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雑に始めます。今回はグダり防止のためにプロット作りますが深くは考えません。
「フーガがやられたようだな」
「ふっ、四天王の面汚しめ」
「奴は四天王の中でも最弱」
「フジコ! フジコ!」
決死の覚悟で魔王城に突入したところに現れた、なんとも痛々し……香ばしいポーズを決める三人と一匹……もとい、一人と三匹を見て、勇者一行は唖然とした。
残りの四天王と思われる三体の内、二匹の方は驚くべくもない。テルミ王国より提供された調査書にあった魔王軍四天王が一角、焔爪のフレイと氷鱗のアイシアだろう。それぞれ、炎を纏う巨大な獅子と、鎧のような氷で全身を覆った巨大な鰐の姿をしている。
問題は残る一人の方だ。肩に見知らぬインコを止まらせた、見知ったこいつが何故ここにいるのか?
その男は、名を三日霧区道といった。この世界に召喚されて間もなく、訓練中に突然消息を絶ったために何らかの事故に巻き込まれて死亡したと思われていた男である。
※※※※※※
事の発端はちょうど一年ほど前まで遡る。順風満帆な高校生ライフを送っていた後の勇者、御供人巳とそのクラスメイト一同は、突如現れた魔方陣によってこの世界に飛ばされた。よくある異世界転移というやつだ(いやよくあって堪るか!)。
飛ばされた先はよくある王宮のよくある大広間のような場所で、よくある王様お姫様からの「魔王の危機に晒されているこの世界をお救い下さい勇者様!」という嘆願を受けて魔王軍に対抗する力をつけるべく訓練に臨むこととなった。
命を落とす者もいた(と思われた)ほど厳しい訓練を経て実力をつけた勇者達は、つい二月ほど前に魔王の座す城へ向けて進軍を開始した。
当然、その道中も険しいものだった。RPGよろしく旅の始めに出会す敵が弱いなどという都合のいい設定はなく、出発を待っていたかのように四天王が一角、翠翼のフーガが現れた。しかも、谷底を移動中の勇者一行に上空から奇襲をかける形で、である。
満身創痍になりながらもこれに辛勝し、その後も斯々然々紆余曲折を経て魔王城まで辿り着き今に至るわけだが――。
「――そこには、死んだと思われていたかつての仲間が敵として立ちはだかっていたのであった」
「ドウスルゴクー!」
「いや独りで勝手に何を語ってるの!?」
パニック状態の勇者達は気付かないが、区道の語る勇者一行の動向全てが正確である。どうやら全て筒抜けだったようだ。
「つーかおせーよお前等。俺はもう三ヶ月も前に元の世界に戻る手筈を整えてたってのに。あーあ、返せよ俺の引き籠り生活!」
「ナエポヨー!」
「え? あ、うん。え?」
やれやれ、と肩を竦める区道。それに同調するインコ。未だ事情が呑み込めない人巳達。
「うっし、帰るぞ」
「いや説明して!? 詰め込まれすぎた事情が食道を逆流してるよこっちは!」
「反芻しろと?」
「噛み砕いてよ! 与えられた情報が大雑把過ぎて何一つ呑み込めないんだよ!」
前途多難である。尤も、区道曰く「既に帰還の準備は整っている」そうだが。
「さて、果たして勇者達は『三日霧区道の《サルにも分かる》異世界RTA講座』を理解することができるのだろうか」
「オレタチノタタカイハコレカラダ!」
「モノローグ風にディスってないでさっさと説明して!」
やはり、前途多難である。
「『元の世界に戻る鍵は魔王が握っている』ってクソジジイが言ってただろ? だから魔王にそれを訊きに来たんだよ。友好的にな」
魔王城の一室。召喚された人間の国、ディモルドヴィア王国の王城に於ける大広間を薄暗くしたような様相の部屋で、勇者一行と四天王達は同じ長机を囲んでいた。大広間サイズのテーブルの上には様々な料理――人間が食すようなサラダやステーキ、パン等もあれば生肉や捌かれていない生魚もある――が乗せられており、給仕の魔族によってひとりひとりの器に取り分けられた。
フレイは生肉を、アイシアは生魚をバクバクと頬張り、区道はグラタンに似た料理を匙に乗せて冷ましている。その横では「フジコ」という名であるらしいインコが豆を啄んでおり、傍目からは至って平和な食事風景に見えた。
