第202話 砂漠で助けだされた三人
僕たちは呼びに来たメルと一緒に城の外に出た。そこには三人の男女がいて、確かに一人はかなり具合が悪そうだった。
「ふむ――」
その三人を見て一緒についてきてくれたシャハルが、何か考えるような仕草を見せる。三人をよく観察しているけど、それ以上は何も言ってくることはなかった。
「急に押しかけるような真似をして申し訳ない」
三人の内、灰色で癖の強いモジャっとした髪をした男性が僕に声を掛けてくれた。なので僕もそれに応じる。
「いえ、こちらこそお待たせいたしました」
「ス~」
彼らに応じると肩の上にいるスーも挨拶するように鳴いていた。
「王よ、メル殿から話は聞いているかもしれませんが、この者たちが砂漠でヘルサンドールに襲われていたところを我々が発見して救出した」
三人を助けてくれたのは水の竜団の面々だ。そして彼らを代表して冒険者ギルドのマスターでもあるスイムが先ず説明してくれる。
それにしてもヘルサンドールか。意思を持った砂といった様相の魔物で、物理攻撃が殆ど効かないのが特徴だ。だけどスイム達がいてくれてよかったね。あの魔物は水には弱い。
「こっちの女の子は何かしらの病気に掛かってる可能性が高いみたい。今も症状は悪化していってるようよ」
続いてプールが教えてくれる。具合が悪そうなのは見ていてもわかるよ。今は三人の中で大柄な褐色肌の男性に背負われている格好だ。
彼女は意識も朦朧としているように思えるけど、ただ妙に突き刺さるような視線も感じた。
「とにかく、城に運ぼう」
「え? 城に、宜しいので?」
鼻に掛けた眼鏡をピクピクと揺れ動かしながら、モジャっとした髪の男性が問いかけてきた。
城と聞いて意外に思ったのかな? でも城なら休ませるのに十分なスペースもあるからね。
「問題ないですよ。城には休めるところもありますから」
「お兄様、なにか手伝えることがあればいたしますですの」
モルジアも近くまでやってきて、何をしたらいいか聞いてきた。
「ありがとう。それならイシスとケアを呼んでくれると助かるかな。後は――」
とりあえずモルジアを含めた皆にも病人の介護に必要そうな物をお願いして、僕達は三人を連れて城に入る。
「王よ、あまり油断されるでないぞ」
途中フィーが耳元で囁いて警告してくれた。相手は病人だから僕としては心配だけど、フィーは見知らぬ来訪者に警戒心を抱いているようでもある。
さっき、シャハルが言っていたこともある。シュデル達を助け魔剣を取り戻すために帝国から兵が派遣されてもおかしくない、それもわかる。
だけど、見たところ男性に背負わされている女の子は本当に苦しそうだしね。困っている人を放ってはおけない。
「シャハル、その――」
とはいえ、僕はそっとシャハルに確認を取ってみる。さっき観察するように三人を見ていた。彼も元は帝国の騎士だから、見覚えのある相手なら気づくはずだ。
するとシャハルは首を軽く左右に振った。僕が何を聞きたいか察してくれたようだけど、どうやらこの三人に見覚えはないらしい。
とにかく城の部屋の一室に弱ってる彼女を寝かせる。
「大丈夫? 今助けになりそうな人を呼んでるからね」
「ふざ、け、誰が、貴様、なぞ――」
うん? ベッドに寝かせ声を掛けると、苦しそうにしながらも僕を睨むようにして口を開いた。調子が悪いからか言葉は辿々しくもあるけど、何だろう? なにか怒ってる?
「お前、が、にいさ――」
「……大丈夫かリスリー?」
「ガッ――」
僕に対して何かを訴えかけているような、そんな気がしたのだけど、そこであの大柄な男性が割り込みリスリーと呼んだ彼女に声を掛けた。
それはいいのだけど、なにか頸部を圧迫していたような?
「……眠ったようだ」
「そうか……具合が悪そうだったものな」
「今落としてはおりませんでしたかな?」
「とにかく、わざわざ私達のためにここまでしてくれて感謝致します。若き王よ」
改めてもじゃもじゃした髪の男性と大柄な男性が頭を下げてきた。アインの疑問を上手くはぐらかしたかのような気もしないでもないけど……まぁ今は大人しく眠っていた方がいいのかもしれないね。
「申し遅れましたが私はアンラキ。隣りにいる彼がケモナル。そして体調を崩してしまっているのがリスリーです」
アンラキが名乗り、他の二人も紹介してくれた。シャハルの反応はない。偽名の可能性も無いとは言い切れないけど、随分と堂々としているし嘘偽りがあるとは思えなかった。
「わざわざありがとうございます。僕はホルスといいます」
「はい。先程水の竜団のスイム殿からお聞きしました。まだ若いのに国を纏められているとかいや素晴らしい」
両手を広げアンラキが僕を称えてくれた。さっきも僕のことを王と呼んでいたし、ある程度はスイムから聞いていたようだね。
「…………」
ふと、ケモナルと紹介された彼の視線を感じた。その目は肩に乗っているスーに向けられていた。
「えっと、この子はスーといいます」
「ス~ナ~♪」
「……精霊のようだな」
僕が紹介するとスーも両腕をパタパタさせてアピールした後、僕にヒシっと抱きついてきた。その姿を興味深そうにケモナルが眺めていた。
「……精霊がここまで人に懐くのは珍しい」
「え? 精霊に詳しいのですか?」
「……村では精霊を信仰していてな」
そうケモナルが教えてくれた。なるほどそれで彼はスーに興味を持っていたんだね。
そんな会話を続けていると、フィーがアンラキに目を向けて口を開き。
「ところでのう。こんな時に何であるが、話を聞くに主らは砂漠で魔物に襲われていたそうだが――一体何故このような場所までやっていたのかのう? 見るに商人とも思えぬが――」
そして三人に向けて核心を突くような問いかけをしたんだ――




