第1話 砂属性だからって追放!?
僕は妾の子としてこの世に生を受けた。母親はどうやら僕が生まれてすぐに死んでしまったらしい。
そんな僕は生まれたときからどうやら魔力は人より高かったらしい。皇帝の五男として生まれた僕だったけど、僕の国ではどれだけの魔法を使いこなせるかが最も重要視される。
だからこそ妾の子どもではあったけど、魔力の高い僕には期待も大きかったのだろう。でも、12歳で判明した僕の適合属性は砂だった。砂属性の魔法が使える、それが僕の力だった。
でも、砂には欠点があった。単一属性、この属性を有するものは、他の属性を一切扱う事ができない。例えば火が適合属性だったなら、風の属性もある程度扱えるみたいに、属性はある程度相性が良いものなら適合属性以外でも扱えるけど、単一属性はそれが出来ない。
ただその代わり単一属性は強力な物が多く、また単一属性を持つこと自体がレアケースともされたりと本来は悪いことばかりではない、筈なんだけど。
でも砂属性は違った。砂属性は砂がない場所では扱えない魔法だからだ。だから一般的には単一属性とは言え砂は不遇属性ともされている。
僕の属性が、それだった。でも、それでも僕は何とか役に立てるよう、屋敷の砂場を利用して一生懸命砂魔法を練習した。
だけど、今、僕は砂漠のど真ん中に佇んでいる。砂には文字が焼き付けられていた。
『そんなに砂が好きならここで一生砂遊びしていろバ~カ!』
僕の上の兄がやったんだなとすぐにわかった。兄の一人が持つ適合属性が火だったからだ。だけどきっとそれだけじゃない。父さんだって正妻の方の后だって僕の追放を許可したのだろう。
砂属性だとわかった時、家族の殆どが侮蔑の表情を浮かべていた。そしてそれから僕がどれだけ練習しようと疎ましそうに見てくるだけだった。
上の兄も、僕みたいのがいるだけで一族の恥とまで口にし、僕を侮蔑していた。だからきっとこれは家族の、つまり皇族の総意なんだ。
そして僕は家から見放され、国から追放され、砂漠に一人取り残されている。
辺り一面砂砂砂だ。砂漠の中心にでも放り出されたのかもしれない。
しかし、熱い――暑いというよりもう熱い。頭上にはギラギラ輝く太陽が僕を嘲笑うように砂漠を照らし続けている。砂も熱を帯びてやたら熱い。
僕は寝る時に着ていた服のままだ。ローブに近い格好ではあるけど、砂漠を歩けるようなものではない。普通なら絶望し、死を覚悟するところだろう。でも、僕の属性は砂だ。兄さん達は皮肉のつもりだったかもしれないけどこれでも城の砂場で練習を続けてきたんだ。
屋敷では小さな砂場でしか練習できなかったから、兄などにあっさり踏み潰されるような砂の城や砂人形しか作れなかった。
でも、これだけ砂がある砂漠なら話は別だ。砂魔法の力を遺憾なく発揮できる。僕は早速砂を操り、ちょっと厚みのあるローブのようにして纏った。太陽の熱は砂が吸収してくれた。
さて、何はともあれ生きていくには水が必要だ。こんな砂だらけの土地だ。砂漠だから当然だけど、このまま何もせずにいたらいくら砂で熱を遮断したとしても持たないよね。
「砂感知――」
意識を集中し砂の一粒一粒に干渉した。砂を波紋が広がるように動かすことで砂が触れたものの情報を掴み取っていく。
地上だけではなく地下に至るまで干渉範囲を広げた。この範囲は平面的なら十数キロ先まで知ることが出来るけど立体的だと効率は落ちてしまう。
さて、うん? やったよ! 水の反応を見つけたよ! 結構ギリギリかな。歩くには厳しい距離だけど――
「砂座波――」
砂の魔法を行使。この魔法は砂を波のように動かせる魔法で上に乗ることも出来る。つまり砂の波に乗って移動することで歩くより早く目的地につけるわけだ。
速度も結構出て、馬車の何倍も速い。ただあまり速すぎても操作が難しくなるから調整は必要だ。それでも結構なスピードは出てるかな。
さて砂の波にのって目的の場所に来た。一見すると周りと変わらない砂だらけの地形だったけど砂感知で探ると地下に水脈があることがわかった。
「渦砂――」
魔法を行使。この魔法によって砂が渦を巻くように動かせる。今回は地下に向かって進むように調整した。これによって砂を簡単に掘ることが出来る。
「あ、湧いてきた!」
やった。感知したとおり、掘った箇所から水が湧き出てきたよ。そしてあっという間に大きな水たまりが出来た。うん、ここまで来たらもう湖だね。
砂漠にある水場はオアシスと呼ぶらしいけど今ここに文字通り即席のオアシスが出来た。
これでとりあえず水の心配はないかな。後はそうだな、ここを拠点にするなら住むところが欲しいところ。
そうなるとやっぱりあれかな――うん。
「砂魔法――砂城!」
僕が魔法を行使すると砂が盛り上がりその形を変化させていった。壁ができて内部に建物、そう、砂の城が出来上がったんだ。
「うん。強度も問題なさそうだね」
城や壁をトントンっと叩いてみて確認する。これなら十分住めるね。
さて、これで水と住処は確保できたよ。後は食べ物かな……とりあえずそれがないとね。水だけじゃ限界があるし。
砂感知で周囲の状況を確認する。おっと近くに生命反応があるね。
僕は砂を波にして移動した。耳と尾の長い生物がいたよ。中型犬サイズで色は砂色だ。
近づくとすぐに反応を示す。気配に敏感なのかもしれない。見た目は可愛いけど、だからといって見逃すわけにもいかない。
食べ物の確保は砂漠で生き残るには必須だ。
「ギュギュッ!」
獲物が逃げ出そうとする。僕は急いで魔法を行使した。
「砂魔法・砂槍!」
砂が形を変え、槍となって飛んでいき獲物を貫いていった。
「ごめんね。生きていくためには仕方ないんだ――砂箱!」
祈りを捧げ狩った獲物を魔法で作成した砂の箱に詰めていく。その時、こっちに何かが近づいてくるのを感知した。
「ガオォォオオォオオオオ!」
飛びかかってきたのはライオンに似た生物だった。急いで砂を移動させ回避する。
爪を振り下ろすと地面が大きく抉れた。この威力――ただの動物ではないな。魔物や魔獣の類かもね。
爪は魔力で強化していると見ていいかも知れない。
「砂槍!」
魔法で下がりながら砂で槍を八本作成し発射する。だけど、相手の動きは早い。しかも槍を避けながら距離を詰めてくる。
「だったら砂魔法――渦砂!」
渦を描くように砂が移動を始め相手が足を取られた。これで足はある程度封じた。後は――
「砂魔法・砂巨烈拳!」
砂で巨大な拳を作りぶん殴る。猛獣は吹っ飛び砂でバウンドした後ゴロゴロと転がり、動かなくなった。
どうやら無事倒せたようだね――
ここから砂漠を開拓し巨大国家へと発展させていきます!
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