第116話 砂漠を舐めては危険
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「正直言って帝国は砂漠を舐めすぎていた――」
小隊長は思わず愚痴をこぼした。
一体何故このようなことになったのか――
皇帝の娘であるモルジアが、追放された皇子に捕まっている。彼の耳に届いたのはそのような話であった。
どうやら皇子は砂漠で国造りまで行っているらしく、モルジアを捕まえたことで帝国の名称を勝手に語り妹のモルジアですら政治的に利用するつもりらしい。
そのような真似は決して許されず、その為、速やかに姫であるモルジアを救い出し、追放された皇子の邪悪な野望を打ち砕くことこそが帝国の名を穢させない為にも必須。
そのためにも、まずはお前たちが動き状況を確認してこい――それが小隊長に任命された彼への命であった。
命じたのは今回の姫救出のミッションにおいて陣頭指揮を取るワズイル将軍だ。
そして総数二十名の小隊を動かし、砂漠へと足を踏み入れた――だが砂漠に現れる魔物は想定以上に手強く、砂漠の環境は最悪だった。
あっという間に一人減り、二人減り――ホルスという追放された皇子とさらわれた姫を調査するという任務どころの話では既にない。
そもそも居場所を突き止めることすら困難であり、作戦実行は不可能と誰もが口にしないまでも思い始めていた。
だが、引き返すことなど既に出来ない。これは物理的にと言う意味でもあった。一面砂砂砂といった様相の砂漠では油断するとすぐに方角がわからなくなる。
こういったことがないよう帝国から支給された魔法の羅針盤を持ってきていた。大気中の魔素に反応して方位を示すのがこの羅針盤だ。
しかし、砂漠の魔素は乱れやすく羅針盤の方位も安定しない。
帝国は死の砂漠に対してあまりに無知であった。これが大陸南のエルドラド共和国であったなら、砂漠の魔素に対応した羅針盤を用意していたことだろう。
だが帝国は砂漠に関してはこれまでそこまで本腰はいれてこなかった。エルドラド共和国との間に結ばれた砂漠外側の交易路も基本はエルドラド任せであった。
まして、自分たちが追放したとは言え、現在ホルスは死の砂漠のほぼ中心付近に居を構えており西の帝国からはかなりの距離がある。
死の砂漠は本来は魔境とも称される程の危険地帯だ。そこへ大した準備もせず向かうなど自殺行為に等しい。
「こんなの調査どころじゃないだろう……」
つい先程、砂に潜んでいた砂蜘蛛に仲間を大量に喰われ、小隊長もすっかり怯えきっていた。気配を消す術に優れる凶悪な魔物だった。
更に空中からは金色の羽を持つ黄金のファルコンがやってきてリング状の光線を放って攻撃してきたりした。この強襲でもまた仲間が死んだ。
結局自分以外の仲間は全て死に絶え、残された小隊長も全身ぼろぼろになりながら砂漠に倒れた――死をも覚悟したがそんな彼を見つけた一人の少女がいた。そして彼は少女に助けられることになったわけだが――
◇◆◇
一方で先遣隊からの知らせがまるでないことに、将軍のワズイルは苛立ちを覚えていた。
あれから随分と経つが、誰一人彼のもとに戻って来ていない。
「砂漠で何かあったのではありませんか? そもそもあそこは死の砂漠とさえ称される魔境ですし……」
「むぅ……」
部下からの話を聞き、ワズイルも腕を組み唸り声をあげた。それなりの準備はさせたし、調査に十分の数を与えたつもりだったが、それでも足りなかったということか、と頭を悩ます。
ワズイル将軍としては無能な砂属性の皇子が生き残り国を造ろうとしているぐらいであれば、死の砂漠など噂ほど大したことはないのだろうと完全に高をくくっていた。
だが、先遣隊が全滅したとなれば少しは警戒しないといけない。そこでワズイルは陛下から聞いていた男を頼ることにした。
「ご用命に預かり光栄至極でございます閣下」
「ふん――」
やってきた男は低姿勢な態度で媚びへつらったような笑みを浮かべていた。トヌーラ商会で元商会長だったヨクゴウの子であるアングルであった。
「死の砂漠についてなら我が商会にお任せを。砂漠超えに必須な砂漠用羅針盤と案内の奴隷をご用意いたしましたのでご活用下さい」
「そうか。ならば遠慮なく使わせて貰うぞ」
アングルの仕事は存外早かった。しかも砂漠で役立つ装備品や道具も色々と取り揃えてくれた。
「よくやってくれたな。貴様の名前は覚えておいてやるぞ」
「ハッ! ありがたき幸せ」
そして上機嫌で帰るアングル。こうして帝国に取り入ることで繋がりを強化し、商会の役員たちにアピールする狙いが彼にはあった。
「これで準備が調った。ふん、仕方ないから今回はこの私が直々に砂漠に出向いてやろうではないか」
こうして二度目の遠征はワズイルが自ら表舞台に立つ事となった。
これは必然的に進軍の規模が拡大することを意味する。ワズイル程の将軍が出る以上、小規模で動くなどは彼の中ではありえない。
結果的に二千人編成の団を動かしワズイル将軍率いる騎士団が再び死の砂漠へと乗り出すこととなった。
打倒ホルスを、そして愛しの妻を取り戻すという大義名分を抱えて――
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