第111話 砂漠で交渉決裂?
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「今、なんと?」
ロベリアに思わず聞き返した。僕としては耳を疑う言葉でもあったからだ。
「ですので、うちの商会の強みの一つが奴隷売買となっております。今後国造りに労働力が必要なこともあるでしょう。また場合によっては抱えきれなくなった者を奴隷として売りたいと思うこともあるかもしれません。下には亜人などもいたようですが、そういった種族は他の商会だと価値を低く見がちです。恥ずかしながら以前の商会長もそのような節がありました。しかし私は改革を進めているところなので、例え他種族であっても能力にあった金額で」
「もう、結構です」
「……結構というと?」
相変わらず笑顔を振りまいてくる。だけど今の話を聞いてはこの笑顔も魔女のような印象を受けてしまう。
「馬脚を現しおったか。王は奴隷の売り買いなどすることはなく、そのような話を聞くのも嫌なのであるぞ。そもそも前のトヌーラは奴隷の扱いにしても問題があった。王はそのような不当な扱いを望まぬ」
フィーが僕の気持ちを代弁するようにロベリアに伝えた。ジャックやラビア、そして他の子たちも奴隷として不当な扱いを受けていた。
それを知っている以上、トヌーラ商会から奴隷の話を聞いておきながら、これ以上ロベリアの話を受け入れるわけにはいかない。
「なるほど。下ではどこか怨嗟のこもった視線を受けていましたが、やはりそういうことでしたか。あの子達は元々はうちで取り扱っていた奴隷ですね? 半巨人にかんしてはすぐにわかりましたが……」
「まさか――」
目に自然と力がこもる。奴隷を返せなどと言ってくるつもりかもしれないと警戒心が湧き上がる。
「そのような目をなさらないで下さい。ご安心を。奴隷の返却など求めるつもりはありません。謝罪に上がったというのにそのような不信を買うような真似は致しませんよ。それに既に首輪もなかった。国が違う以上、首輪もない相手に奴隷の所有権を主張するわけにもいきません」
モルジアやイシスもそこは気にしていたようだけど、とりあえずそれについては問題ないようだ。もっとも例え権利を主張されても受け入れるつもりはなかったけどね。
「そうですか。それではお話はこれで……」
「お待ち下さい。いまので私としてもよくわかりました。奴隷を取り扱うつもりがないというのなら、こちらにも別のアプローチがございます」
「いえ、もうお話は結構です。これ以上の話は不用と僕は考えます」
「……随分と一方的ですね。ですが、今見る限り、この国には建物などの面で不安があります。様子を見るに現状はこの城で皆様一緒に暮らしているのでは?」
「……それが何か?」
「僭越ながら述べさせていただくなら、今後国として周知してもらうつもりならば、早めに王族の暮らす城と平民の住居は分けられるべきです。王の威厳を保つことも国として大事な要素の一つですよ」
それについてはアリババ商会からも助言されたことだね。そういえば建築系はトヌーラ商会の方が強いとは聞いていたけど、でもそれでもやっぱりこれ以上話を続けられない。
「我が商会は建築関係に関しては優れた職人も抱えており自信があります。他にもお酒の類も含めて奴隷売買以外にも自信のある品を抱えております。その辺りも含めてお話をお聞きしては頂けませんか?」
「必要ありません。建築物に関しても既にアリババ商会と話が済んでおりますので」
「……なるほど。今の話を聞いていると王は私どもが奴隷を扱っていることそのものが気に入らないご様子ですね。皆様も一緒の考えでしょうか?」
「妾は王の考えに全面的に賛同するつもであるからのう」
「私も奴隷に関してはホルス王と同じ考えです」
「お兄様は心優しい御方なのです。奴隷の扱いにも心を痛めておりますの。それは私も同じ気持ちですの」
皆が僕に賛同してくれた。トヌーラのやり方は知っているし、奴隷売買そのものをあまり良く思っていないのは確かだ。
「……なるほどそういうことですか――ふふっ、周りを全てイエスマンで固めていれば、それは気分が良いことでしょうね。自分が全て正しいと最高の王様気分が味わえるのですから」
「え?」
「貴様――自分で何を言うておるのかわかっておるのか?」
「ひっ――」
秘書が悲鳴を上げた。フィーの殺気が膨れ上がり、部屋全体が歪んでいるようにさえ思える。
