第206話 砂漠で治療薬に必要な物
「結論から言うと、やっぱり魔物を媒介とした病魔に侵されてたわ。ペリカ熱についてはうちとしても初めての症例だったんだけど――」
皆の前でケアが説明してくれた。どうやら事前に聞いていた病魔によって症状が悪化しているのは間違いなかったようだ。
「初めてのということは解決策はない?」
ケアに問いかける。ここはかなり重要だ。
「ふふ。安心して。私の錬金魔法に不可能はないわ! それに折角だから地下の実験体、いえ快く協力することを承諾してくれた人の助けもあって色々試せたからね」
え? 地下? 実験体……うん。とにかくここは一旦飲み込んでおこう。
「もともと近しい病魔のサンプルはあったから。治療薬はそう難しい物でもなかったわ。ただ、一つだけ問題があってね」
「えっと、問題と言うと何ですか?」
イシスが聞いた。僕も気になるところだ。
「薬の素材が足りてないのよ。今錬金魔法で調合出来る治療薬だと効果は薄くてね。効果を高めるには更に素材が必要なの」
「にゃん。それならうちが提供できるものならしてもいいにゃん」
「ありがとう。でも多分所持してないと思うわ。素材そのものは砂漠の魔物から手に入る代物よ」
「その魔物と言うとどんな魔物なのかな?」
アンラキがケアに問いかけた。やはり仲間の体を気にしているようだね。ケモナルも特に口には出さないけど心配そうにリスリーを見ていた。
「必要なのはサンドプロネウラの死体から採取出来る体液ね。それがあれば薬を魔法で調合出来る」
それがケアの答えだった。サンドプロネウラか。巨大な楕円形の体をしたムカデっぽい魔物だよ。
「むむむ、確かにそれだとうちは持ってないにゃん」
ペルシアが難しい顔で唸り声を上げた。これは砂漠にのみ生息する魔物のようだから仕方ないね。
「死んでなければ駄目なのか?」
「生きているときは毒性が強すぎるのよ。死んでしばらくすると毒性が弱まるから素材として使えるわ」
同席したライゴウが疑問をぶつけるとケアが理由を教えてくれた。確かにサンドプロネウラは強力な毒を保有する魔物でもある。
「あと素材は余裕があった方がいいからね。サンドプロネウラの体液に対して治療薬の有効成分が少ないから量が欲しいのよ。四匹分ぐらいは狩ってきて欲しいかも。ちょっと厳しい条件かもだけど日が落ちるまでには採取してきて欲しいわね」
そうなるとすでに昼を回っているからそんなに時間の余裕はないかもしれない。
「なら早速狩りに行かないとね」
「サンドプロネウラは行動範囲の広い魔物。急ぐのであれば手分けしたほうが良いかも知れません」
僕の言葉に反応したスイムから提案がなされた。巨大なムカデの魔物ではあるけど、砂の中を潜って移動しているし、それぞれ単独で動いているからね。
それでいて強い毒も保有していて厄介な魔物という印象だ。フィーなら楽勝かもしれないけど、ただフィーは加減をしらないから素材を回収出来なくなる可能性が高いし……
「私も同行させてもらおう。仲間のために動いて貰っているわけだから」
「……なら俺は残ろう。リスリーのことは心配だ」
アンラキは一緒に行くと言っている。一方でケモナルは残ってリスリーを見守るようだ。
「それならば妾も今回は待機しておくとするかのう。素材集めに妾は少々向かないようであるからのう」
「フィー様はやりすぎてしまうところがありますからな……」
フィーはケモナルとリスリーに視線をやりながら残ると決めてくれた。その決定にアインは大きく頷いて納得していた。
「フィーも少しは得手不得手がわかるようになりましたですの」
『素材を集めるどころか消し炭にして回られるかもしれねぇしな』
「小娘弐号はともかく、カセはいい度胸しておるのう」
『俺だけかよ!』
モルジアとカセがそう言うもフィーの矛先はカセにだけ向いていたよ。
でも、フィーが残ると決めたのはやっぱり三人を警戒しているからだと思う。だから残ると決めたケモナルが何かしないように目を光らせておくつもりなのかも知れない。
「ま、素材集めなら俺たち冒険者の仕事だな」
「マスター当然私達も出るわよね?」
「うむ。水の竜団全員で取り組んだ方が良いだろう」
「王よ! 不詳アイン! 兵と協力してこの使命に取り組みますぞ!」
「私も出る~」
「にゃん。素材集めならうちの鞄が役立つにゃん。量が入るにゃん」
「ならば私も同行しよう」
こうして素材回収班も決まり僕たちは獲物を求めて砂漠に出ることになった。
ちなみにリスリーの看病のためにイシスは残る。体力の消耗が激しくなっていくから病気は治せなくても生命魔法による治療は必要なんだ。
ラクもコブから水分を補給できる。ラクは食べた物で水の味や栄養が変わるから、栄養補給にはぴったりなんだ。
「私はお兄様についていきますですの。素材集めなら役に立ちますですわ」
モルジアがそう志願してくれた。確かに素材集めなら空間魔法が役に立つからね。
『ケケッ、あんま調子に乗って失敗するなよ』
「お、お兄様の足手まといには絶対なりませんですの!」
カセにからかわれてモルジアがムキになっていた。でも、モルジアは成長が著しいからね。本当頼りにしているよ。
「さぁ、ならリスリーさんを助けるために出発だよ!」
「ス~!」
うん。スーも張り切ってくれているね。さて、出発だ――




