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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第五章 砂漠と帝国の刺客編

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第207話 砂漠の城で仲間を見守るケモナル

 ホルス一行が素材集めに砂漠に向かった。アンラキもそこに同行している。


 一方でケモナルはリスリーを見守るために城に残っていた。部屋には看病を続けるイシスとラクの姿。イシスの肩にはアイの姿もある。そして壁にもたれかかるようにしてフィーが目を光らせていた。


 ケアは一旦退室し、皆が素材を持ち帰った後すぐに作業に取りかかれるように準備に入っていた。


「……リスリーの調子はどうなんだ?」


 部屋で寝かされたリスリーをケモナルが気にかけていた。口下手な男ではあるが、仲間思いな一面を感じる。


「はい。生命魔法で体力を維持できるよう務めてます。ラクも水分を補給してくれているし、今の所は油断ならない状況ですが、悪化はしていません」

「……そうか。済まないな。迷惑をかけてしまって」


 イシスからの返事を受け、ケモナルが謝意を示した。ぶっきらぼうな物言いではあるが、単純な言葉の中に深い感謝の念が込められている。


「ふむ。しかし随分とその娘の事が気になるようであるのう。何だその娘はお前の番かえ?」

「ちょ、こんな時に何言ってるのよフィー!」

「恋バナね! 愛よね愛!」

「ンゴ?」


 不躾な質問にイシスが声を張り上げ怒る。一方で肩の上でアイは興味津々といった様子だった。ラクは何だろう? という顔をしている。


 そして、フィーはイシスの叱咤など気にもとめずケモナルの答えを待った。


「……別にかまわない。だが、その答えはノーだ。大事な仲間ではあるがな」


 それがケモナルの答えだった。照れ隠しにも思えない。


「あの、ごめんなさいフィーが失礼なことを聞いてしまって」

「何が失礼なものか。大事なことであろう」

「やっぱり愛は大事かしら。愛よね愛!」

「ンゴ!」


 謝罪するイシス。だがフィーは悪びれる様子もなかった。アイはやはり愛の行方が気になるようであり、ラクはよくわかってなさそうだが何となく盛り上がっている。


「そもそも、ただの仲間にしてはかなりの気にかけぶりであるのう。お主だけ残ったのもただ心配というだけだからかのう? その娘がいなければ困ることが何かあるからではないか?」

「フィーいい加減にして、リスリーさんも今は大変な時なのに」

「そうは言うてものう。どうせ素材がこなければやれることなどないのだ。妾は一度気になると黙ってなどいられぬでのう」


 そしてイシスがケモナルの表情から言動に至るまで見逃さないようしっかり観察する。


「……確かにただ仲間だからという理由じゃないさ。俺たちはスリーマンセルで動いている。お宝を見つける為にはそれぞれがしっかりと役割をまっとうする必要がある。そして一人でも欠ければ俺たちの仕事は成り立たない」


 そしてチラリとリスリーに視線を向け、ケモナルは更に続けた。


「そういう意味でもリスリーは大事だ。つまり打算も絡んでの話さ。失望したか?」

「い、いえ。そんなことはありません。どんな理由でも仲間を大切に思っているのは変わらないし……」

「それも愛かしら」

「ンゴッ」


 若干気を遣ったように感じられるイシスである。しかし、心にもないのにただ仲間が大事だから仲間の為にと言われるよりは素直に受け止められる理由でもある。


「なるほどのう。話はとりあえずわかったぞえ」

「……なら何よりだ」


 無表情だが、詰問が終わり安堵しているようにも感じられる。


「ところでお主ら、こんな危険な砂漠にわざわざやってきたのだ。お宝がどこにあるのか、大体掴めているのかのう?」

「……」


 スッ、とケモナルが目を細める。フィーの終わらない揺さぶりに、どう答えるか考えあぐねているようだ。


 そしてフィーはこれまでの会話でケモナルが口下手であることはわかっていた。嘘をつくのもそこまで得意とも思えない。


 一方でアンラキはそれなりに頭は回るようだった。もしこの場に残ったのがアンラキだったなら、この質問にも上手いこと答えていたかもしれない。


 だが、このケモナルであれば何か隠し事をしているのなら、ボロを出す可能性が高いだろうとそうフィーは踏んでいた。


「……悪いが俺たちはお宝の情報を決して他人には教えない。リスリーを助けてくれたのはありがたいと思っているがそれだけは絶対なんだ」

「――ふむ。なるほどのう」


 やはりアンラキは食えない男だなとフィーは感じていた。受け答えがスムーズ過ぎる。ケモナルが咄嗟に思いついたとは思えず、恐らく事前にアンラキと打ち合わせ済みだったのだろう。


「もうフィーいい加減に――」

「フィーはここにいるのか!」

「うん?」

「ンゴ?」


 イシスがため息まじりに注意しようとすると、部屋にクリムゾンが飛び込んできた。


「何ぞ騒々しい」

「おお! いたいた。いや、そこで聞いたら何か砂漠で人助けをして、薬に必要な素材を集めるためにホルスは出てるって聞いてな。あんたに詳しい事情を聞こうと思ったんだ」

「もうお兄ちゃん失礼じゃない」


 クリムゾンの後ろからひょっこりと姿を見せたのはマインだった。そして二人の登場にケモナルの目が向く。視線は二人の尻尾に向けられていた。


「うん? 何だこれが気になるのか?」

「尻尾がぁ~?」


 クリムゾンとマインが尻尾を動かし、見せつけるように左右に振ってみせた。


「ははぁ~見たことのない顔だ。さてはあんたが砂漠で助けられたって人間の一人だな?」

「……あぁ」


 総合的に見てクリムゾンはそう判断したのだろう。それに否定することなくケモナルが答えた。


「……それと済まない。珍しいものでつい見てしまった」


 続けて軽く頭を下げる。相手の気を悪くさせないようにと思ってのことだろう。


「そうか。まぁそんなこと気にはしないさ。そして折角だからよく覚えておくんだな。俺たちは砂漠の誇りある種族パピルサグだ。ホルスの盟友でもある」

「……パピルサグ、盟友――」

 

 ケモナルが小さく言葉を繰り返す。


「ん?」

 

 一方でパピルサグの視線が、ベッドに寝かされているリスリーに向けられた。


「ふむ、そっちの女は?」

「あ、はい。彼女はリスリーさんと言ってケモナルさんと一緒に砂漠で魔物に襲われていて、今は病で体調を崩してしまっているんです」

「あぁ、薬の素材集めってのはその女の為なのか」


 そういいつつ、クリムゾンはしげしげとリスリーを眺めていた。


「ふむ、どうやら随分とその小娘が気になるようだのう」

「え? あぁ。気になるというか、誰かに似てる気がしてなぁ――」


 問いかけてきたフィーにそう答えつつ、頭を悩ますクリムゾンであった――

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