「やっつけちゃった。てへ♪」
まだちょっと大変てすが、少しずつ執筆を再開していきます。
待っていてくれた方、ありがとうございます!
「いや~ばれちゃったか~あはは~」
私は瓦礫の陰から出て行くことにした。
冷静に考えてみれば不意打ちができなくなっただけで、別に負けが決まる訳じゃないもんね。
「あ~やっぱり、シンギさんの娘さんじゃないッスか。ここにいたんスねぇ」
「う、うん。奇遇だね。元気だった?」
「絶好調ッスよ。ところで、ここでジークって奴と待ち合わせしてたんスけど、娘さん知らないッスか? クラスは剣士なんスけど」
「あ~……ジークさんね。うん、なんかいた……と思うよ?」
「まじッスか!? んで、ジークはどこに行ったんスか!?」
「ん~とね……後ろ姿が隙だらけだったんで……やっつけちゃった。てへ♪」
コツン! と、自分で自分の頭を小突いて誤魔化してみた。
「……」
「……」
そして僅かな沈黙が訪れる。
「えーっ!? あいつ脱落したの!? まじッスか!? うわダッセー!!」
驚き半分。笑い半分、みたいな感じで興奮してる……
「んじゃ、取りあえずシンギさんに連絡するッスね。『娘さんがCエリアにいるッスよ』っと」
「あ~! なんでなんで~!? やめてよぉ!」
「いやいや、二人は対決してるんスから、決着つけないと。シンギさん探してたッスよ?」
むぅ~……それはそうだけどぉ~……。お父さん、絶対物理防御特化にしてくるし。
ここに来る途中で瑞穂ちゃんに狙撃されて死なないかなぁ。
「そんで、シンギさんが来るまでの間は、俺っちが足止めをするッスよ」
そう言って剣を抜くゼノさんを見て、私も慌てて構えを取った。
「た、戦うの!?」
「そりゃあそうッスよ。ウチら地下ダンジョン攻略部隊と対決するって決めたあの日、俺っち達もいたじゃないッスか。俺っちとカズは、シンギさんと一緒に戦うってその時に話してたんスから」
カズさん……?
そういえばあの日、お父さんはお友達を二人連れてたっけ。確か、『パない、パない』って言ってた人だ。
「娘さんだって、ここで俺っちを倒しておいた方が良くないッスか? 俺っちはシンギさんと合流してから複数で娘さんと戦ってもいいんスけどね」
……そうだ。おしゃべりしちゃって気を抜いてたけど、この人はここで倒しておかないとダメなんだ。
この人の頭上に表示されているレベルは1001。もしこのイベントが終わるまでに倒せないと、生き残りボーナスで上限の1000ポイントがいっきに入る事になる。
「……倒すよ。地下ダンジョン攻略部隊のメンバーは全滅させるつもりで攻めないと順位で勝てない!」
「へへっ! 面白くなってきたッスね!」
ゼノさんが大きな剣を私に向けて、腰を落とす。
彼のクラスはソルジャー。短い茶髪が微かに風で揺れながら、楽しそうに口元に笑みを浮かべていた。
ガッチリとした装備で身を固め、それでいて爽やかな口調と声で気軽に話せそうな雰囲気を放つゼノさん。優しいお兄さんタイプなアバターだけど、今は倒すべき敵!
【ゼノがスキルを使用した。鋼鉄化+5】
【ゼノがスキルを使用した。鍛冶研磨+5】
【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】
この人スキルを+5まで高めてる。かなりの課金勢だよ。
それに最初の二つはステータスアップ系だけど、最後の百万障壁ってスキルは見た事が無いからどんな効果なのかわからないよ……
私も使えるスキルを全て発動させて気を引き締める。すると、ついにゼノさんが動いた!
思っていた以上のスピードで急接近して、その大剣を私に振り下ろしてくる。
ソルジャーって確か、平均的な能力のクラスだったはず。けど流石レベル1001。全体的に伸びていくステータスだから、当然AGIもそれなりに高いんだ。
けどね、ナーユちゃんよりも遅い相手の攻撃を喰らうほど、私は鈍くないよ!
私は振り下ろされた大剣をギリギリまで引き付けてから紙一重で避ける。ザックリと地面に大剣が突き刺さったのと同時に、私はその拳を構えた。
【沙南が特技を使用した。咆哮牙】
レベルが1000を超えていようが一年前からプレイしてようが、そんなのは関係ない! だって私は、そのプレイ時間を凌駕するために攻撃力に全振りしているんだから!!
私はゼノさんに渾身の一撃を叩きこむ!
【沙南のアビリティが発動。コンボコネクト+12コンボ】
【沙南のアビリティが発動。カウンター+2】
【沙南のアビリティが発動。HPMaxチャージ】
【沙南のアビリティが発動。状態異常打撲付与】
【沙南のアビリティが発動。プレイヤーキラー】
【沙南のアビリティが発動。アビリティブースト】
【沙南のアビリティが発動。無効貫通】
「がはっ!?」
完璧にみぞおちに入った事で、ゼノさんにノックバックが発生して後方に吹き飛ぶ。
【ゼノのアビリティが発動。オートガード】
【ゼノのアビリティが発動。気合い受け+5】
【ゼノのアビリティが発動。気功防御+5】
しかし地面に足を付け、強引にブレーキをかけて吹き飛ぶ体を止めていた。
さらに、私は自分目を疑う……
【ゼノに0のダメージ】
……え!? ダメージを与えられなかった!? なんで……
「へへへっ! ソルジャーって、なんかかませ犬みたいなイメージあるじゃないッスか。均一的ににステータスが伸びる分、特徴と呼べる特徴がない。事実、盗賊や忍者ほど速くもない。武闘家や剣士みたいに攻撃力も高くない。盾士や魔法剣士みたいな防御力もないッス……。けど、さすがに1000レベルまで育てて色んなスキルを習得すると、どのクラスと戦っても負けないだけの対策が取れるようになるんスよ! 今の俺っちはシンギさんと一緒で、娘さんを倒すためだけの、対武闘家用、物理防御特化仕様っス!!」
得意気な顔で凄むゼノさんに、私はゴクリと息を呑んでしまうのだった。




