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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
89/147

「それよりも、今は一人でも数を減らそう」

「半蔵さん、まだ倒せてなかったんだ。時間かかりすぎっしょ?」


 壁に穴を空けて現れた男の人は、悠長にそう言っていた。

 ボーガンを持ち、目元が見えにくい大きな帽子を被り、着ている装備もやたらブカブカの格好だ。

 間違いない。シルヴィア達が事前に調べた情報に載っていた。この人も地下ダンジョン攻略部隊の中でも上位の実力者で、名前は『シュウト』。クラスは『狩人』。

 そして、そのレベルは1086。

 ほんと嫌になる。こんなに簡単に1000レベル超えがポンポン出てくるなんて、ほんと化け物クランだ。


「にんにん。シュウトか。想像以上に奇抜な動きを見せる相手だ。こちらのペースを乱す者こそ慎重になるべし!」


 背後から忍者が近付いてきた。

 これで私は前後を塞がれてしまった……


「いやいや考えすぎっしょ。レベル差もあるし、早く倒して次にいかないと」

「急ぐ必要はない。我は我のペースで仕留めるのみ!」

「いやいや急ぐっしょ。うちに喧嘩を売ってきたび~すとふぁんぐってクランがどれだけ人数かもわからないんだから。さっさと次に行かないと!」


 私を挟んで二人が会話をしている。

 生きた心地がしないけど、それなら少しでも時間を稼いでおきたい。


「蜥蜴丸は……私の仲間はどうなったの……?」


 その問いに、狩人は笑みを浮かべながら答えてくれた。


「ああ。もう倒したよ。結構面白い奴だったな~。最後までノリが良くて、戦ってても最後まで飽きなかった」


 私が忍者から逃げている間に蜥蜴丸がやられた……

 まぁ、このレベル差なら仕方がない。いくらなんでもレベルが違い過ぎる。


「という訳だからさ、お嬢ちゃんもやらせてもらうよ! 恨むんなら喧嘩を売った自分を恨んでよね!! 理由なんて知らないけどさ!!」


 狩人が動き出した!


【瑞穂が詠唱を開始した】

【瑞穂のアビリティが発動。高速詠唱+1】


 とにかく詠唱を開始させながら身構える!


【シュウトが特技を使用した。サンダーショット】


 跳び上がってから空中で私にボーガンを向ける。するとセットされている矢が光り出した。

 その矢を撃つと、それはまるでビーム砲のように尾を引いて飛んでくる。私はそれを横に飛び退いで回避した。


【服部半蔵が特技を使用した。雷神の術】


 続けざまに忍者が遠距離攻撃を飛ばしてくる。


【瑞穂が魔法を使用した。オメガブラスト】


 忍者の攻撃に魔法をぶつける。


【瑞穂のアビリティが発動。相殺】


 すると爆発が巻き起こり、周囲の柱や置物がまとめて吹き飛んだ。

 今のうちに一旦距離を空けよう。外よりもこの廃ビルの中にいた方が障害物もあって逃げ回りやすいかも……


【瑞穂が詠唱を開始した】

【瑞穂のアビリティが発動。高速詠唱+1】


 そう思って駆け出した瞬間だった。


【シュウトが特技を使用した。影縫い】


 ギシッと体が軋んで動けなくなる。見ると、私の影にボーガンの矢が刺さっていた。


「しまっ――」


 対処しようと矢に手を伸ばした時にはもう、忍者が煙を突き抜けていた。


【服部半蔵が大技を使用した。秘技、神速鎌鼬かまいたち


 沙南のソニックムーブのような速さで横を通過すると……

 ズババババッ!!

 私の体に斬撃が刻まれた!


「きゃあああっ!」


 グルリと視界が回り、そのまま地面に叩きつけられて動けなくなる。そして私のHPゲージは減っていき、ついには空になった……


【瑞穂の命の欠片が砕け散った】


「ほぉ~。いっちょ前に復活アイテムを持っていたか。そう言えば俺が倒したアイツも持ってたっけ」


 狩人が私にボーガンを向けてくる。

 私は力を込めて、必死に体を起こした。

 ……ほんと、私は何をやっているんだろう。こんな絶対勝てない相手を前にして、それでもなお足掻いている。

 こんな事を必死にやって、意味なんてあるのかって考えたら……やっぱり意味はあるんだって思ってしまう!

