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「一位の座から引きずり下ろすなんて、なんだかワクワクしませんか?」

「沙南!? 待って沙南!」


 私がフィールドエリアから街エリアに入ると、後ろからルリちゃんが追いかけてきた。


「ど、どこに行くの……?」

「どこって、ダンジョンに決まってるよ……」


 私は足を止めないでそう答えた。

 イベントまで少しでもレベルを上げておきたかった。お父さんが、私の全力攻撃でもノーダメージに出来ると言った言葉を信じた訳じゃない。けど、課金装備をいくつも持っている事は間違いない。だから私も、少しでも攻撃力を上げたかった。


「なら、他のみんなにも相談しよ? ね?」

「……これは私とお父さんの問題だもん。みんなには関係ないよ……」

「さ、沙南……?」

「ルリちゃんもみんなと同じように、普通にイベントを楽しんでくれればいいよ。お父さんとの勝負は私一人でなんとかするから。……そう、この手で全員倒せばいいんだ。相手のクランメンバー全員を、やられる前にやれば……」

「沙南、どうしちゃったの……? なんだか怖いよ……」


 ルリちゃんの声は小さく、今にも泣きそうで……

 そんなルリちゃんに分かってもらいたくて、私は足を止めて想いを吐き出した。


「だってお父さんってば、いっつも私の気持ちなんて考えてくれないんだよ!? たまに私のセーブデータに自分のデータを上書きしちゃうし、私がオンラインゲームやってる時に限ってブレーカー落とすし、私があのゲーム欲しいって頼んでも、『こっちのゲームの方が面白そうだった』、とか言って別のゲーム買ってくるし~!!」

「さ、沙南? 少し落ち着いて――」

「――そのくせ私が遊ぼうって言うといつも一緒に遊んでくれて、ゲームの協力モードじゃ私とお父さんが組めば最強だし、私が死にそうな時はいつも助けてくれて凄く頼りになるし……あ~もう! 私はこんなにお父さんのこと大好きなのにぃ!!」


 ジッタンバッタン!

 私は何度も何度も地面を踏みつける。


「沙南が闇堕ちしそうかと思ったけど、そんな事なかった!」

「いやいや堕ちそうだよ! お父さんを連れ帰るためならどんな手段だって使いそうだよ!! 私はオコなんだからねっ!!」

「……オコは怒りの段階で言うと一番下なんだけど……」


 そんな話をしていると、他のみんなが集まってきた。


「沙南ちゃんダンジョンに潜るんですか? その前に作戦会議をしたいので、一度拠点に戻りましょう」


 そうシルヴィアちゃんが言った。


「作戦会議? さっきの勝負の話なら、みんなには関係ないから私一人でやるよ……」


 私がそう答えると、シルヴィアちゃんは大きなため息を吐いた。


「あれだけ目の前で盛大に喧嘩されて、放っておけるわけないじゃないですか。力くらい貸しますよ」

「け、けど……みんなに迷惑かけちゃうし……」


 すると、真っ先に私に歩み寄ったのはナーユちゃんだった。


「沙南さん。迷惑をかけると言うのなら、それは私の方が最初だったはずです。私は初め、沙南さんがチートを使っていると思って強引に戦闘を仕掛けました。あの時のお詫びを済ませたとは思っていません。こんな私で良ければ、一人のプレイヤーとして共に戦います!」


 ナーユちゃんの実力は私が一番よく知っている。こんなにも頼もしい仲間はそうそういないよ。


「姫様、私はあなたの刀です。自由に使ってくれて構いません。それに先ほどの言い合いは、姫様に非があるとは思えませんでした。自分の信じた気持ちを貫いて下さい。私はそれにどこまでもついていきます!」


 狐ちゃんが片膝を付いて、私に頭を下げてくれた。

 それに続くようにして、烏さんと蜥蜴さんも跪いた。


「沙南ちゃん」


 そしてシルヴィアちゃんも、一歩私に歩み寄る。


「みんな沙南ちゃんの味方なんですよ? 確かにこれは壮大な親子喧嘩ですが、私達は迷惑だなんて思っていません。むしろ交ぜてほしいんです。これはもう沙南ちゃんだけの喧嘩じゃなく、クランマスターが買った、私達全員の喧嘩です!」


 み、みんなぁ。こんな良いメンバーに恵まれて、私は凄く嬉しいよ……


「それにこう言うと不謹慎に聞こえてしまいますが、私はこの勝負は面白いと感じています」

「面白いの?」

「はい。だって地下ダンジョン攻略部隊といえば、ここ最近のクランイベントでずっと一位を独占しているクランです。そのクランを一位の座から引きずり下ろすなんて、なんだかワクワクしませんか?」


 それを聞いた私の心がゾクゾクと疼き始めた。

 確かにそうだよ。きっとゲーマーなら誰しも思う。いつまでも居座っている一位を蹴落として、そこに自分が入りたいって!


「私はこのゲームをクリアするためにプレイしている訳じゃありません。楽しむためにプレイしているんです。だからこの勝負、私も交ぜて下さい!」


 シルヴィアちゃんがワクワクする子供みたいな笑みを見せる。

 そしてルリちゃんが、そっと私の手を握ってくれた。


「もちろん私はいつだって沙南の味方!」

「うん……うん! みんなありがとう! なんだか私もワクワクしてきたよっ!!」


 そうして私達は地下ダンジョン攻略部隊を超えるべく、作戦会議を始めるのだった。

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