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「さぁ、私に力を与えたまえ!」

* * *


「こんばんは~。誰かいますか~?」


 私はログインしてからフィールドエリアに設置した、びーすとふぁんぐの拠点へやってきました。最初の街で偶然ナユっちと会ったので、彼女も一緒です。

 夕暮れ時という事もあり、拠点の中は薄暗くて灯りはついていません。どうやら誰もいないようですね。

 と、そう思った瞬間でした。明かりを付けようと壁際に寄った私の足に何かがぶつかったのです。


「ひょわ~!?」


 後ずさってぶつかったものをよく見ると、膝を抱えてうずくまっている子狐ちゃんでした。

 本気でビックリして声が裏返っちゃいましたよ……


「ど、どうしたんですか!? 何かありました!?」


 私は部屋の灯りをつけましたが、子狐ちゃんはドンヨリと暗い影を漂わせたままです。


「姫様が、私を置いてダンジョンへ行ってしまいました……」


 あ~……。沙南ちゃん今日はログインするのが早かったんですね。ま、タイミングが合わないなんてよくある事です。


「それなら追いかければいいじゃないですか。ついて来るなって言われたんですか?」

「いえ、姫様はそんな事は言いません! 姫様が今攻略しているのは地下7階です。あそこは地下6階と同様に、追いかけても出会える可能性は限りなくゼロですから……」


 なるほど、確か大人数で入ると処理が間に合わなくなる可能性のある階層は、サーバーを分けているんでしたっけ。パーティー登録しないで入ると、同じ階層でも一人きりになったりするんですよねぇ。


「姫様……」


 ションボリと耳を垂らす子狐ちゃんを見て、私は良い事を思いつきました。


「そうだ。なら私のダンジョン攻略を手伝ってくれませんか? 最近全然進めていなくて、地下21階で止まってるんですよね」


 すると子狐ちゃんの耳がピコンと立ち上がりました。


「お任せください! 私がシルヴィア様を最後まで守り通して見せます!」


 元気になってくれて何よりです。


「ナユっちも手伝ってください。どうせ暇でしょう?」

「構いませんけど、シルヴィアさんは沙南さんのお父さんを探さなくていいんですか? 昨日、小烏丸さんと手分けして情報を集めるって言ってましたよね?」


 そう、私は小烏丸さんと手分けして情報を集める事になっています。

 具体的には、先日のイベント上位クランのメンバーで、過去に未練を持っていそうな噂のある人物を探し出す事。

 私は順位が奇数のクランを調べて、小烏丸さんは順位が偶数のクランを調べる事になっています。けれど――


「え? 私、もう大体調べ終わりましたけど?」

「そうなんですか!? さすが情報屋、仕事が早いですね……」


 ふふん。最速のナユっちに『はやい』と言われるのも悪くありません。


「と、いう訳ですから、今から地下21階に行きましょう! いや~ナユっちと子狐ちゃんが護衛だと、何も怖い物がないって感じですね♪」

「ナーユ様はかなり信頼されているのですね。さすがです!」

「私が見た所、ナユっちの実力は沙南ちゃんと互角くらいで、三番目が子狐ちゃんですね」

「ナーユ様はそんなに強いのですか!? なら、戦い方を勉強させてもらいます!」


 そんな会話をしながら、私達はダンジョンへ向かいます。

 後は小烏丸さんと情報を共有して、沙南ちゃんに確認してもらえばお父さんもすぐに見つかるでしょう。それまでは私も階層を進めさせてもらいますよ。


* * *


「ここにガチャチケットが二枚ある。それがどういう事だか、ルリちゃんにはわかる?」


 そう、これは地下5階と6階の分。


「……ガチャが二回引けるという事」

「そう。そして私は、銀を極める事こそがこのゲームを極める事だと気が付いてしまった。つまり、何が出ても堂々としていられるって事だよ!」

「さすが沙南。ある意味ガチャを攻略したようなもの!」


 その通りだよ。あぁ、ガチャで何が出ても喜べるって素晴らしい!

 私はガチャチケットをお店の人に渡してガチャを回した。


「さぁ、私に力を与えたまえ!」

「沙南がノリノリに!?」


 ガチャガチャ……コロン。

 出てきたのは銀色だった。

 ふ、別に構わないよ。むしろ嬉しいくらいだから! 使いこなしてあげようって気になっちゃうから!

 私は銀のボールを開封した!


【沙南は新たなアビリティを習得した。先手必勝+1】


 ……これ、地下2階の隠しフロアにあったやつだよね? うん、覚えてるよ。ある意味初めて手に入れたアビリティだもんね。いやぁ懐かしいなぁ……


「って、さすがに被りは喜べないよっ!」

「堂々としていられるんじゃなかったの!?」


 だってもう持ってるもん! いくらなんでも同じやつは困るよぉ……

 けど仕方ないよね。そりゃあ被るよ。もう何度もガチャを引いてきたし、隠しエリアも回収してきた。被らない方がおかしいもんね……

 もう装備ガチャとかに移った方がいいのかなぁ。けど排出率一覧表を見るとまだまだ手に入れてない能力とか多いんだけどなぁ……


「沙南、まだあと一枚残ってる! 頑張って!」

「う、うん。そうだね!」


 私はもう一枚のガチャチケットを使い、ハンドルに全神経を集中させる!

 何かが頭をよぎったその瞬間に、一気にハンドルを回した!

 ガガガ! コロン。

 出てきたのは銀だった。

 ――ビターン!

 銀が出たとたん、目まいを覚えた私は地面に倒れていた……


「沙南が卒倒したー!?」


 ガチャは悪い文化……

 お父さんとお母さんが喧嘩をしたのはガチャのせい……

 うちの家庭が崩壊したのはガチャのせい……

 ガチャは私から全てを奪っていく……


「沙南が放心しながらブツブツ言ってる!?」


 ブツブツ……

 はっ!? 私は一体何を!? 取りあえず何が出たか確認しなくちゃ……

 私が銀色のボールに触れると、表面が弾けて金色へと変わった。


「昇格演出だ!! 忘れてたよ!!」


【沙南は新たなアビリティを習得した。ドラゴンキラー】

ドラゴンキラー:ドラゴン系の敵に対して攻撃力が2倍になる。


 そうそう。もうそういうのでいいよ。全ての種族にダメージが上がるようにさ、キラー系をコンプリートしてくれるだけでもありがたいよね……


「あ、ところでルリちゃんはガチャ引かないの?」

「私は別にいい。課金して虹以外は+5になってるから、新しい能力が追加するまでは引かない」


 ……あ、うん、そうなんだ。課金できるなんてすごいね……

 だけど――

 私はルリちゃんの肩にそっと手を乗せた。


「ルリちゃんは私のところみたく、家庭を崩壊させちゃダメだからね……」


 私は、ただそれだけを伝えるのだった……

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