第112話 ロベリアとアングル
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砂漠の王国バラムドーラからエルドラに戻ってきたロベリアは、自室で各種書類とにらめっこしていた。
「失礼致します」
執事の男がやってきて珈琲を運んできた。珈琲豆を材料に作られるこの飲み物はエルドラド共和国の名産品でもある。
「……凄い書類の量ですね」
「あの馬鹿の残した負の遺産よ。全く何を考えていたのか」
前商会長のヨクゴウは商会を完全に私物化していた。奴隷一つとっても法令を無視し自分勝手に利用し乱暴も働いていた。これは商会が取り扱っている商品を商会のトップが自ら傷つけているようなものだ。
そういった不始末が多いため、砂漠から戻ってきたばかりでもロベリアには気の休まる暇がない。
「……それにしても驚きました」
「何が?」
「砂漠であのホルス王に向けて話されたことです。私、まさか過去に人間が亜人に支配されていたことがあったとは知りませんでした」
秘書が感心したようにロベリアを見た。彼も秘書としてそれ相応に勉強をしてきた自負はあるが、それでもそういった歴史に記憶がなかったのである。
「プッ……あはは、嫌だもう。貴方まであんな話信じたわけ?」
だが、ロベリアが見せた反応は何か愉快な者を見たかのような笑いだった。
「え? それってつまり?」
「あんなのその場の思いつきで話しただけよ。口からでまかせのね」
「え~……」
秘書の口から何とも言えない感情のこもった声が漏れた。一方でロベリアは秘書の反応にまんざらでもない様子である。
「その様子だとそれっぽく見えていたようね。安心したわ」
「……御主人様もお人が悪い」
「そもそも亜人に支配されていた歴史が実際あったとしても、それを見つけた人間がそんな資料残しておくわけないわよ。自分たちにとって不利になる物は残さないのが人間よ」
「な、なるほど……」
納得したように顎を引く執事。だが同時に疑問も湧いたようだ。
「ですが、何故そのような話を?」
「ふふ、無自覚な博愛主義ほど鬱陶しいものはないと思わない?」
「えと……」
「ま、気にしなくていいわ。ちょっと意地悪したくなっただけよ。若いから仕方ないのかもだけど、まだまだあの子は甘ちゃんね。だけど、そこも可愛いかもしれないわね。これからが楽しみだわ」
「……きっとロベリア様には私には思いも及ばないような深い考えをお持ちなのでしょうね」
「別にそこまでではないわ。ところで今後の予定は?」
「諸島の国々から会談の要望は色々と来ています。それから――」
執事が予定を読み上げていく。エルドラド共和国は大陸唯一の共和国として知られているが、同時に巨大な港市国家としても知られている。
エルドラ港から更に南には数多の島々が控えており、それぞれに小国が存在している。エルドラド共和国は各諸国と交易を結んでおりそれがエルドラドが商業国として栄えた一つの要因でもあった。
ロベリアはそういった国々とも新たな形での契約を結び、今後の利益につなげようと考えている。
「ロベリアはいるか!」
資料をしげしげと眺めながら考えを巡らすロベリアの部屋に突如荒ぶる声が鳴り響いた。
「ふぅ、アングル兄様。親しき中にも礼儀ありですよ。ノックぐらいして頂けないものかしら?」
「黙れ! この女狐が!」
自らの妹を女狐呼ばわりし、眼鏡を掛けた男がズカズカと室内に入り込んできた。
「貴様、一体どういうつもりだ!」
「いきなりそのようなことを言われても、何かあったのですか?」
「何かではない! あのような名ばかりの役職をおしつけてこの私を放置しおって! 一体いつになったら私に商会長の座を譲るのだ!」
アングルは随分と憤っている様子だった。そんな兄をロベリアは冷ややかな目で見つめる。
「さて? 一体何のことでしょうか?」
「な! き、貴様が言ったのだろう! 私がすぐに商会長の座に着くよりも、一旦は貴様に継がせることで度量の高さをアピールすればより効果的だと!」
アングルが怒鳴り散らす。ロベリアはヨクゴウが砂漠に出た時点で既に動き出し、自らが商会長の座につけるよう根回しを行っていたが、それをすんなりとこの兄が受け入れるわけもなく、後継者は長男の自分こそが相応しいと抗議してきた。
故に今のような話で今後の可能性を示唆しその場は一旦保留という形を取らせ納得させたのである。
「確かにそれに近いことは進言致しましたが、それはあくまで可能性があるという程度に留めたはずですよ。それに役員会議で決まったことでもあります。どうしても異議を唱えたいのであれば役員全員を招集し決議を採られれば宜しいかと」
「ふ、ふざけるな! 私はそのことにも納得してないのだ! いつの間にかこのような規則を決めるとは!」
商会において重大とされる事項には役員総会を行い決議によって取り決める――ロベリアが商会長として就任した際にすぐに発足させた規則の一つであった。
「ですが、これはとても平等な規則ですよ。私がふさわしくないと思えば解任決議を行い採決されればそれで決まります。兄様の方が相応しいと思うのであればどうぞご自由に」
「ぐぬぬぬっ!」
アングルが歯ぎしりする。ロベリアにはそれが無駄であることがよくわかっていた。現在のロベリアの支持率は八割を軽く越えている。
支持しない僅かな層はかつてヨクゴウに取り入ることで甘い蜜を啜ってきたような連中だ。だがそういった連中であっても全員が全員アングルを支持するとは限らない。彼らはあくまでヨクゴウに協力していたに過ぎないからだ。
どちらにしてもこのような状況ではアングルも総会を開くわけには行かない。大差で否決されたとあれば赤っ恥をかくのは自分だからだ。
「貴様のような、腹違いの妾のガキでしかない女狐が偉そうにしやがって……覚えていろ! この借りは必ず返してやるからな!」
「……どうぞお手柔らかに」
そう言い残して部屋を去るアングルを温度の下がった瞳で見送った後、ロベリアは再び自分の仕事に取り掛かった。不敵な笑みを浮かべながら――
何かしでかしそうなアングル……
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