第136話 ワズイル、帝国に帰還する
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「ようやく戻ることが出来たか……」
死の砂漠を乗り越え、更に辺境の宿で一泊し、それから馬車を手配してワズイルはようやく帝都に戻ることが出来た。
生き残った部下をもその手にかけ、一人になり安全なルートを辿っては来たものの結局砂漠を越えるのに十日、辺境から帝都までは更に十日と随分と掛かってしまった。
そして時間が掛かったからこそ、ワズイルも冷静に現状を分析することが出来たと言える。
ワズイルは危機感を抱いていた。生き残ったキースから情報を聞き、これならばまだ面目は保たれるかもしれないと、そのときは思ったが、よくよく考えてみれば圧倒的な敗北である。
ワズイル以外の兵も全て失っており、これは大失態以外の何物でもない。確かに砂漠に暮らす特殊な種族やそこで手にはいりそうな砂糖についての情報を持ち帰りはしたが、帝国から使えないとされ追放された皇子に惨敗というのはそれ以上に手痛い結果である。
どう考えてもこの情報と釣り合うわけもない。おそらくこのまま素直に皇帝に報告しても良くて降格、最悪は――
ワズイルはごくりと生唾を飲み込んだ。これまではどんな手を使ってでも勝ち続けてきた。だからこそ彼は評価され、皇帝の娘を妻に娶る話も出てきたのである。
だが、ここまでのことをしでかしてはその功績も一瞬にして吹き飛びかねない。ワズイルは頭を抱えたが。
「……やはりあの男に頼むほかないか――背に腹は変えられん」
決意を胸にワズイルは城へと戻ってきた。
「私だ。今戻った」
「こ、これはワズイル将軍! ご帰還されたのですね! お疲れさまです!」
「ところで将軍。兵の姿が見当たりませんか?」
「……こちらにも色々と事情があるのだ。とにかく直ちに報告する必要がある」
「ハッ! それではすぐに陛下との謁見に臨まれるのですね」
「……いや、その前に話しておくべき相手がいる。シュデル殿下は今どこにいる?」
そしてワズイルは兵士から話を聞き第四皇子であるシュデルの下へと向かった――
◇◆◇
「つまり貴様は、あの馬鹿に攻め入ったが二千もの兵を全て失い、むざむざと戻ってきたというわけだな」
「ハッ! も、申し訳ありません」
謁見の間にて皇帝を前にワズイルは深々と頭を下げた。その表情には緊張の色が見える。
一方で皇帝の額には血管が浮かびあがりピクピクと波打っていた。表情も険しく今にも剣を取り出してワズイルを切り捨ててもおかしくないほどの憤怒が感じられる。
「全く貴様には失望したぞワズイル」
「返す言葉もありません……」
「さて、この後始末どうしてくれようか」
「僭越ながら父上。私からも宜しいでしょうか?」
肘掛けをトントンっと指で打ち、苛立ちを隠しきれない様子の皇帝であったが、そこで立ち上がり第四皇子であるシュデルが意見を語る許可を求めた。シュデルは先にワズイルから相談を受け、そして彼と一緒に皇帝との謁見を求めやってきた。
「……構わぬ。何だ?」
「ハッ! 確かに此度のワズイルの失態ぶり、目に余るものがあります。ですが、それもあの愚弟、いやもはや弟と口にすることも穢らわしい存在ではありますが、奴が卑怯にも妹のモルジアを人質に取ったことが要因。ワズイルからしてみれば未来の妻を盾にされ脅されたのです。ついでに言えば先遣隊として向かわせていたキース達もです。ワズイルは未来の妻と部下を思うあまり何も出来ず、しかもあの卑怯者は言うことを聞いたにも関わらずワズイルの連れていた兵も先遣隊も見せしめのように惨殺したのです」
ペラペラとまるで見てきたかのように嘘を語るシュデルの話に皇帝は耳を傾けた。
「確かに二千もの兵をみすみすと失ったことはとても言い訳出来ることではありません。しかし、ワズイルも悔しい思いをしたのです。それに一応は有力な情報も持ち帰りました」
「……ふむ、砂漠の蠍の尾を持つ蛮族、それに蛮族が隠し持つ砂糖か……」
「はい。正確には砂糖の砂らしいですがそれはいいでしょう。とにかくそいつらも利用すればあのような愚か者を落とすのは容易い。ワズイルによると生意気にも砂漠に城まで建てたようでありますが、それであれば我が帝国が利用してこそ意味があるというものでしょう」
「ふむ、それは確かにそうであるな。あの死の砂漠に帝国の拠点が出来たとあれば、得られる利益は計り知れないであろう」
皇帝が大きく頷き、シュデルが、フッ、と笑みをこぼした。ここまでの話に真実はほぼないが、それは皇帝とてわかっていることだ。茶番のようなものだが何かしら理由がなければ決断出来ないこともある。
「父上、モルジアの救出及び愚かなる反逆者ホルスの討伐。今度は是非ともこの私にお任せください。またこの私の顔を免じてワズイルの処罰を保留とさせて頂きたいのです。勿論砂漠の情報を知るワズイルも今回の遠征には付いてきてもらい、その上で挽回の機会を与えたいと考えております。ですのでどうかお慈悲を」
「わ、私も全身全霊を掛けシュデル殿下をサポートし、此度の汚名を返上したいと考えております! どうかどうか――」
ワズイルも平身低頭し詫びと慈悲を求めた。その様子に皇帝は嘆息しつつ、シュデルに視線を移し答えた。
「話はわかった。お前の顔に免じて今回だけは処罰を見送ろう。ただし、階級は准将とする。それでいいな?」
「……ハッ、陛下の慈悲深さに感謝の言葉もありません。その御恩に報いるためにも今度こそ奴らに目にもの見せてくれましょうぞ」
「私も大いに期待しているぞワズイル」
こうして皇帝との謁見を無事乗り切るワズイルであった――
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