で声を張り上げる。フェルの電撃を纏わせた斬撃は強力だ。砂漠の魔物は強敵ぞろいと言うけど、フェルの電撃を受けて平気なのはそうはいない、筈だったのだけど――
「ムッ! こやつ、電撃が聞いていない!」
ハングリーワームは怯むこと亡く牙の生え揃うった大きな口を開けてフェルに襲いかかった。
「危ないですの! 空間魔法・空間固定!」
モルジアの魔法でハングリーワームの動きが止まった。空間の壁に阻まれたからだ。モルジアの空間魔法は防御面でも優秀だ。
だけど、一度は動きを止めるもハングリーワームが大口を開けて噛み付いた瞬間、パリィインっというガラスの割れたような音が響き渡る。
ハングリーワームはそのまま砂に頭を突っ込んだ。フェルを食べようとしたようだけど、一瞬壁で動きが止まった隙に戻ってきていた。流石雷になれるというだけある。
「ふぅ、モルジア君には助けられたぞ」
「でも、あいつ、私の魔法を破ったですの。これってどういうことですのカセ?」
モルジアがカセに問う。僕たちが見たこともない魔獣だけど、カセならなにか知ってるかもしれない。
『ハングリーワームは何でも喰うワームなんだよ。それこそ魔法も魔力ごとな』
カセがそう教えてくれた。なんでも食べる、だからモルジアの魔法も破られたんだ。いや、食べられたと言うべきかも。
「こりゃまいったねぇ。そんなの相手にどう戦えばいいんだ?」
アンラキが両手を広げてお手上げってポーズをみせつつ言った。確かに魔法を食べちゃうのは魔法使いにとっては厄介な相手と言えるかも。
でもそれならそれで手がないこともないかな。
「だったら、口のない場所を攻撃すれば! 砂魔法・砂欠泉!」
この魔法は砂が下から吹き上がる。ワームの口も下からは喰えないはずだ!
だけど、砂がボフンッと弾けはしたけどそれだけだった。魔法が不発?
『無駄だ。ハングリーワームの体をよく見てみろ』
カセの声に従ってハングリーワームを目を凝らして見てみる。
そして気がついた。大きな口ばかりに目がいってしまったけど、胴体部分にびっしりと小さな口がありひしめき合っていることに――
「ス~……」
「き、気持ち悪いですの……」
「むぅ、面妖な化け物だ!」
スーが僕の首をギュッと抱きしめてくる。モルジアが口を手で押さえ、フェルも引き気味だ。確かに見た目にはかなり薄気味悪い。
「つまり全身のあの口でも魔法を喰っているというわけだねぇ……」
片目をぎゅっと閉じてアンラキが言った。あの口全てで魔法を食べてしまうのか、しかも何でも食べると言っているから、当然僕たちもあの魔獣にはいい餌に見えているのかも知れない。
「ふん。だがそれならそれでやりようがある!」
バチバチッとフェルの全身が迸り、かと思えば視界からフェルが消えた。直後重なり合うような斬撃音が耳に届く。
少し遅れる形で見てみると、全身を切られたハングリーワームの姿。
「何でも喰うのなら喰われる前に切り刻めばいいであろう」
そうか。フェルなら電撃を剣に纏わなくても雷速の斬撃で十分なダメージが期待できる。
『ギャオォォォォオォォォオオ!』
ハングリーワームが叫んだ。全身の口から一斉に不気味な声が発せられる。断末魔にも似ているけど、でも違う。それどころか、フェルの与えた傷がみるみるうちにふさがっていった。
「ダメージが治りましたですの。どうなってますの!」
『ハングリーワームは再生力も高いんだよ。しかも再生するとより腹が減る。中途半端なダメージじゃ凶暴になるだけだ』
そう、カセが教えてくれた。そしてハングリーワームの口から一斉に濁った液体が吐き出される。
「チッ!」
フェルが引き返してきたけど、肩に一発貰ったようだ。ジュージューと煙を上げて肩が焼けただれてしまっている。
「くっ、不覚」
「これは、溶解液だねぇ。しかもかなり強力だ」『ギギギギギギギギギィィイアイアイィイギギギイジィアイアイイィギアイイァイアギィ!』
ハングリーワームが気味の悪い鳴き声を上げた。気分の悪くなりそうな鳴き声だよ。
「ス~……」
スーもプルプルと震えているね。頭を撫でて宥めて上げる。
「フェルその怪我、早く治さないと」
「フッ、なんのこれしき。大したものでもないさ」
フェルがそう言って笑った。強がりではなさそうだけど、でも放ってはおけないね。
「モルジア、ポーションあったよね?」
「勿論ですの」
空間魔法で取りだしたポーションをフェルの患部に直接掛けて上げていた。ケアが作成したポーションだ効果も高い。
「ですがこれは面倒な相手ですの!」
モルジアが眉を寄せて緊迫感のある顔を見せる。そしてハングリーワームが砂を給べながらこっちにやってきた。
「……何でも喰うんだったな――それならこれでどうだ!」
するとアンラキが片手に収まるぐらいの玉を取りだし、こっちに近づいてくるハングリーワームに向けて投げつけた。
それに反応してハングリーワームがパクリと食べる。その直後ハングリーワームが体を激しく上下させて頭を砂に叩きつけた。これは、一体?
「どうやら、毒はそれなりに効果ありそうだねぇ」
微笑を浮かべてアンラキが暴れるハングリーワームを見た。毒、今のは毒の詰まった玉だったのか。
「だけど、あの量じゃ効果は限定的だねぇ」
確かにハングリーワームは一瞬苦しんだようだけど、すぐに起き上がりこっちを睨んできている。
「やれやれ、少しは私も役に立てればと思ったんだけどなぁ」
「いや、十分だよ! これであの魔獣の倒し方がわかったからね」
アンラキのおかげで光明を見出せたよ。さぁ、ここからは僕のターンだ!




