第174話 アインとメルは集落を目指す
「我が王と同盟の仲間の為に頑張ろうぞ!」
「「「「「「「「アギィ~~~~!」」」」」」」」
「私達もホルス王の為に頑張ろうね!」
「「「「「「「「アリィ~」」」」」」」」
そう言って張り切るのはホルスに忠誠を近いしアイアンアントの王アインとハニーアントの女王メルであった。
そしてこの王と女王には大事な使命があった。それは――人質となったパピルサグ族の救出。
パピルサグ族の集落は既にホルスのひとつ上の兄であるシュデルによって占拠されている。地下集落には多くの騎士や兵がいて見張っていることだろう。
その上で、場合によってはシュデルがパピルサグ族を人質に取ることも考えられた。一体どうすれば、と考えを巡らせるホルスに進言したのはアインとメルであった。
そして二人が告げた作戦は、穴を掘り地下に囚われたパピルサグ族を助けだすという作戦。
わざわざ砂漠に穴を掘って行くなど一見無謀にも思えるが、だがそれが蟻たちとなれば話は別であった。
蟻は地下に巣を造る。つまり穴掘りのスペシャリストなのである。アインの蟻塚は一見すると鋼鉄の砦に見紛う程の出来であったが、それも地上と地下とに分かれていた。ハニーアントの女王がかつて暮らしていた巣にしても同じである。
故にこの作戦を思いついた。そしてホルス達は時間稼ぎのために、シュデルを兵に呼び出させ、ある程度の時間を稼いだのである。
そして別働隊として砂漠を掘り地下を進むアイアンアントとハニーアント。その速度は流石に速い。
「よし、この調子で進めば、問題なく地下集落につくであるな」
「アギィ~」
「皆ありがとうね~」
「アリィ~」
そしてアインとメルも蟻達と協力して一生懸命穴を掘っていく。その時だった、ズボッと正面の砂が崩れ、ちょっとした空洞に出た。しかもそこにはなんとスナオオミミズが数匹潜んでいた。
「キシャァアアァアアアア!」
スナオオミミズが襲い掛かってくる。アイアンアント達は槍を構えて応戦。ハニーアントは戦闘は得意ではないが、蜜を与えて元気になるよう務めていた。
「むぅ、そうだ! お前たち、ここは我に任せて先に行くのだ!」
「え? アイン一人で囮になるってこと?」
「ふっ、半分正解であるな。だがこの程度倒そうと思えば我らならそう時間は掛からんだろう。だが、折角だからこれを利用するのだ!」
「利用……あ、そうか!」
それを聞いてメルもピンっと来た顔を見せた。
「わかったよ! なら先に行くね!」
「うむ! 任せたぞ!」
そしてアインはスナオオミミズの相手をし、メルと残りの蟻たちは一生懸命砂を掘り進んでいった。
そして暫くして――硬い地盤にぶつかった。きっとこの先が集落に違いないと更に掘り進めていき。
――ボコッ!
ついに壁に穴が開き、そしてパピルサグ族の地下集落に抜け出た。
「やった! 抜けたよ!」
「「「「「「「「アギィ~♪」」」」」」」」
「「「「「「「「アリィ♪」」」」」」」」
アイアンアントとハニーアントも無事集落に到着できたことに喜んだ。メルが集落に入ると、すぐ足もとには大量の砂糖。
どうやらパピルサグ族が砂糖を集めている場所に出てしまったようだ。
「すご~い! あま~い!」
思わずメルが砂糖を手に取りパクパクと食べてしまう。メルは甘いものが大好きなのだ。
「あのパピルサグの牝よぉ、一匹ぐらい味見してもいいよな?」
「お前マジか? 相手は蠍だぞ?」
「蠍と言っても尻尾だけだろ? いけるいけ――」
目的も忘れついつい砂糖に舌鼓を打つメルだったが、そんな中、千鋭百鬼団の兵が二人やってきてメルに気がついた。目をまん丸くさせた後、仲間たちを呼ぼうと振り返る。
「お、おいお前ら! こっちにでかいおっぱいの幼い女ガッ!?」
「えい!」
兵士の一人が大声を上げようとしたところに、メルの光魔法が炸裂した。兵士が一人倒れ、残った一人もアイアンアントの手で倒された。
「危なかったよ~砂糖に夢中になりすぎちゃった。反省反省」
「アリィ~……」
反省と口にしながらも砂糖を舐めるメルに、ハニーアントはやれやれといった顔を見せた。
「アギィ!」
「うん! そうだね! 皆を助けないと。そのために先ずは様子見!」
メル達と数匹のアイアンアントで集落の様子を覗き見る。そこには一箇所に集められたパピルサグ族と囲むように配置された帝国兵と騎士達。千鋭騎士団というだけあって基本は十人一組となって行動しているようだ。もっとも時には今のように数人が離れることもあるようだが。
「おい、砂糖を見に行った二人が遅いぞ」
「……何かあったのかもしれんな。行くぞ」
まずいと、メル達は一旦戻った。
「どうしよう……そうだ!」
そしてメル達は身を潜める。そこに千鋭百鬼団の八人がやってきた。
「何だ? あの二人はどこに行ったんだ?」
「さぁ? うん? み、見て下さい隊長! 壁に穴が――」
「今だ!」
兵士の一人が壁の穴を指さし、皆がそっちに意識を持っていった直後砂糖の中に隠れていたメルが姿を見せて、光魔法を行使した。
「光魔法・光散弾!」
メルの手から放たれた光が散弾となって騎士や兵士に襲い掛かった。そしてメルの魔法で怯んだ隙にアイアンアントが槍を構えて突撃する。
「こしゃくな! 舐めるなよ小娘!」
すると兵達を纏めていた騎士が剣を振るい、メルの放った光の弾丸はまるで吸収されるように刃に吸い込まれていく。
「え? どういうこと?」
「ふん。我ら千鋭百鬼団の騎士にはそれぞれシュデル様自慢の魔剣が与えられている。これは吸収剣ダイモン。吸収力の変わらないただ一つの魔剣だ!」
騎士がそう得意になって叫んだ。その上で魔剣を掲げると、今度はメルの体が吸い込まれていく。
「ははは、あらゆるものを吸い込むダイモンの力を見――」
「キシャァアアァアアァアア!」
その時だった壁の穴から飛び出て来たスナオオミミズがあっという間にダイモンを構えた騎士をぱっくりと喰らい飲み込んでしまう。
そして更に巨大ミミズが数匹出現し、他の兵もパクパクと食べていった。
「メル、何していだのだ! ずっと合図を待っていたのだぞ!」
そして次にメルに追いついてきたアインが不機嫌そうに叫ぶ。
「あ、ごめん忘れてた~でも結果オーライだよね♪」
アインの怒りも受け流し、テヘッと頭を小突くメルであった。何はともあれ、こうして地下集落でのアインとメルの救出作戦が始まった――




