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「現在地下三階では問題が起こっています」

「へい! 今日はどのガチャを引きますかい?」

「スキル、アビリティガチャで!」


 地下二階のボスからドロップしたガチャチケットをおじさんに渡す。

 今回こそはレアを引きたいよぉ! そうだ、気合を入れて回そう。気持ちが運気に影響するかもしれないしね!


「むううう!! にゅあああああああ!!」


 ガチャのダイヤルを握りしめてから、気合を入れて一気に回す。

 ……気合を入れ過ぎて変な声が出ちゃったよぉ……

 コロン!

 最初は目を瞑って、そ~っと薄目で確認してみる。

 玉は……銀色だった。

 

「残念。ハズレだな」


 ガビーーーーン!!

 あぁ、ガチャでモチベーションが無くなってログイン勢に変わっていく人の気持ちがわかってきたかも……というか、気合を入れたところで当たりを引ける訳なんてない。うん、わかってたよ、あくまでも気分の問題だからね。

 私は自分のガチャ運の無さを痛感しながら銀色の玉に触れた。


【沙南は新たなアビリティを習得した。カウンター】

 カウンター:相手が攻撃モーション中、または仰け反り中はダメージ2倍。


 これは使えるのかな? どうなんだろう。ちょっとよくわからない。

 相手の攻撃モーション中を狙って攻撃できるほど私のAGIは高くないし、ほとんどは一撃で倒すから仰け反りが発生する事もない。

 あれ? どう使っていいのか全くわからないや……

 まぁいいや。どうせ銀でハズレ枠だし。持ってて困る事もないから一応は戦力アップだし!

 ポジティブに考えながら、私はシルヴィアちゃんの所へ行くことにした。

 お店の隙間を抜けて細い路地裏へ入ると、いつもの所でシルヴィアちゃんは壁に背をつけて座り込んでいた。チャット覧を開いて、それを眺めては文字を打っている。


「シルヴィアちゃん」


 私が声をかけると、シルヴィアちゃんはチャット覧を閉じ、私に近付いてきた。


「沙南ちゃん。私と結婚して下さい」


 そして、いきなりプロポーズをされた……


「えっと、ごめんなさい……」


 丁重に断っておいた……


「あうっ! フラれてしまいました!」


 可哀そうだけど、私に結婚はまだ早いよぉ……


「それよりも今大丈夫? お仕事中だった?」

「いえ、暇だったので情報収集も兼ねてフレンドとチャットをしていただけです。情報屋としてここが私の定位置なので」


 こんな路地裏が定位置だなんて、怪しい人みたいだよぉ……


「シルヴィアちゃん、私ね、地下二階をクリアしたよ!」

「まぁ! おめでとうございます。あ、でも、もしかしてこれから地下三階に行くんですか?」

「うん。今日はまだ時間もあるし、探索しようかなって思ってるよ」


 するとシルヴィアちゃんは心配そうな顔をし始めた。


「そうですか……別に行くなとはいいません。けど、現在地下三階では問題が起こっています。十分気を付けた方がいいですよ」

「問題? 何かあったの?」

「はい。今、地下三階では問題児が二人いて、そのユーザーのせいでかなり荒れているそうです。先に言ってしまいますが、地下三階ではプレイヤーバトルが解禁となり、全てのアイテムを集めた人だけが地下四階に進めるようになっています。しかし、そのアイテムを集めてもなお次の階に進まず、延々えんえんと他のプレイヤーからアイテムを奪い続けている人がいるみたいなんです。レベルもかなり高く、必要なアイテムを奪われるのでみんな迷惑しているようですね」


 ふえぇ~。そうなんだ。弱い者いじめするなんて最低だよぉ……


「ですが対策は割と簡単です。相手は『火の紋章』だけを狙ってバトルを仕掛けてくるそうです。だから火の紋章を二つ持って地下四階への通路を進んでください。一度プレイヤーバトルを仕掛けると、同じ相手には五分以上たたないと再バトルできません。一つ奪われたとしても、そのインターバルの間に突破するんです」

「なるほど……それじゃ二人目の問題児っていうのは?」

「かなりマナーの悪いユーザーがうろついているみたいなんです。人が戦っている最中の魔物にトドメをさして経験値を横取りする。人のドロップ品を勝手に持ち去っていく。さらには自分が引きつれている大量の魔物を他のプレイヤーに押し付けて、そのせいで死亡したなんて報告も上がっています」


 あ! そういえば地下二階ですれ違ったあの子……

 私と同じくらいの背丈で、頭を飛び越えて行ったあの子の事を思い出す。

 あの子、何がしたかったんだろう……?


