「ガチャで良いものを引く方法を思いついたんだ」
「沙南、頑張って!」
私は今、ガチャ屋さんの前にいる。これは地下7階で貰った分のガチャだ。
地下7階から戻ってすぐに、お父さんが見つかったという話でガチャを引くのを忘れていたんだよね。
イベントが始まるのは多分日曜日。今日は木曜日だから、もうあまりガチャチケットを集められる機会は少ないと思う。ここで何かいいものを引いておきたい!
「さっさと引きなさいよ。この後ダンジョンに潜るんでしょ?」
瑞穂ちゃんが急かしてくる。
そう、地下ダンジョン攻略部隊の作戦会議で決まった事は、相手メンバーのステータス等を調べる事。これは烏さんと蜥蜴さんがやってくれている。
次に素材を集めて装備を整える事。これは地下30階まで到達していて色んな素材を集める事ができるナーユちゃんと狐ちゃんが担当する事になった。
そして私達のクランと結託して、共闘してくれるクランを探す事。これはシルヴィアちゃんが担当してくれている。
後は各自レベルを上げてステータスを上げる事。私とルリちゃんはそうやってダンジョンに潜ろうとしていて、瑞穂ちゃんはそれに付き合ってくれていた。
「待って。私ね、ガチャで良いものを引く方法を思いついたんだ」
「え、ガチャって完全に運でしょ!? そんな方法なんてあるの!?」
「ふふふ。この世にはね、フラグというものがあるんだよ。『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』、と言うと、必ずその人は死ぬ。『こんな弱そうな奴に俺が負ける訳ないだろ』って言うと、相手はメチャクチャ強くて絶対に勝てないんだ」
「いや、そんな事ないと思うけど……」
やれやれ、瑞穂ちゃんはわかってないなぁ……
「だからね、私はそのフラグを逆に利用する方法を考えたんだよ。見てて!」
私はいったん間を開けてから、絶望しているような表情を無理やり作った。
「はぁ~、どうせ銀が出るんでしょ? 一回しか引けないのに、都合よく虹が出てくるわけないもんね」
そう、全く期待しないでいると、逆にいい結果になってしまうというフラグ!
『どうせこんな攻撃じゃ倒せるわけないよな』、と期待しないでいると相手はめっちゃ弱くて、あれ~死んでる~!? っていう展開になるほどフラグの力は大きんだよ!
……まぁ、ギャグマンガ特有のフラグな気もするけど、きっと大丈夫!
「はいはい、銀しか出ない銀しか出ない。時間の無駄だからさっさと引いてダンジョンに行こっと」
そうして私はガチャのハンドルを回した。
ガチャガチャ……コロン。
出てきたのは銀色だった……
「……銀ね。フラグはどうしたのよ……」
くっ!? けど私はまだ諦めていない!!
「ほらね? どうせ昇格なんてしないんでしょ? 中身はカウンター? それともブロッキング? ま、期待してないからなんでもいいけど」
ドキドキ、ワクワク。
そうして私は銀色の玉を指で触れる。するとパカッと、何事もなく普通に開封される。
……昇格演出なし……
「わかってたよ! こんなのタダの気休めだって! けどそんな気休めだってゲーム好きには必要なんだよぉ……」
「さ、沙南、落ち着いて!?」
私が両手両膝を付いて嘆くと、ルリちゃんがすかさず励ましてくれた。
「ゲームが好きなんだもん! ガチャ引くの楽しいんだもん! 悪い!? オカルトだろうと試すのは自由でしょ!?」
「沙南、大丈夫だから。私はいつだって沙南を応援してるよっ!」
私達がそんな風に騒ぐけれど、瑞穂ちゃんの反応は素っ気なかった。
「アンタ達ガチャ引く時にいつもこんなに大騒ぎしてんの? いいから早く何を引いたか教えてよ」
こういうのを塩対応っていうんだよね。
私はログを確認してみた。
【沙南は新たなアビリティを習得した。MPMaxチャージ】
え? 何これ、初めてのアビリティじゃない?
「ど、どう? これがフラグの力だよ!」
「いやいや、アンタさっきまで泣きそうだったじゃない。見栄張らなくていいから!」
さぁ~てと、これはどんな能力なのかなぁ~……
MPMaxチャージ:MPが全快の時、攻撃力が2倍。
うん。まぁわかってたよ。名称の通りだよね。そしてこれ、どう使ったらいいのかな? 普通、特技を使ったらMP減るよね? なに? これは通常攻撃の時にしか発動しないアビリティなの?
「いや、きっと何か隠された能力が……」
「MPを節約したり、特技の使用を抑えたい時のアビリティね。まぁ銀だしこんなもんじゃない? さ、早くダンジョンにもぐりましょ」
瑞穂ちゃんはいつでも現実的にツッコんでくれるなぁ。
「余韻も何もあったもんじゃないよ! 全くもう!」
「……いや、そんな事で文句いわれても困るんだけど……」
そんな他愛ない事を話しながら、私達はダンジョンへ向かった。
次に攻略するのは、地下8階。
「さぁ、どんなダンジョンだろうとサクサククリアしていくよ! 私の歩みは止まらないんだから!」
そう意気込んで、ダンジョンへの転送装置を作動させるのだった。
【地下8階】
「わ、私の歩みは……と、止ま、ととと、止まらない……」
「いや、止まってるから! 全然先に進めてないからね!?」
地下8階で最初のフロア。そこで私達は足止めを喰っていた。
それはとてつもなく難解な階層だと言えた。多分、これまでクリアしてきたどの階層よりもハードモードだと思う。
ここをクリアできるプレイヤーは一握りしかいないと言っても過言ではないよ……
そう、この広いフロアのど真ん中には一枚の石板がはめ込まれている台座が設置されていて、私はそれとにらめっこを繰り返してた。
その石板には――
『あなまたの まぼうまけん にひまかり あれま』
マヌケなら読むことができるだろう。
――と書かれている。
「うわああぁぁ~~。全っ然わかんないよぉ……」
答えを入力する解答欄を埋める事ができず、私はその場で頭を抱えるのだった……




