第210話 砂漠の蟲
「チッ、全く砂漠は油断ならねぇぜ!」
ライゴウが顔を歪めて、向かってくる大量の魔物に大剣を振るっていた。
「全く数が多すぎだよ。サーチどうなってんだい」
「いやいや、俺はこっちは数が多すぎだから怪しいと言っただろう!」
ライゴウとアローネに対してサーチが納得出来ないといった顔を見せた。
目的の魔物であるサンドプロネウラを見つけるために、サーチも同行した。そのうえで気配を探っていたが、大量の魔物の気配があると言っただけなのにライゴウが先走って飛び出してしまったのである。
「むぅ、確かこの魔物はキリングスカラベ。獰猛な魔物で目にした物は全て餌としか捉えていない厄介な魔物であるな」
「「「「「アギィィイィイイイ!」」」」」
アインの言葉にアイアンアント達も反応した。今回アインはライゴウ達と行動を共にしていた。
本来ならホルスと共に行きたいところだったが全体のバランスを考えてホルスが振り分けたのでアインもそれに従った。
このパーティーはサーチがあまり戦闘が得意でない為、戦いを行うのは実質アローネとライゴウがメインとなるが、それだとやはり不安もある。だからアインとアイアンアントが加わったのである。
しかし、アインの言うようにキリングスカラベは中々に厄介な魔物だ。群れで行動する蟲型の魔物であり、更に個々の戦闘力も決して低くはない。
「チッ、生意気に俺と剣を合わせるかよ!」
キリングスカラベは巨大な大顎を有し、更に前肢が鎌のような形状になっており切れ味鋭い両方の鎌でも攻撃を仕掛けてくる。
「ライゴウ、大顎にも気をつけねば危険だ!」
ライゴウがキリングスカラベの左右の鎌に気を取られていると、メインの大顎がガキンッ! と噛み合う。アインの警告もあり咄嗟に後ろに飛んだライゴウだが、大顎を合わせた衝撃で数メートル吹き飛んだ。
「あれが大顎の威力かい。直撃したらちょっと厄介だねぇ」
アローネが弓を構え、魔力を込めて矢を放つ。
「魔闘技・螺貫乱射!」
螺旋回転しながら矢がキリングスカラベを貫通していく。数は多いが耐久力はそこまで高くない。アローネの魔闘技でも一度に何匹も貫かれていた。
「俺も負けてられないぜ! 魔闘技・獅子累々!」
ライゴウも負けじと大剣に魔力を乗せて振り抜いた。四方八方に斬撃が飛びキリングスカラベの数が更に減る。
「我々も動くぞ!」
「「「「「アギぃ~!」」」」」
アインと蟻たちも動いた。それぞれがキリングスカラベを相手していく。
「蟻顎羅穿豪槍!」
アインの回転を加えた刺突で直線状に竜巻が発生。キリングスカラベが次々と巻き込まれていった。
「アギィ~♪」
「アギギ~♪」
「アギアギィ♪」
アインの強さにアイアンアント達も誇らしげに顎を鳴らして喜んだ。その時、アインがハッとした顔を見せる。
「油断するな! 屁が来るぞ!」
「アギィ!?」
見るとアイアンアントに向けてキリングスカラベが尻を向けていた。尾の先端には小型の鋏状の突起が備わっている。
キリングスカラベは尻から可燃性のガスを放屁する。それと同時に鋏を使い火花を起こして爆発させるのだ。
「アイアンアントーーーー!」
「おらぁああぁああぁああぁああ!」
アインが叫ぶが、そこへライゴウが横から飛んできてキリングスカラベに飛び蹴りをかました。キリングスカラベは吹っ飛ぶとほぼ同時に尻から爆発した。
「ふぅ、危なかったな蟻よぉ」
「アギィ~♪」
「アギアギィ~♪」
「アギギギギィ♪」
危ないところを助けてもらったことでアイアンアントも随分と喜んでいるようだった。そしてそこから更にアインとライゴウ、アローネの活躍でキリングスカラベを駆逐することに成功した。
「ふぅ、何とか終わったな」
「全く面倒なことなかったよ」
「うむ。しかしいい肩慣らしにはなったな!」
「ア、アギ?」
ライゴウとアローネはやれやれといった顔を見せていたが、アインにはまだまだ余裕がありそうだった。仲間の蟻たちも驚いている。流石はアイアンアントの王である。
「お前らひと仕事終えたって顔しているけどメインはこっからだぜ? サンドプロネウラがまだなんだからよ」
サーチが呆れたように言った。そして少し休んだ後、今度こそしっかりとサーチがサンドプロネウラの場所を探し当て見事狩ることに成功したのだった――