「わかった。教えてくれてありがと、シルヴィアちゃん」

「あん♪ 沙南ちゃんのためならお安い御用ですよ~。なんなら、地下三階の隠しフロアの場所も教えちゃいます」

「あ、それは自分で探すから今はいいや。わからなかったら聞きに来るね」


 そう言って、私は手を振ってその場所を後にする。そうして、再び転送装置を使って地下三階まで下りるのだった。


【地下三階】


 階段を下りると、そこはすでに巨大な空間だった。東京ドームくらいの広さがあるよ!

 右の方を見ると、大きな通路が二つ伸びている。左の方も同じだ。そして正面には真っすぐ伸びる大きな通路。

 近くには台座が設置されており、石板がはめ込まれていた。私はその石板に何が掛かれているかを読んでみる。


『地下四階に進みたくば、四つの紋章を揃えて中央の通路を進め。ただしこのフロアからプレイヤーバトルが解禁される。プレイヤーバトルはバトルエリアに入った者にしか挑めない。自信がなくばバトルエリアを避けて通れ』


 シルヴィアちゃんが言った通りだね。左右の四つの通路から四つの紋章を集めて、中央に持っていけばいいんだ。

 取りあえず私は、左手前の通路を進むことにした。

 それにしても地下三階は雰囲気がガラっと変わっている。地下迷宮のはずなのに、床には苔がこびり付き、雑草が生い茂っていた。

 さらに進むとお花が咲いて、木まで生えている。

 まるでジャングルだよぉ。まぁ、これはゲームだし、同じ石造りの景色ばかりじゃ飽きるから丁度いいかもね。

 周りには他のプレイヤーが魔物と戦ったりしている。それは地下二階と一緒だ。私も魔物と戦って経験値を稼いだりした。ここの魔物も私の通常攻撃一発で死んでくれるので苦戦する事はなかったりする。


 しばらく進むと、地面が薄く赤く光る場所に出た。

 ……恐らくこれが、バトルエリア。ここに入ると持っているアイテムを狙ってプレイヤーバトルを仕掛けられるんだ。

 ヘルプを開いて確認してみると、プレイヤーバトルには二種類あって、その一つがアイテムバトル。相手の持っているアイテムを奪う事ができるプレイヤーバトルだ。

 だけど、奪えるアイテムは攻略に必要なその場限りのアイテムのみなので、別にガチャで出たレアアイテムや装備を奪われる心配はないらしい。

 つまり地下三階のアイテムバトルは、基本的に地下四階へ進むために必要な紋章だけが対象という事になる。まぁ、激レアアイテムを奪われたら苦情が殺到するだろうし、こんなもんだよね。

 もう一つのバトルはプラクティスバトル。プレイヤー同士の練習試合のようなものらしい。

 好きなだけバトルできて勝敗にも記録されない。気軽にバトルが楽しめるモードなんだね。


 私は奪われる紋章を一つももっていないので、構わずにバトルエリアへ侵入した。

 大回りをすればバトルエリアに入らずに先へ進めるようにもなっているようで、エリア内にいるプレイヤーは少なく感じる。

 私は魔物を倒して経験値を稼ぎながら先へ進む。そしてまた一匹、私の前に魔物が立ちはだかる。その魔物と睨み合って、攻撃を仕掛けようとした時だった。


 ――ザシュッ!


 魔物が切り裂かれ、光となって消えていく。私の横を通過した女の子が、一瞬にして魔物を斬り付けていた。

 そしてその子は、地下二階ですれ違った私と背丈が同じくらいの子だった。

 もちろん私に経験値は入らない。この子がシルヴィアちゃんが言っていた問題児なんだ。

 その子は止まる事なく一気に走り去って行く。


「ちょ、ちょっと待って!」


 気になった私は、その子を追いかけるのだった……

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