「なんだかんだ言って助けてくれる瑞穂ちゃんの事が好きだよ」
【地下7階】
ガチャを引いた後、私達は地下7階へとやってきた。というのも、私のお父さん探しはシルヴィアちゃんと烏さんに任せているからだ。
私だって何かを手伝おうとした。けれど二人からは、手がかりを見つけた時に確認だけをしてくれればいいと、そう言われてしまったのだ。
と、いう訳で今の私は、二人が情報を集め終わるまでダンジョンに潜る事しかなかったりする。
「えへへ、久しぶりに沙南と二人きり♪」
ルリちゃんがピトッと寄り添ってきた。
「いや、私もいるんだけど。何? 私って見えてないの?」
瑞穂ちゃんが握り拳を震わせながらそう言った。
「あれ? 瑞穂いたの?」
「いたわよ! ダンジョンに入る前にパーティー登録したでしょ!?」
「そうだっけ? 別に来なくてもよかったのに」
「アンタねぇ……。けどそんなこと言っていいの? ここ地下7階はかなり難易度が高くて二人だけじゃ大変なのよ? 地下4階が冒険者にとって第一の難関なら、地下7階は第二の難関ね。ここで足止めを喰らうプレイヤーは多いわ」
瑞穂ちゃんの表情はまじめだった。その雰囲気から、ここはそれだけ侮れない階層なんだと思わされる。
「こ、ここってそんなに難しいの?」
私は確認も兼ねてそう聞いてみた。
「ええ。沙南が強いのはわかるけど、ここはそういう強さだけじゃ決して乗り切れない。正直言ってもう二人くらいは仲間が欲しいところね」
「そ、そうなんだ……。だから瑞穂ちゃんはついて来てくれたんだね。ありがとう」
「ふん! べ、別にアンタ達のためじゃないし! ただ単に暇だっただけなんだからねっ!」
なんだかちょっと怒ったように、そっぽを向いてしまった……
「でも私、なんだかんだ言って助けてくれる瑞穂ちゃんの事が好きだよ」
「なっ!?」
たちまち耳まで真っ赤になっちゃった。
顔を合せようとしないけど、照れてるのかな? もしかして、ゲームの中でしか見た事がないけどツンデレさんなのかも!?
「落ち着いて瑞穂。沙南は誰にでもこういう事を言う子だから」
「おおお落ち着いてるわよ!!」
ワタワタしながら必死に言い返そうとするところが可愛い!
「むぅ……沙南もなにデレデレしてるの!」
ルリちゃんが私のほっぺを掴んでにゅーんと伸ばしてくる。
痛いけど、ヤキモチ焼いてるルリちゃんも可愛いなぁ。
その時だった。
【魔物の群れがあらわれた】
正面から三匹の魔物がこちらに向かってくる。
「来たわね……。沙南、あの三匹はアンタが一人で倒しちゃって。特技は使わないでね」
「え? う、うん」
私は拳を構えて魔物を迎え撃つ。
「どうして!? 私も沙南と一緒に戦う!」
「ダメよ。私達は魔法を使って後方支援に徹するの」
瑞穂ちゃんの口調が一段と真剣だ。
きっとこれは意地悪とかじゃなくて、そうしないとクリアできないほど過酷なんだ。
私は迫り来る魔物を一匹ずつ順番に倒していく。そしてなんとか無事に戦闘を終えた。
「この階層はね、真っすぐに直進すればボスのフロアへ辿り着けるわ。さ、行きましょ」
私達は歩き出す。
地下7階は、いうなれば巨大なトンネルのような場所だった。幅が十メートルほどの広い通路が、どこまでもどこまでも真っすぐに伸びている。これを直進すれば終わりだなんて、それだけ聞くと凄く簡単そうに思えた。
【魔物の群れがあらわれた】
今度は六匹同時に魔物が突撃してきた。
さすがにこの数を一人で捌くのは大変かも……
【瑞穂が魔法を使用した。フレイムブリッツ】
真っ赤な火球が飛んで行き、直撃すると炎が弾けて周囲の魔物を巻き込んだ!
これで残りは三匹。これならいける!
ドゴッ! バキッ! ズガッ!
さっきと同じように順序良く倒していく。
【魔物の群れがあらわれた】
今度は十匹以上の魔物が突撃してくる。
多い多い!!
「わかった? この階層はこういう所なのよ。前に進めば終わりだけど、その正面から大量の魔物が押し寄せてくる。下手に特技や魔法を使うとリキャストタイムに入って何も出来なくなるから、ここぞという時以外は使っちゃだめよ」
【瑞穂が魔法を使用した。ブレイズウォール】
そう説明をしながら瑞穂ちゃんが援護をしてくる。
魔物の足元から炎の渦が巻き起こり、一気に八匹もの魔物が消滅した。
よぉし、これなら――
【魔物の群れがあらわれた】
ドドドドドドドド!
さらに奥から止めどなく魔物が押し寄せてくる。その数は優に二十を超えていた。
「ちょー!? これどうしたらいいのー!?」
近付いて来る魔物を殴り飛ばしながら、私はその数に圧倒されていた。
「そのまま戦いながら聞いて! いい、ここの魔物は大量に発生するタイミングと、全く湧かなくなるタイミングの二つが交互にくる! 全く湧かなくなるタイミングで魔物を一掃して、その間に前へ進むの!」
そう言われても、もう前方からは波のように魔物が押し寄せてくる。その圧倒的な物量は、普通に恐怖を抱くレベルだった。特に私は二人の前に立っているものだから、背中に流れる冷たい感覚は拭いきれるものではない。
激しく鳴り響く大量の足音が。
地面を通じてここまで伝わる振動が。
もう誰か分からないほど重なり合った魔物の咆哮が。
それら全てがとてつもないほどの迫力を生み、私の体を強張らせた。
【瑞穂が魔法を使用した。ブラストボム】
【ルリが魔法を使用した。シューティングスター】
それでも私の元に辿り着く魔物が数匹だけなのは、後ろの二人が広範囲魔法で援護をしてくれているからだろう。
「いつ!? ねぇいつ魔物が沸かなくなるの!? そろそろ押し切られそうなんだけど!?」
私の元へ辿り着くのがいくら数匹とはいえ、何度殴ってもキリがない。もはや一瞬でも気を抜けば、そのまま押し潰されてしまいそうだった。
【魔物の群れがあらわれた】
さらに絶望的な数の魔物が押し寄せてくる。もはや蟻の這い出る隙もないほどの数に、ここは地獄だったのかな? という錯覚すら覚えた。
「ん~……これが最後だったかな~?」
ピョン! と、瑞穂ちゃんが私の隣まで滑り込んで来た。そして手に持つ杖を前方に掲げる。
【瑞穂が大技を使用した。奥義、魔導砲】
杖が煌々と輝き出し、先端からレーザー光線が発射された!
魔法を使える者が習得できる大技で、そのレーザー光線は魔物の群れを貫通して遠くまで突き進んでいく。
瑞穂ちゃんはそのレーザーを左から右へ、振り抜くようにスイングをした。すると魔物はその光に薙ぎ払われて次々と消し飛んで行く。
まるで車のワイパーを動かして、ガラスの水滴を全て綺麗に払うかのように、瑞穂ちゃんが杖を振るった後には一匹の魔物も残ってはいなかった。
「す、すご~い! 気持ちいいね~!!」
さっきまでは酔ってしまいそうなほど密集していた魔物が、今では綺麗さっぱり一掃されている。
「ここはこうやって進むのがベストなのよ。さ、今のうちに行きましょ」
そうして私達は、また魔物が沸く前にできる限り前に進むのだった。