「どうした? 食わないのか?」
区道が勇者一行にそう声をかけた。勇者一行の誰一人として、給仕された料理に手を着けている者はいなかった。
「食えるわけがないだろう! 毒でも入っているんじゃないのか!?」
「毒ぅ? ははは!」
「ペロ……コレハセイサンカリ! グハッ!」
フジコが倒れ込む演技をしてみせる。実に器用なインコである。
「あのなあ、こっちにはお前等の動向なんか全部筒抜けだったんだよ。その気になればフーガとの闘いで満身創痍のお前等を叩き潰すのなんて容易だったわけ。それをしなかった俺達が今更お前等に毒なんか盛る意味あるか? というか、どうせ一人くらいは解毒の魔法とか会得してるんだろ?」
「はったりだ! 魔法やスキルを駆使して痕跡を消してきたんだ! 俺達の動向がお前等なんかにわかるわけがない!」
「そうだ! こっちには勇者だけじゃない! その道のプロであるアサシンや魔術師がいるんだからな!」
会話に割って入ってきたのは三日締亮という男である。元の世界では俗に言うヤンキー。この世界に来て授かったジョブは拳闘士だったか。男子三日会わざれば刮目して見よとは言うものの、彼は区道の最後の記憶にある姿と変わらずただ五月蠅いだけの男である。
そんな亮に対し、区道は実に楽しそうに対応し始める。
「なるほど、つまり俺の言うことは全て嘘と言いたいわけだな?」
「当然だ!」
「では、俺が何を言っても関係ないな?」
「当たり前だ!」
「ところで、ここにこんなものが……」
区道が亮に一枚の紙を手渡す。怪訝な顔をしながらそれを見た亮の顔から血の気か引く。そして、次の瞬間にはその紙を破り捨てた。
「亮! どうしたっ!」
「な、なんでもねえ」
「そうそう、なんでもない。そこにあったことは俺の嘘でしかないらしいからな。ただ、我ながらかなりの力作でなあ。どうせなら皆に見せたいと思っているんだが……」
「やめろおおおおおおおお!」
「あん?」
「いや、やめて……」
「……(これから屠殺される豚を見るような目)」
「やめてくださいなんでもしますから」
直立姿勢からの流れるような動作10点、フォルム10点、誠意10点の完璧な土下座を見た。フジコが「アホー! アホー!」と夕暮れの侘しさを演出している。区道がニヤニヤ笑っている。その他全員がドン引きしている。
「要するに、俺達はこれくらいお前等の動向を把握していたわけだ」
「なにがなんだかわからない!」
混乱する人巳に、区道が一枚の紙を差し出す。勇者一行は人巳の後ろに回ってそれを覗き込む。そこに記されていたのは、写真と見紛うばかりの繊細な絵であった。
「なに……これ……?」
女子全員の目がこっそり逃げ出そうとしている亮に向く。亮は「ひっ!」と短い悲鳴を上げて全力疾走するが、すぐに身体が硬直して動けなくなる。誰かが麻痺か硬直を付与する魔法を使ったのだろう。
区道が渡した紙に描かれていたのは、水浴びする女子を物陰から覗く亮の姿だった。
「ま、待て! 所詮絵じゃないか! 全部あいつのでっち上げだ!」
「ねえねえ、ここ、あの森の中だよね?」
「うん、久しぶりの水浴びだったからよく覚えてる。泉で水浴びしたのはあの1回だけだしね」
「そういえば……あの後パンツが柄もわからないくらい汚れていたのよねえ」
「嘘吐け! 多少汚れててもくまちゃんプリントは健在だっただろうが! ……あ」
「なんで私のパンツの柄を知っているのかしら?」
「こ、これがメンタリズム……」
「死ね」
「いやあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
※※※※※※
「と、いうわけで、諸君の動向はこちらに筒抜け。我々は諸君に毒を盛ろうと思えばとっくに盛れていたわけ。その上、そっちが解毒の術を持っていることまで予想がついてる。で、他に文句のある奴は?」
「「「ございません!」」」
この後、料理は皆で美味しく頂きました。
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