第209話 砂漠の水の使い方
「――ふむ、こっちにそれらしき気配を感じるな」
「う~ん。流石マスターの水魔法ね。大体何でも出来ちゃうんだから」
プールが感心してみせる。スイムは地面に手を付けて水を波紋のように広げることで周囲の情報を探れる。このやり方はホルスの砂感知に近い。
水を色々と変化させられるのがスイムの特徴でもあるからだ。ただホルスの魔法ほど仔細にわかるわけでもない。
それでもパーティーのメンバーからしてみると便利で頼りになる魔法であった。
「ふむ、外れだったか」
そしてスイムの察した場所に移動する一行だったが、そこにいたのはダブルサンドヘッドという双頭の魔物であった。
寸胴な胴体に蛇のような長い頭を有す魔物である。
「こいつも大物だから仕方ないわね」
「私の【水魔法・波紋の導き】では大きさを掴める程度だからな」
プールにスイムが答える。つまりある程度大きさが似ているとこのように違う魔物を見つけてしまう可能性もある。
「やれやれ随分とブサイクな魔物じゃないか~いや、僕がイケメンすぎるからそう思えるだけなのかな。フッ」
水色と濃い青色というツートンカラーな髪の毛を掻き揚げながらクロールが自画自賛した。プールが呆れ顔で見ている。
「全く相変わらず残念なキザぐあいね」
「残念って酷いなぁ。でもわかってるよ。それが君の照れ隠しだってね、て、くさぁああぁああぁあああ! 何これくっさぁあぁあぁああ!」
プールが弾いた水滴がクロールの鼻に命中。途端に鼻を塞ぎ砂の上をゴロゴロと転がり始めた。
プールの水魔法は水に香り付けをすることが可能である。良い香りだけではなく単純に臭い水を生み出すことも出来るのだ。
「全く何を遊んでいるんだ!」
叫びながら水を鎧のように纏ったバタフライが向かってきたダブルサンドヘッドを食い止めていた。
水の魔法使いでありながらも筋肉量が多く、水を鎧のようにして肉弾戦を挑むのが彼のスタイルだ。
「流石脳筋魔法使いだね~イケメンの僕じゃ決して思いつかない汗臭い戦いかたさ~」
「喧嘩売ってるのかお前は!」
バタフライが更に叫ぶ。するとダブルサンドヘッドの首がバタフライに巻き付きグイグイと締め付けてきた。水の鎧のおかげで助かっているが、もし鎧が解除でもされたら例えバタフライの筋肉といえど持たないだろう。
「無駄だ。俺の鎧はそう簡単に、て、しまった! マスター! こいつ水を吸収しています!」
ダブルサンドヘッドの首は水をよく吸収できるように出来ている。砂漠で効果的に水分を補給するためだ。
「しょうがないね。イケメンの僕がイケメンな魔法で汗臭い君を助けるよ。水魔法・粘着液!」
クロールの杖から放出されたスライムのような粘性の水がダブルサンドヘッドに絡みつく。本来ならこれで相手の動きを阻害できる。
「相変わらず扱う魔法の見た目はイケメンとは程遠いわね」
「あはは、またご冗談を」
プールが呆れたように口にするが、本人は全くそうとは思っていないようだ。
「そもそもあれも水なのだから結果は変わらんな」
「え?」
そう。スイムの言うように例え粘液でも水は水。あっという間にダブルサンドヘッドの首に吸収されてしまった。
「……あれ~?」
「お前は一体何がしたいんだ!」
?顔のクロールに向けてバタフライが声を張り上げた。そうこうしている内にバタフライの鎧がどんどん萎んでいく。
「やれやれ仕方ないな。水魔法・波ノ華壊」
今度はスイムが杖を掲げ魔法を行使する。塩分濃度が高まった塩水の波がダブルサンドヘッドに襲いかかった。
「マスター。でもあれも水だし吸収されるんじゃ?」
「それが狙いなのだから問題ない」
プールの疑問にスイムが答えた。案の定スイムが引き起こした波は全て首に吸収されてしまう。
だが、その直後ダブルサンドヘッドが首を激しく揺らし苦しみだした。締める力も弱まりバタフライが拘束から抜け出す。
「これは、段々と干からびていっている……」
「この砂漠で水分をより吸収出来るような体をしているということは、それだけ水分が重要な魔物ということだ。だが、塩は逆に水を吸う。だから濃度の高い塩水を吸収したことで逆に干からびたというわけだ」
スイムの説明になるほど、とバタフライが頷き、プールも流石マスターとスイムを褒め称えた。
「ふっ、イケメンの僕が思わず嫉妬しちゃうぐらいのイケてる戦い方さぁ~」
「まぁ、少なくともクロールのはイケてるとは言えないからね」
辛辣な言葉を投げかけるプール。するとスイムがハッとした顔を見せる。
「何かが来ている。油断するな」
そう警告した直後、目の前の砂が盛り上がり今度こそ目的のサンドプロネウラが姿を見せたのである。
「さて、ここからが本番だ。お前たち気合を入れろよ」
こうして水の竜団はサンドプロネウラと戦いを演じ、チームワークで見事獲物を狩ることに成功したのだった――