 私は成り行きでこのクランに入る形になってしまったけど、それでもここは居心地が良かった。

 ああ、アイドルとしてではなく、素の自分として楽しめるんだなって思える場所だった。

 私はあんまり素直になれないけど、それでも沙南やルリは一緒にパーティーを組んで頼ってくれた。

 私はいつしか、そんなみんなの事が好きになっていて、このクランの役に立ちたいって思うようになっていた。

 そんな時だ。沙南のお父さんが見つかって、クランで戦う事になって、私はモフモフ日和に協力を求めたけど簡単に拒否されて……

 だから私個人の力で沙南を助けようと思ったんだ! 沙南には幸せになってほしいから。

 なんていうか、あいつはいっつも自分の事よりも周りを気にしてさ、優しくて、一緒にいると和むって言うか……

 恥ずかしいから絶対に口には出さないけど、ずっとそばにいたくなるような奴なんだ。だからあいつが本気でこの戦いに勝ちたいって願うなら、私だって本気で挑まなくちゃいけないんだ!!

 私は沙南みたいに強くはないけど、それでも諦めるのは負けてからでいい!!

 動けるうちは、頭も体もフルに動かす!!


「復活したところで状況は変わらぬ。召されよ!」


 忍者と狩人が迫ってくる。


「あんまり調子に乗らないでよねっ!」


【瑞穂が魔法を使用した。サークルボム】


 私の周囲を爆発させる。これによって二人を吹き飛ばした。


「ぬぅ!?」

「ちっ!? ほんと諦め悪いな。なら、これで決めるぜ!」


 狩人が腕を振るうと、空中に無数の光る矢が出現する。

 こ、この技って……


【シュウトが大技を使用した。絶技、アルテミスの無限驟雨むげんしゅうう


 無限ともいえるほどの光の矢に、絶望感が沸き上がる。

 これを防ぐのは、今の私じゃ到底無理だ。せめて相打ちくらいにはしないと。出し惜しみしている場合じゃない!


【瑞穂が詠唱を開始した】

【瑞穂のアビリティが発動。高速詠唱+1】

 

 ……けれど、すぐにその光の矢は雨のように私に降り注いできた。

 だめだ、間に合わない。そう思った時だった。


【ルリがスキルを使用した。タイムストップ】


 私の目の前で矢の雨が完全に停止する。ついでに私の体も全く動かなくなっていた。

 見ると狩人も動けなくなったようで、顔をしかめていた。

 イベント中に一回しか使えない制限スキル!

 ルリが私を助けてくれたんだ!


「ぬうぅぅ、甘いでござるよ!」


【服部半蔵のアビリティが発動。アンチタイムストップ】


 ググッと、忍者が唐突に動き始めた!

 こいつ、アンチスキルをガチャで引き当てていたんだ!

 そのまま忍者が私に向かってきて、小刀を振りかざした。


【ルリがスキルを使用した。ソニックムーブ+5】


 狩人が開けた穴からとんでもない速さで入ってきたルリが、私を抱えて一気に忍者から距離を空けた。

 さらに――


【ルリが詠唱を開始した】

【ルリのアビリティが発動。高速詠唱+5】

【ルリが魔法を使用した。オメガブラスター】


【ルリが詠唱を開始した】

【ルリのアビリティが発動。高速詠唱+5】

【ルリが魔法を使用した。オメガフレイム】


【ルリが詠唱を開始した】

【ルリのアビリティが発動。高速詠唱+5】

【ルリが魔法を使用した。ブレイズウォール】


【ルリが詠唱を開始した】

【ルリのアビリティが発動。高速詠唱+5】

【ルリが魔法を使用した。オメガスラッシャー】


 立て続けに魔法を連発して、動けない狩人に叩きこむ!


【シュウトに3万2110のダメージ】

【シュウトに2万5640のダメージ】

【シュウトに2万8930のダメージ】

【シュウトに4万7290のダメ―ジ】


【シュウトの命の欠片が砕け散った】


「うおおおおっ!? く、くそぉ……」


 時が戻り、全てが動き出した時には狩人のHPは無くなって、膝を付く形となっていた。


【シュウトがアイテムを使用した。回復薬】


「ルリ、ありがとう。でもこんな所で使ってよかったの?」

「むしろこれがベストな使い方だったと思う。瑞穂を助けられた上に相手の復活アイテムを使わせた」


 ルリは私を下してそう言ってくれた。

 正直に言って凄く嬉しい。助けに来てくれて本当に心強かった。


「それよりも、今は一人でも数を減らそう。今ならやれる!」

「わ、わかってるわよ!」


 ルリが何を言いたいかなんてわかっている。

 それに私はすでに詠唱が完了しているんだから!


【ルリが詠唱を開始した】

【ルリのアビリティが発動。高速詠唱+5】


 回復薬の回復量は50%。

 二人なら倒せる!!


【瑞穂が魔法を使用した。ホワイトフレア】

【ルリが魔法を使用した。ホワイトフレア】


 ホワイトフレアは絶対必中魔法。避けられる心配は決してない!

 当然のように、私達の魔法で狩人の体が直接爆発を起こした。


「ぐ……わああああぁぁっ」


 そうしてついに、やっと一人の敵を吹き飛ばすのだった。

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