第204話 砂漠の病魔を調べる
ダメーフが床でのたうち回っているけど、リスリーに邪な感情を持ったから仕方ないね。
そしてルガールが汚物を見ているような目を向けているよ。
「えっと、そのドワーフは大丈夫なのですかねぇ?」
するとアンラキが苦笑いしながら問いかけてきた。あぁ、知らない人が見れば、一体何が起きているのかわけがわからないよね。
「気にしなくていいにゃん。この破廉恥ダメーフは大体いつもこんな感じにゃん」
ペルシアもダメーフと言った! いつの間にその呼び方定着していたの!?
「ス~……」
あぁ、何かスーすらも可哀想な物を見るような目を向けているし。
「ンゴ~」
「いたたた、って、おいこのラクダ! 一体何して! うぉ!」
そしてラクがロキを咥えてそのまま外に放り出してしまった。この場では邪魔だと判断したんだろうな……
「ラク、よくやりましたですの」
「ンゴッ」
モルジアがラクの頭を撫でて褒めていたよ。う~ん、仕事さえしてれば頼りになる仲間なんだけどね。
『自業自得とはいえ散々だなあのダメーフ』
あぁ、カセにまでダメーフと……
「だめ、いえ、ロキのことはともかく」
「今、イシス様もダメーフと言いそうになってたの」
「やれやれ、困ったダメーフだ」
確かにイシスもいいそうになっていたね……メルとアインもやれやらと言った様子だし。
「それで、どうかなケア?」
「何か必要な物があったなら、手持ちの物なら用意するにゃん」
改めてリスリーの容態をケアに聞く。ペルシアも協力的だ。
「そうね。これは間違いなくたちの悪い病魔に侵されているわ。症状的には魔物や魔獣が保有する病魔の可能性が高いと思うけど、心当たりはある?」
ケアがアンラキやケモナルに向けて問いかけた。砂漠で戦った何かの影響が強いからだろうね。
「言われてみれば紫色の甲羅に包まれた大型の蠍と遭遇して戦いにはなったかな……毒を持ってそうなので最近思い当たるのはそれだ。目玉が飛び出た奇妙な蠍だったのだけど」
「それはリスキースコルピオであろうな」
『それはリスキースコルピオだぜ』
フィーとカセの声が揃った。両方とも知識が深い。最近はどことなく競い合ってるような気もしないでもないけど……
「ふむ、枷の分際で小癪にも知っておったか」
『これぐらい常識だぜ常識』
「えっとフィー。今は患者様が優先だからね?」
「カセもそんなことで意地を張るのはやめますの」
互いに牽制しあっているようにも見えたからか、イシスとモルジアがフィーとカセを宥めているよ。
さて、とにかくその魔物について聞かないとね。
「彼女の病気とその魔物に関係があるのかな?」
「うむ、それはのう」
『あぁそれはな』
「確かリスキースコルピオは、ペリカ熱という病魔を保有していたかしら。発症はしにくい筈なのだけど、潜伏するから体が弱っているときだとリスクが高くなるはずかしら。やっぱりこういうときは愛が必要よね。愛よね愛!」
えっと、結局説明はアイがしてくれたね。フィーとカセから微妙な空気を感じるよ。
「凄いアイちゃんよく知っていたね」
「マスターに褒められて嬉しいかしら。これも愛よね愛♪」
イシスが感心するとアイも嬉しそうにしていた。でも、話を聞いていると厄介な病魔なようだよ。
「……リスリーは風邪を引いていた可能性が高い。そこで体力が低下して発症したのかもしれないな……」
アンラキは眼鏡に触れながらどこか申し訳無さそうに呟いた。直接の責任は無いと思うんだけど、三人の中ではリーダーっぽい雰囲気もあるしそれで責任を感じているんだろうか?
「ケア、その病魔は治せそう?」
「診てみないと何とも言えないかな。一応血液と魔力の両方を採取させてもらうわね」
そう言ってケアが注射器を二本取りだした。一本は血液用でもう一本は魔力用だ。ケアのおかげで知ったのだけど、魔力に影響を及ぼす病魔もいるみたいだ。
だから特殊な注射で魔力も採取して調べるわけだね。
錬金魔法が使えるケアらしい方法だよ。
「これで良しと。じゃあちょっと検査室で調べてくるから少し時間を貰うわね」
そしてケアが部屋を出ていった。検査には錬金魔法で構築された特殊な部屋で行う必要があるからだ。
「ということなので少しだけ待っていて下さい」
「あぁ勿論だ。ここまでしてもらって本当に何とお礼を言っていいか」
僕がそう告げると、アンラキがそう感謝を述べて頭を下げてきた。言葉に嘘は感じられない。仲間のことも本当に心配していそうだ。皆は帝国から来た刺客の可能性も捨てきれないようだけど――
「ホルス念の為にも、身体検査はしておいたほうがいいと思うにゃん」
「私もそう思います。万が一ということもあるので」
するとペルシアとルガールが助言をくれた。やっぱりそれぐらいは必要かな……
「アンラキさんとケモナルさん。この間に身体検査をさせていただいてもいいですか? あくまで念の為ですが」
「はは、勿論構わないさ。私達は部外者なわけだしね。ケモナルも問題ないね?」
「……アンラキがそう言うなら――」
良かった。どうやら素直に調べさせてくれるみたいだ。でもこの様子なら心配することもないのかもしれないね――




