第211話 砂漠のアンラッキー
「フェルも私達と一緒ですのね」
「ライは姫に頼まれたのでな。とは言え姫に何かあった場合はすぐにでも戻らせて貰うとしよう」
モルジアに聞かれてフェルが答えた。砂漠に出てサンドプロネウラを探しに来た僕たちだけど、それにフェルも同行してくれた。
今フェル本人が言ったように、イシスからお願いされたからだ。確かにフェルがいてくれるのは心強いかな。
ちなみにもしイシスに何かあった時には雷と化して戻るそうだよ。イシスの眷属になったことでかなり離れていてもイシスの電磁波とやらをフェルは感じ取れるらしい。
「それにしても電撃を自由自在に操るとは大したものだ。一体何者ですか?」
「ライは姫の眷属にして騎士!」
同行したアンラキが興味深そうに尋ねた。それに対するフェルの答えで、納得出来たかな?
「なるほど。騎士ですか。どうりで随分と良い剣を持っているわけです」
「うむ。このカラドボルグはライと一心同体の愛剣よ」
「カラドボルグ……」
あれ? 今一瞬アンラキの目付きが変わったような?
「カラドボルグに何かありましたですの?」
モルジアが似たような疑問を抱いたようだね。アンラキに問いかけていたよ。
「あぁ~これでもトレジャーハンターなので、カラドボルグと言えば有名な宝剣。まさかそれをこの目にできるとは……それにしても一体どこで手に入れられたのですか?」
「手に入れたも何も、これは元からライのものだぞ?」
「へ?」
聞いたアンラキが目を白黒させていた。あぁ~確かにフェルの説明を聞いても信じられないよね……カラドボルグが人になったのが今のフェルなんだけど、それをそのまま伝えてもややこしいだろうし。
「ふむ、まぁあまり詮索はしないほうがよさそうですね。はは、とにかく今はリスリーの――」
フェルを振り返りそう口にするアンラキだったけど、その時アンラキの踏み込んだ砂が勢いよく沈み込んだ。
これってまさか!
「しまったサンドヘルか!」
「ス~!」
「アンラッキー……」
呟き、砂の蟻地獄に落ちていくアンラキ。底にはサンドヘルが手ぐすね引いて待っていた。肩の上のスーも慌てている。
「砂魔法・砂座波!」
だけど、魔法を行使して砂の流れを変えた。砂の波に乗ったアンラキがこちら側に戻ってくる。
「ラッキー――助かった」
「油断は禁物ですよ」
獲物を逃してなるかと、サンドヘルが勢いよく砂を吐き出してきた。サンドヘルは獲物に対して貪欲だ。一度狙った獲物が逃げるのをやすやすと見逃しはしない。
「砂魔法・砂欠泉!」
だけど、魔法で吐き出された砂ごと上空へ舞い上げた。アンラキは無事砂から出てこれたし、サンドヘルは穴にそのまま落っこちて気絶した。
「あれが砂の魔法か……いやはや、凄いパワーを感じるよ。回りが砂ばかりの砂漠なら無敵に近いのでは?」
「いや、そこまでは……」
「無敵に近いのではなく、無敵ですの!」
『ケケッ、相変わらずだなお前は』
「ス~ス~♪」
僕としてはそこまでじゃないと言いたかったのだけど、モルジアが何故か得意になっていた。スーも嬉しそうに頬ずりしてくる。
「それにしてもごめんなさい。砂感知でしっかり調べておくべきでした」
「いやいや、不運なのは仕方がないし、寧ろここで受けておいて良かったと言えるので」
うん? 良かった? 助かってよかったというならわかるけど、一体どういう意味なんだろう?
「ま、油断大敵であるな」
「でも、今のって近くにいたフェルでも助けられたんじゃないですの?」
「男を抱っこする趣味はないのでな。美しいそなたならば喜んで」
モルジアがライに向けて問いかけると、ライが肩を竦めた後、モルジアに向けて優雅に右手を回してアピールしたよ。
「……私にはお兄様がいるから大丈夫ですの」
「へ? どうしたのモルジア?」
急にモルジアが僕の腕に自分の腕を絡めて来た。何だろう? あの魔物を見て不安になったのかな?
「はは、流石は王だけあって妹君からの信頼も厚そうだ」
「それだけではなさそうなのが、また男として悔しいところだ」
さて、僕たちは改めてサンドプロネウラを探すために砂漠を歩いて回る。途中で砂感知に反応があった。
「いた!」
見ると視線の先で砂が盛り上がりサンドプロネウラが姿を見せた。
「ライに任せよ! 迅雷剣!」
そしてフェルがあっという間に肉薄しサンドプロネウラに雷の纏った一撃を叩き込んだ。
一発で倒され、サンドプロネウラは砂の上に倒れてピクピクと痙攣した。
「これは驚きだ。私など居てもいなくてもかわらなかったかも知れないねぇ」
感心し、そして苦笑するアンラキ。確かに僕も出番がなかった――
「ライ離れて!」
砂感知に新たな反応。痙攣しているサンドプロネウラの様子を見ていたフェルに呼びかける。その時、倒れていたサンドプロネウラを巨大な口がひと呑みした。
そして節くれだった巨体が姿を見せる。スナオオオミミズのようにも見えるけど、口はもっと大きくて、牙状の歯が無数に生え揃っていた。
これは以前も見たことがあるけど、ただ体の色が以前と異なっていてどちらかというと土色だ――
『ケケッ、これは驚いた。ハングリーワームだぜ。サンドワームよりさらに厄介な魔獣だ――』




