第15話 砂漠で出会ったスフィンクス
砂金の中に隠れていた穴を探索することになった僕とラクは、その奥でスフィンクスと出会った。
スフィンクスは僕が気に入ったらしくてここから出したくないらしいんだけど、それじゃあ僕も困る。そうしたらスフィンクスが僕とゲームをしないか? と持ちかけてきたんだけど。
「ゲーム、というと?」
『文字通りさ。本来は砂金を盗もうとした連中に試練として持ちかけるものだけどね。もしそのゲームにお前が勝ったらここから出るのを許してやろう素晴らしい特典付きでね』
「え~と、つまり負けたら?」
『普通なら喰ってやるんだけど』
「えぇええぇええ!?」
「ンゴォォオオォオオ!」
口をバッと空けてとんでもないことを言い出した。ラクも驚いて僕の背中に隠れ、頭を擦り付けながらガタガタと震えている。
『ふふ、安心するんだねぇ。今回はこっちから持ちかけているわけだし、坊やを気に入ったと言ったろう? 坊やが負けてもここで一緒に暮らしてもらうだけさね』
それはそれで嫌なんだけどなぁ。
「ゲームしないで力づくで出ようとしたら?」
『その時は妾も全力で阻止させて貰うよ。だけど止めておいた方がいいさね。妾は強い。かつては神獣なんて呼ばれていたこともあるぐらいさね』
し、神獣……魔獣でさえ手強いことが多いのに、神獣といえばその更に上の存在だよ。
人と会話が出来る知能を持っているみたいだから、ただの魔獣とかじゃないと思ったけど神獣となると、確かに僕がどう逆立ちしたって敵わないかも知れない。
そうなると……受けるしかないのか。
「一応確認だけど、絶対に勝てないゲームではないんだよね? 内容を聞いても?」
『あぁ、勿論さね。勝ちの決まっているゲームほどつまらないものはないのさ。内容は単純。妾の出す問題に答えれば良い』
問題……つまり頭脳を競うってことか。あ、あまり得意ではないんだけどな。
『一応言っておけば、これは決して解けない問題ではないさ。さぁどうする?』
「えっと、時間制限は?」
『そうさねなら』
スフィンクスが前足を勢いよく上げると、床が弾け金が天井にぶつかってこびり付いた。それから少しずつ金が降り落ちてくる。
『あの天井の金が全て落ちきる前に答えるんだね。見立てでは半日ぐらい、他の連中よりは余裕を持たせてやったよ』
半日、そんなにいいのか。他の連中ってことはかつて金を盗もうとした人はもっと短かったということか。
『さぁどうする? 金はもう落ちてきてるよ』
「や、やります!」
こうなったらもう覚悟を決めるほか無い。時間はある。じっくり考えれば答えられない問題じゃないとスフィンクスも言っている!
『そうかい。じゃあ、問題だ。いいかい?』
「はい!」
「ンゴッ!」
ラクもやる気みたいだ。とにかく、答えないと皆も心配しているだろうし。そしてスフィンクスがゆっくりと問題を語りだした。
『それはとても残忍だ。人も生物も関係なく殺し、残虐の限りを尽くす。
しかしそれはとても優しく慈愛に溢れてもいる。困っている者に手を差し伸べ時には自分の身を切り刻んででも弱者を助ける。
しかしそれはとても強欲だ。金と物に執着し時には奪ってでも手に入れそれでもまだ満足しない。
しかし同時にそれは慈しみにあふれてもいる。自分を顧みず分け与え例えそれで己が苦しくても一切文句は言わない。
それはとても勇敢だ。遥かに自分よりも強大な相手であっても命を顧みず挑み戦う。
しかしそれはとても臆病だ。遙か先の未来の死にまで不安を覚え、永遠さえも望む――さぁ、それは何か?』
スフィンクスの語りが終わった。とても美しい声で思わず聞き入ってしまったけど、でも、これがその問題?
『どうだ? ま、時間はまだある。ゆっくりと』
「えっと、もう答えても?」
僕がそう告げると、スフィンクスの整った右の眉がピクリと反応した。
『もういいのかい? 言っておくけど答えるチャンスは一度きりだよ』
「は、はい。大丈夫だと思います」
『……わかった。答えるが良い』
「はい。その答えは、人間です」
そう、答えた。スフィンクスが目を丸くさせ、かと思えば。
『フフッ、フハ、フハハハハハハハハハッ』
上半身を仰け反らせて大声で笑い出した。え? まさか――
「間違って、ましたか?」
「ン、ンゴ……」
ラクも不安そうにしている。だから少しでも不安を取り除こうと首のあたりを撫でてあげたら頭を擦り付けてきた。
こういうところが可愛いけど、でも、もし間違っていたら――
『ふふ、いや、正解さね』
「え? よ、良かったぁ~」
「ンゴゥ~」
僕もラクもその場でへなへなと腰を落とした。はぁ、緊張したぁ。
『それにしても、随分とあっさり答えられたものさね』
「えっと、でも、その、怒らないですか?」
『何を怒ることがあるんだい。あんたはゲームに勝ったんだ。言いたいことがあったら言ってみな』
「うん、その、問題はそんなに難しくなくて、ちょっと肩透かしだったと言うか……これ答えられない人はいたんですか?」
スフィンクスの問題は全て人間に当てはまるものだった。人間は不当に相手を脅かすこともあれば、困っている相手に手を差し伸べることもある。
『少なくともここにやってきた連中には答えられなかったさ。何故かわかるかい?』
「う、う~ん……」
正直僕にとってはそっちの方が難しい問題かもしれない。
『それは人間を一番知らないのは人間だからさ。それに余計なプライドが邪魔をすることもある。聖職者を名乗る奴らもきたことがあったが、金に目が眩んでいるくせに自分は高尚な人間だと信じて疑わなかった。そういう連中は答えを聞いて大体怒りだすのさ。自分はそんな人間ではないとね。滑稽な話さね』
そう言ってククッと笑ってみせた。そ、そんなものなんだね。僕にはよくわからないけど。
「えっと、それならこれで出してもらえる?」
『あぁ、そうだったねぇ。じゃあ――』
僕が問いかけるとスフィンクスが頷き、かと思えばその体が輝き始めた。
ま、眩しい……何事かと思ったけど、暫くしたら光が収まっていった。そして、そこにはスフィンクスの姿がなく、代わりに褐色の肌の美女が立っていた。て、あれ?
「えっと、スフィンクスは?」
「何を言うておる。妾はここにいるぞ」
「え? ええええぇええ! 君がスフィンクスーーーー!?」
「ンゴォォオォオオ!」
お、驚いた。さっきまであれだけ巨大だったのに今は絶世の美女って容姿だもの。
「何を驚くことがあるか。妾ぐらいになれば人の身になることなど容易い」
そういうものなんだ……流石は神獣だね。
「でも、なんで人の姿に?」
「ふむ、何じゃ忘れたのか? お主がゲームに勝ったら特典付きで出してやると言ったであろう?」
あ、そういえば確かにそんなことを言っていた気がする……あれ、てもしかして?
「その特典って……」
「うむ、妾であるぞ。今から妾はお主の眷属じゃ。よろしくのう主よ」
スフィンクスが下僕に!?
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