第156話 アプステア外務卿とトヌーラ商会
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「この国は商業で成り立っている国にゃ~それは内需だけではなくて外需も含めての筈にゃ~それを止めるような行為を商人達が納得すると思えないにゃ~」
今アプステアは他国に対してと言った。エルドラド共和国は大きな港を構える港湾国家でもあり、他国という意味で言うなら南の海洋諸島に存在する国々も対象となる。
しかも魔法火薬はわかりやすいにしても魔導具に関しては生活に役立つものも多々ある。それらを全てストップしては経済的な打撃も大きいだろう。
「勿論急なことだからな。救済処置も用意してある。政府が問題ないと判断した商会などは特例として許可を出すこともある」
「それならうちもお願いしたいにゃ~」
「駄目だ。影響力の大きいところは除外される。アリババ商会はこの国で君の商会と一、二を争う程の大商会だ。そういうところは制限せざるをえないな」
不敵な笑みを浮かべアプステアが言った。君と口にしロベリアを見てはいたが、最初からわかっていたが、これはアリババに対する嫌がらせでしか無い。
「まぁただでさえアリババ議員は砂漠の国とやらにご執心だったようだからな。それも踏まえたら許可など出せるわけあるまい」
「アプステア外務卿。今の話でいくとうちもその中に含まれることになるのでは?」
「あぁ、そうだな。君の商会も魔法火薬を扱っているのだったな。ま、これも致し方無しと思いたまえ」
魔法火薬に関しては確かにトヌーラ商会でも取り扱いがあった。実際ヨクゴウは砂漠に向かった際にこの魔法火薬も持参していた。
質と量ではアリババ商会に一歩及ばないが取引先も存在する。輸出そのものに規制が掛かるなら従来の取引にも影響が及ぶことになる。
ただ、アプステアの言い方には若干の含みも感じられたが。
「とにかくもう決まったことだ」
「期間は緊張状態が続いている間だけです。決着がつけばすぐに解除されますよ」
「まぁそうだな。白旗上げて全面降伏するか、戦いになってすぐに決着でもつけば片は着くだろうさ」
アプステアはどちらとは言わなかったが言外から、バラムドーラに勝ち目はないという思惑が感じ取れる。アリババ商会からの協力がなければ万が一もありえないと考えているのだろう。
「そちらの考えはよくわかりましたにゃ~だけど思い違いはしないことにゃ~バラムドーラはまだまだ小国とは言え帝国が侮れるような国ではないにゃ~」
「ふん。私は特に名指しはしてないつもりだがな」
「それは済まなかったにゃ~」
不快そうに眉を顰めるアプステアに心にもない謝罪で返すアリババであり。
「それと、今回のことは良く覚えておくにゃ~ケットシーは受けた恩は必ず返すにゃ~」
「ほう? それは殊勝なことだ」
「同時にやられたことも決して忘れないにゃ~猫はたとえ死んでも恨みは忘れず化け猫になってでも相手を祟りころすにゃ~ケットシーも同じにゃ~やられたらやり返すにゃ~猫の怨返しにゃ~それを――良く覚えておくにゃ」
静かな怒りがその猫目に宿っていた。一方でアプステアもまた悪びれる風もない、ふてぶてしい顔でアリババの視線をその身に受けていた。
やれるものならやってみろという挑発めいた様子も感じられる。
そしてアリババはトヌーラ商会を後にした。
「ふん、野良猫が偉そうに」
あとに残ったアプステアが忌々しげに口にする。
「さて、邪魔な猫は消えたし君とじっくり話したいものだな。以前、あの野良猫を助けるような発言をしたことも踏まえてな」
そして続けてアプステアが有無を言わさない空気を滲ませながらロベリアの私室に向かった。
「別にアリババ商会と協力しようなどと思ったわけではありませんよ。ただ商売として悪くないと考えたからです」
「ならそんな下らない真似はもう必要なかろう。バラムドーラなどというふざけた国は直になくなり砂漠の国とやらは帝国の領土となるのだからな」
室内に招き入れた後、ロベリアは議会でのことを説明した。それには嘘はなかった。そもそもアリババにしてもロベリアにしても互いがライバルであるという考えに変化はない。
しかし、利用できるところは互いに利用し合ったほうが結果的に利益につながる。それだけの話だ。
そしてそれはロベリアにとってマグレフ帝国とバラムドーラという二つの国にしても一緒である。
「随分と自信がおありなようですね」
「考えるのも馬鹿らしい。長い歴史を誇り、戦争においては負け無しの帝国と生まれたばかりのよちよち歩き程度の精々集落でしかない蛮族となど比べるまでもない」
確かに国力という点ではそうだろう。しかしバラムドーラと統治する王には地の利というものがあり、これがほかを寄せ付けない圧倒的な強みとなりえる。
「集落で王様気取りでふんぞり返っている馬鹿は、帝国を追放された皇子らしいしな。砂魔法などという砂しか操れない使えない属性持ちだそうだ。まったく身の程知らずも甚だしい」
「しかし、場所は砂漠ですよ」
「それがどうした。砂漠など砂が多いだけの話だ。砂を操れると言っても精々砂遊び程度のものだろう。どれだけ砂が多かろうと扱える魔法が貧弱では意味がない」
「確かにそうですね」
当然ロベリアは王であるホルスの扱う魔法がそこまで貧弱でない、いやそれどころか巨大な砂城や砂の塔を生み出してもまだまだ余裕があるぐらいのとんでもない魔力量と腕を誇ることも知っていた。
だが、それを敢えて教える必要もない。
「とにかく、お前も今までの商会のように帝国に付いておいた方が良いぞ。水であっさり流される砂の城のように、そのバラバラダムーダという集落も消えてなくなるのだからな」
「うふふ、バラムドーラですわ」
「ふん。消え去る集落の名などどうでもいい。とにかく今回だけは若気の至りということで大目に見てやろう」
「……ありがとうございます」
ロベリアは形だけのお礼を述べる。
「それとだ、お前のところで扱っている魔法火薬。私の知り合いが買い取りたいと言っている。お前も輸出制限が掛かり大変だろう? だから今回は特別に残っている在庫は全て買い取ってやる。悪い話ではあるまい?」
「それはとてもありがたいお話ですが、結構な量になりますよ?」
「問題ない」
「……一体そんなに何にお使うつもりで?」
「知らん。私は詳しくは聞いていない。だが、信頼できる相手だ。私が保証しよう」
当然だが魔法火薬は危険物だ。扱いには細心の注意を払う。従来の火薬と違い魔力反応を用いることで爆発を引き起こす仕組みではあるが、その分爆発力が凄まじいのだ。ちょっとしたミスで事故に繋がりかねない。
当然それだけの代物を用途も説明せず購入など本来ありえない。信頼に足る人物であれば尚更だ。
「とにかく買い取る。いいな? まさか、ことわりはしないだろう?」
「しかし……」
「いいな?」
ギロリとロベリアを睨めつけ、眼光鋭く問う。これは既に恫喝に近い。
「わかりました。ただし一つ条件がございます」
「条件だと?」
「はい。魔法火薬は取り扱いが非常に難しい代物です。そこで、アプステア外務卿の顔で保険に加入させてほしいのです。確かおりましたよね? 身近な方で保険を扱っている方が?」
「……保険か。事故などありえないだろうが、ま、いいだろう。それぐらいならな。なら、それで決まりだな。しっかり頼んだぞ」
「はい。普段からお世話になっているアプステア外務卿の頼みですからね。保険もしっかり最高の物に加入させて頂きますわ」
「はは。なるほど。いい心がけだ」
そしてアプステアは機嫌よく商会を後にした――
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