第132話 議会
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死の砂漠より南に位置するエルドラド共和国。この地は大陸唯一の非君主国家である。
そのためこの国では他国でいうところの皇帝や王が存在しない。代わりに選挙で選ばれた大統領が統括するが、これも任期が決まっており期間が満了した時点で再び大統領選が行われることになる。
そしてこの国では何も大統領一人の手で何もかもがきまることではない。国全体に関わる事業や法令に関しては元老院の議会にて提出され、議員たちによる話し合いや多数決によって議決されることで国のあり方が決まっていく。
そしてまさに今元老院にて定期的に行われる議会が開かれていた。様々な議案が提示されすぐに決まる物もあれば期限を決めての保留となるものも多い。
そして話し合いも進み、そろそろ閉会かなという空気が漂ってきた頃一人の議員が立ち上がり意見を述べた。
「おかしいにゃ~僕の提出した議案が残っている筈にゃ~」
待ったを掛けたのはアリババ商会の商会長アリババであった。すると進行役の議員が手元の資料を確認するが。
「アリババ議員の議案は特に見当たりませんが」
「……事前に提出しておいたにゃ~無いというのなら手元にあるのを出すにゃ~」
「いや、それは事前に提出して頂かないと何とも……」
「出してはいたにゃ~」
「おやおや、これは困りましたな。提出した物が見当たらないとは」
「しかし、本当に出したのですかな?」
「いやいや、しかしアリババ殿はこう申されておりますしなぁ」
「いやしかし、アリババ殿はケットシーですし。ほら、良く言うではないか。猫は三歩進むと忘れると」
「おや、それは鶏ではなかったかな? いやしかし、似たようなものでしょうかな~」
そのやり取りに何人かの議員が示し合わせたかのように笑い出した。その様子にアリババが嘆息する。
現在、議員の中で亜人とされる他種族で選ばれているのはアリババただ一人だ。しかしこれにしても共和国としての公共性をアピールする為のお飾りとして選ばれただけという声も多く、また実際議員の中にもそういった空気が漂っていた。
だが、そのような議員の冷やかかな目に反してアリババは議会で奮闘していた。これといった派閥に所属せず、賄賂や見返りも受け取らない分クリーンなイメージがつき、その上で他の議員が指摘しないような問題にも忌憚なく切り込んでいった。
故にアリババに対する国民の支持率は高い。だが、このことに顔を顰める議員も多い。亜人の支持率がたかまることが面白くないという考えがある。
また、特にアリババはマグレフ帝国への依存性についても指摘しており、そのことを面白くないと考え警戒する議員や派閥がいる。
勿論そういった連中は帝国からの見返りを受け取っているような者たちなわけだが――
アリババが提出した議案を議会で取り上げさせないよう裏で手を回したのもそういった連中だろう。
「議案を提出した時点で記録が残っているにゃ~それを確認するといいにゃ~」
「いやはや、にしても時間が掛かることですし」
「ならば今回は閉会し確認後次回に回すとして――」
「あら? もしかしてその議案というのはこれのことかしら?」
アリババはこのまま閉会されればそのままなかったことにされるかもしれないと危惧していた。しかし思わぬところから助け舟がだされることとなる。
議会で声を上げたのはトヌーラ商会の新会長でもあるロベリアであった。ヨクゴウが死亡した後、その後任として選ばれたのが彼女であり議会に参加したのは今回が初めてとなる。
「な、なんでそれを!」
「何故かしら? 私が受け取った資料の中に紛れていたわ。間違えてこちらに回ってきたのかもしれないわね」
ニッコリと人好きのしそうな笑顔を振りまいた。多くの議員がその笑顔に惑わされる。
「し、しかし、それが本当に提出されていたかが問題ですな」
「そうですな。記録を探らなければいけません。やはり一旦閉会して次の機会に――」
つい先程まではないことを理由に閉会を求めた議員が今度はあっても文句を言い出した。どちらにせよ議会で論じさせないつもりなのだろう。
「あら? でもこちらの書類には証印がされているわ。それであるなら調べるまでもないでしょう? はい、どうぞ」
しかしロベリアの言葉に閉会を進めようとしていた議員たちがギョッとした顔を見せた。ちなみにこの議案は廃案として回されていた。
だがロベリアが密かに回収し、議会が始まる前に証印を上手いこと言いくるめてさせていたのだ。
「わかりました。ではこの議案に則って話を進めていこうと思います」
結局議案が提出されアリババの提案に記された概要が語られた。資料はアリババから議員に回されていく。
何人かの議員が悔しそうにしていた。そしてその議案が進行役から読まれると多くの議員からざわめきが起きた。
「アリババ議員。この議案について詳しく宜しいですか?」
「にゃ~わかったにゃ~皆様の手元に配られた資料にある通り、現在の貨幣、特に金貨について帝国から輸入される金に依存する傾向が強かったにゃ~」
ひげを肉球付きの手で弄くりながら更にアリババが語る。
「――ここ最近帝国からの金の輸入が減っているにゃ~帝国の金の採掘量が減ったのが原因と見るにゃ~おかげで金貨に混ぜものが多くなり価値がどんどん下がっているにゃ~これは由々しき問題にゃ~」
アリババの語る内容は事実であり、その価値の低下に市場は振り回され続けている。
「この問題を解決する手段として他国からの金の輸入を検討することを求めるにゃ~推薦する国はそこにあるとおり――死の砂漠に新しく建国されたバラムドーラ王国にゃ~」
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