~第1話~
「えっと、君は、どこの誰でいらっしゃいます?」
「わかんない?ほら、当ててみて!」
「ふむ……」
そういわれて目の前にいた美少女をまじまじと見る、身長は俺より少し低いくらいだから168センチってところか、細身でしかし出るところは出ている、顔は俺の通っていた高校の誰よりかわいく、綺麗な白い髪だった。服は、なんだその服って感じの服装。そして何より驚いたのは、2点。耳と尻尾だ。まずは耳、柴犬のような三角形の耳がちょこんと二つくっついている。そして大きく立派な尻尾がゆらゆらと揺れている。
「なあ、ちょっと耳と尻尾触ってもいいか?」
「ふぇ?もちろんいいけど、やさしく触ってよ……?」
もちろん俺ほどの紳士ともなると初対面の女の子を急に触ったりしないものだ。ちゃんと許可を取って正々堂々触る。べ、別に変な意味じゃないんだからね!なんて心の中で言い訳しつつ、しっかり許可もいただいたので少女の耳と尻尾に触れる。おい……マジか……。耳も尻尾もちゃんと熱をもってくっついている。ぶっちゃけドンキかなんかで買ったコスプレグッズかと思ったがこれはまさか……サワサワサワサワ。
「ひゃぅ!く、くすぐったいよぉ」
「お、おい!変な声出すなよ!」
「へ、変な触り方するからでしょ!」
びっくりしたー!ドキドキしちゃうじゃん!前の世界では女の子と縁なんてなかったけどこの世界の女の子は俺の容姿に寛容らしい、神様感謝します!!!
しかしこの反応でやはりこの耳と尻尾が作り物ではないことは確実になった。ということはつまり……
「君はいわゆる、亜人ってやつ、なの?」
「どうなんだろ、私ってそのあじんってやつなのかな?どう思う?」
「いや、俺が聞いてるんだけど……」
「というか、諒介!早く当ててよわたしのなーまーえー!」
「君の名前なんか知ってるわけないだろ、今初めて会ったのに……って、あれ、諒介ってなんで俺の名前知ってるんだ……?」
そういって少女をもう一度見返す。するとなにやら首から妙なものをぶら下げている。なんだ、あれ、リードか?というか何でリードなんて、はっっ、あのリード!もしや……
「俺がソラの2歳の誕生日に買ったリードじゃねえか!」
「当ったりー♪さすが諒介だね」
ということは、もしかして、まさか……
「お前、ソラ、なのか?」
「うん!ようやくお話しできたね、諒介!」
☆ ☆ ☆
お互い聞きたいことや話したいことは歩きながら話して、とりあえずこの森から抜け出そう、ということで二人の意見は一致した。太陽の位置的に日が暮れるまであと3,4時間といったところだろう。その間に森を抜け開けたところに出るのが理想だ。
「そういえばソラ何で日本語わかるんだ?」
「あ、それはね!諒介と生活してるときにいろんな日本語聞いてたから、前は話したくても話せなかったけど、亜人?になった今はこのとーり!」
「ということはつまり、俺が話してたことを理解してたってことだよな……?」
「う、うん、だからね?その、いっぱい好きって言ってくれてうれしーー」
「や!あれはね!うん、ほら、ペットとして好きっていう……」
「むーーーーーーー」
「ソ、ソラさん……?」
「ふん!諒介のばーか」
「お、おい、まてって、ソラー!」
ソラを見失わないようにしつつ、俺は今の状況を分析しながら進む。
まずこの世界にはゲーム的要素、スキルや必殺技、レベルアップの概念が有るか無いかだが、これはおそらく、というか100%有る。ついさっき試したのだが、自身のステータスを見たいとイメージすると目の前にステータスバーが表示される。ちなみに俺のステータスはざっとこんなかんじ。
天職/未設定
レベル/1
物理攻撃力/15
特殊攻撃力/15
物理防御力/15
特殊防御力/15
魔法力/100
スキル/未設定
使い魔/ソラ
なるほど、この世界ではソラは俺の使い魔ってことになってるのか……というかなんか、ね、別に期待してたわけじゃないんだよ?けど、こうあまりにも平均的そうなステータスでびっくりしたっていうか、へっ、泣きたい。というかなんだよ、天職/未設定って、あんまりだよ!ほんとは勇者とかがよかったよ!ぶっちゃけステータスもチート級の強さがよかったさちくしょう!!そしてそんな俺をさらに凹ませたのはソラのステータスを見た時だった。
天職/剣士
レベル/1
物理攻撃力/42
特殊攻撃力/10
物理防御力/20
特殊防御力/20
魔法力/150
スキル/忠誠
・自身が使い魔設定されている場合、抜刀時物理攻撃力1.2倍。
俺との差よ、もう主従逆転してるまである、実は俺が使い魔なのかもしれない。とはいえ当のソラは、
「諒介が主人に決まってるじゃん、諒介が私を守ってくれたように、今度は私が諒介を守るから」
って。ソラさんかっけー、惚れてしまいそうだ……。にしてもなんか変な感覚だ。大切な家族の一員だった1匹の犬が今は女性の姿で人の言葉を話している。しかもめちゃめちゃかわいい。この気持ちが何なのか、今の俺にはまだわからない。いつかわかる時が来るのだろうか……。
とはいえ俺もこのまま無職でいるわけにはいかないし、せっかくのソラのスキルも剣がなければ宝の持ち腐れだ。できれば村かなんかがあれば……なんて思っていると
「見て諒介、もうすぐ森を抜けるよ!」
「結構歩いたな……日が暮れる前に抜けれてよかった」
「そういえば何で日が暮れる前に森を抜けたかったの?」
「これはゲームの知識だけど、だいたいこういう異世界って夜になると強いモンスターが出現しやすくなりがちなんだ」
「げーむって、あ、私のお散歩忘れるくらい集中してたやつだ!!」
「その節は大変申し訳ありませんでした!」
「むー、許す、これからもっといっぱい一緒にお散歩してね?」
「お、おう、もちろんだ」
そんなかわいい顔で見つめられたら照れるじゃねえか……。
なんてことを考えつつ、森を抜けるとそこには村、じゃなく巨大な壁があった。
続く