「……少し殺気を抑えて頂けるかしら? 秘書が怖がっておりますので」
「先に喧嘩を売ってきたのはお主であろう?」
「そのようなつもりはありませんでしたが、王も同じお考えでしょうか?」
「……フィー。殺気を抑えて」
「――ふん。王がそう申すなら仕方ないのう」
部屋に立ち込めていたヒリヒリとした殺気が霧散していく。
それにしてもこの人、フィーの殺気の中でも表情一つ崩さなかったよ。今も落ち着いて紅茶を啜っている。
「お兄様を馬鹿にするような発言は私も許せませんの」
「馬鹿にしたつもりはございません。ただ失礼を承知で申し上げるなら王はまだ若く、経験も足りないご様子。故にご自分の感情だけを優先して物事を考えているようにも見受けられます」
「……僕が未熟なのは自分がよくわかっています」
「左様でしたか。それは失礼致しました。ですが、それであればもう少し落ち着いて話を聞いてもらいたいところです。王であれば時には例え価値観の違うあいてであったとしても無視できないことも多々あります」
価値観……今ロベリアが言っているのは奴隷についても含めてのことなのか。
「王は奴隷制度そのものに忌避感を抱いているようです。それに関しては前の商会長……あの馬鹿が私情に走り奴隷を不当に扱ったことが原因としてあるのでしょう」
「へ? ば、馬鹿?」
「ふふ。だってそうでしょう? こういってはなんですがあの男はトヌーラ商会そのものを私物化し散々好き勝手やっていました。おかげで私は後処理が大変です。ですからそれについては王に感謝しています。あの男を葬る結果につながったのは貴方様のおかげですから」
す、凄いな。自分の父親にそこまで言えちゃうんだ。
「ですが私は違います。奴隷についてもこれまでのような不当な扱いはしておりません。しっかり商売としてやらせて頂いております。そこはわかって頂きたいところですね。そしてそれが私どもが自信を持って薦める理由でもあります。商談において自らの売りをアピールするのは当然のことなのですから」
つまり、奴隷を扱っていると聞いただけで全てが悪いと思われるのは心外だと、そういうことなのか……
「話はわかったがのう。だがこの国の状態を見れば王が奴隷を好まないことぐらいわかることであろう」
「それはどうでしょう。寧ろ亜人が多いようなので奴隷についても何かしらの考えをお持ちという判断を持ちましたが」
「……その、そういう扱いもあまり好ましく思えないです」
「――なるほど。亜人を蔑視することに忌避感があると。ところで王は何故人が獣人やエルフなどを奴隷化したがるかわかりますか?」
急に、そんな質問を受けてしまったよ。何故かって……
「それは、見た目が違うから、そういう種族を差別的に見てしまうのだと」
「確かにそれも一理あるでしょう。ですがもっと本質的な部分にも目を向けてみるとよいかと思います」
「本質?」
「今でこそ人間の立場は上がっておりますが、古代に目を向けると全く違う側面が浮かび上がってくるのです。かつては亜人が人を奴隷として好き勝手に振る舞っていた時代があったのですよ。その当時の記憶が今でも本能として刷り込まれているのでは? と私は考えております」
え? そんなことが……僕の知識にはなかったことだ。
「ですが、それも昔の事でしょう?」
「そのとおりですが、歴史は繰り返すともいいます。そう言えば今この国は王の計らいによって人以外の種族の方が多いようですね。ならば……気をつけた方がいいかもしれませんね」
「そんな! 皆お兄様には感謝してますの!」
モルジアがムキになって訴えた。僕としても複雑な思いだ。
「あくまで一つの可能性として申し上げたまでです。さて――可能ならもう少しお話がしたかったのですが、今回はこれ以上は難しそうですね。ですので今回のところはこれで御暇させていただきますわ」
「え? 帰られるのですか?」
「ふふ、少しは残念に思って頂けましたか?」
ま、また笑顔を。うぅ、何かこの人の考えがわからなくなった。そこが僕が未熟なところなのだろうか。
「ですがあくまで今回はです。また、いずれ今度はもっとじっくりとお話させて頂きたいものですね。フフッ――」
そして言葉通りロベリアは護衛を引き連れて引き返していった。でも、本当にまた来るつもりなのかな――
トヌーラ商会との今後は……
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