第184話 砂漠で追い詰められるシュデル
「糞が! 揃いも揃ってあんな連中に!」
「僕の仲間たちは強いよ。それに確かに千鋭百鬼団は強者揃いだったのかもしれないけど、砂漠での戦闘に関してなら僕たちの方が心得ている」
シュデルに対して僕ははっきりと告げた。最初はどれだけの相手か不安に思った部分もあったけど、今は安心感の方が強い。
戦いが始まってからは、自分でも驚くぐらい気持ちが落ち着いている。
既にシュデル以外の兵は全員、皆の手で制圧された。ワズイルもクリムゾンによって倒されている。途中卑怯な手を使ったようだけどそれも仲間たちの協力で妨げられた。
あっちも決着がついたも同然だろう。
「もう諦めた方がいいと思うよ」
「黙れ黙れ黙れぇええぇええ! 俺はお前みたいな砂遊びしか出来ないような無能とは違うんだよ! 見せてやるよ! この俺の切り札!」
シュデルが叫び、そしてベルトから一本の剣が飛び出てその手に握られた。
刃から稲妻が迸っている。如何にも危険そうな代物だ。空も黒い雲に覆われ始めている。
「もう生け捕りなんざ関係ねぇ! 無能な兵どもも纏めて消し炭に変えてやる! 唸れ雷鳴剣カラドボルグ!」
刹那――天が雄叫びを上げ、唸りを上げて戦場に巨大な雷が降り注いだ。
天が割れたような轟音が鳴り響き、眩いばかりの光が辺りを覆う。
「はは、ぎゃははははははは! 勝った! 勝ったぞ! これで全員消し炭だぁああぁああ!」
「喜ぶのは少し早すぎじゃない?」
「……は?」
光で視界がふさがったからか、シュデルも頭上を覆うそれに気が付かなかったようだね。
周囲の皆も驚いてはいたけど、全員無事だ。でも良かった。こんなこともあろうかと一通りの砂はモルジアに出しておいてもらっったんだ。
だから作れた――
「な、なな、なんじゃこりゃぁあああぁあぁああ!」
空に浮かび上がる輝かしい天井にシュデルが驚愕していた。だから僕はシュデルに向けて言い放つ。
「砂魔法・金剛天覆――雷じゃダイヤモンドは砕けない。知ってた?」
そう頭上を覆っていたのはダイヤモンドだった。ダイヤは電気を通さない。だからあれだけ巨大な雷でも防ぐことが出来た。
「ぐ、ぐぅぅうう、ぐぉおぉおぉぉお! 愚弟の癖に! 出来損ないのゴミの癖に! 砂しか操れない蛆虫が俺様に偉そうに講釈垂れてんじゃねぇええええええ!」
シュデルが再び別の剣を取りだし、僕に近づくこと無く剣を振った。その度に目の前で斬撃が走っていく。
「ギャハハハ! どうだ! これは無空剣ゼロス! 間合いに関係なく相手を切れる魔剣だぁああ! 雷が効かなくてもこれならテメェみたいなひ弱なゴミを膾切りに出来るのさぁああぁあ!」
「いや、それも無駄だよ。そういう攻撃はスーが守ってくれている」
「ス~♪」
確かに距離を詰めることもなく、シュデルが剣を振るごとに僕の周囲に斬撃が降り注ぐ。だけど、スーの砂による自動防御が全ての攻撃をいなしてくれた。
「ば、馬鹿な! ふざけんな! テメェ、そんなよくわかんねぇ生き物に守られて恥ずかしくないのか!」
「寧ろ感謝してるぐらいだよ」
「ス~♪」
スーの頭を撫でてあげると、目を細めて僕の頬に顔を擦り寄せてきた。こんなときでも、いやこんなときだからこそとても癒やされる。
「お前の言う通り、僕一人の力なんて些細な物だ。だから皆の助けがいる。そしてだからこそ僕は皆を裏切らない。仲間の被害も考えない暴挙に出るような真似だって絶対しない」
「だ、黙れ黙れ黙れ! 何が仲間だ! 自分以外の連中なんて全員駒だ! 仲間だ何だと甘っちょろいこと言ってる奴が戦場で生き残れるわけねぇんだよ!」
「しかし、実際に追い詰められてるのはお前の方だろう」
「滑稽よのう。自分だけが周りが全く見えていないと言うのに、それにも気づかず相手を下に見ているとは。まさに裸の王様ではないかえ」
スイムとフィーの声が届く。シュデルは俯き加減で悔しそうに肩を震わせていた。
「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえぇえええぇええええ! 俺はまだ終わっちゃいねぇええぇええ!」
再びシュデルが魔剣を取り出す。すると僕の周囲の空気が震え――熱が発生し弾けた。
――ズドオォオォォオオオン!
「ぎゃはははははは! 今度こそやったぞ! 自動防御だろうが関係ねぇ! これは爆裂剣メーグーミン! 一度使うと暫く使えねぇがその代わりとんでもない爆発を引き起こす魔剣だ! 見たか! テメェらの王様が無様に弾け飛ぶ瞬間を――」
「お兄様大丈夫ですの?」
「うん。ありがとうモルジア助かったよ」
「ス~♪」
「何ぃぃいいぃィいいいいいッ!」
シュデルが叫んだ。何か凄い表情になってる。
「忘れましたの? 私は空間魔法が使えますの。どれだけの爆発だろうと当たらなければ意味がありませんですの!」
『ケケッ、そりゃそうだ』
うん。モルジアのおかげで僕は爆発範囲から逃れることが出来た。本当に皆には感謝だよ。
「て、テメェ妹なんかに守られて恥ずかしくないのか!」
「え? いや別に……むしろどうして恥ずかしいと思うのかがわからないんだけど……」
逆にモルジアがピンチのときは僕だって全力で助けるし。協力することが悪いとは全く思えない。
「ふ、ふざけやがって! だったらもう遊びは終いだ!」
「お主、この状況で遊んでる余裕なんてなかろう。そんなこともわからぬから駄目なのだぞ?」
「うむ。そういうところだぞ?」
「う、うるせぇ! 全剣解放ーーーーーー!」
フィーとライゴウのツッコミを受けてシュデルが叫ぶと、ベルトから大量の剣が飛び出してシュデルの頭上に浮かび上がった。
「どうだ見たかぁあああぁあ! かなりの魔力が持ってかれるが関係ねぇ! 千鋭百鬼団が全滅しようと俺にはこの魔剣がある! この全ての力を発揮してテメェら全員この世から消し去ってやるよ! 俺は愚弟! 貴様よりも価値ある究極の剣魔法の使い手なんだよ! テメェら三級品とは違う最強の――」
「黙れ」
――ドォオオォオォォオオォォオオォオオン!
シュデルが口上を述べている途中だったのだけど、飛来した砲弾によって爆発が起き、白目を向いたシュデルが宙を舞った。シュデルも解放した魔剣も砂の上にボトボトと落ちてくる。
「たく、べらべらべらべらうるせぇんだよ。イラッとしてつい撃っちまったぜ」
そして自家製の戦車から顔を出してロキが言った。う、うん。えっと、やったか、な? これで決着で、い、いいのかな?




