「頭に矢が刺さってて、ギャグマンガみたくなってる」
【沙南は新たな称号を手に入れた。ダメージ1億を超えし者】
【沙南は新たな称号を手に入れた。四神を屠る者】
【沙南のレベルが87に上がった】
ダメージ1億を超えし者:1億ダメージを叩きこんだ者に贈られる。ATKが100増加する。
四神を屠る者:四神に大ダメージを与えた者に贈られる。ATKが100増加する。
【沙南は宝箱を開けた。ガチャチケット】
やった。称号もチケットも手に入ったよ!
「姫様、このまま地下6階に進みましょうか?」
「そうだね。まだ時間もあるし、次に行っちゃおうか。でもその前に、狐ちゃんって絶技が使えたよね? ちょっと説明覧を見せてほしいんだけど」
「はぁ、構いませんが」
不思議そうな顔をして、狐ちゃんがコマンドを操作してくれる。
私は狐ちゃんの後ろから頭にアゴを乗っけて覗き込んだ。
縮地の法・鬼神斬:消費200。鬼神の力が宿る渾身の一撃。相手との距離を一瞬で縮める事ができる。攻撃力19倍。
「……ねぇ、この鬼神ってなんなの? ゲームの中で出て来たりするの?」
「えぇ!? 何かと言われても、気にした事はありませんね。ゲーム内でも出て来たりはしませんし……」
「……ふ~ん……」
私は狐ちゃんの頭に乗っかったまま、少しの間考える。
「姫様は何か気になるんですか?」
「沙南は絶技の事をずっと気にしてる。だから使えるタイミングであればすぐ使おうとする」
私の代わりにルリちゃんが答えてくれた。
「瑞穂ちゃんは絶技持ってないの?」
「残念ながらまだ持ってないわ。奥義と秘技なら使えるけど」
「あれ? 秘技って地下25階で習得するんじゃなかったっけ? 瑞穂ちゃんはまだそこまで降りてないよね?」
「稀にイベントの上位報酬で習得できるのよ。けど『絶技』は実装されたばかりで、今のところ習得するには地下30階まで行くか、アンタの言う地下1階のどちらかでしか習得できないわ」
そうなんだ。
実装されたばかりでまだ習得している人があまりいない絶技。隠し要素をこっそりと実装する運営。
う~ん、やっぱりこの絶技ってなんか気になる。まるで一つのクラスに一人ずつ、神様が宿っているような……
「まぁ、考えていても仕方ないじゃない。とっとと先に進みましょ」
瑞穂ちゃんが階段へ向かって歩き出し、私は狐ちゃんに乗っかったまま引きずられるようにして動き出すのだった。
【地下6階】
「ここってどんな階層だったっけ?」
瑞穂ちゃんがそうみんなに問いかける。しかし、他のみんなも記憶に乏しいのか、首を傾げていた。
「見た感じでは普通のダンジョンみたいだけどね」
そう、地下6階は見た目はごく普通のダンジョンだ。
石で作られた床。綺麗な形をした壁が続く、広い通路。
ただ、天井だけは高すぎてよく見えない。周りが仄暗いせいもあり、上は闇に包まれていた。
「いや、ここのダンジョンって各階層ごとに何かしらの特徴があったはずだから、ここもなんかあったはずなのよねぇ……」
考え込む瑞穂ちゃん。するとその横を通り過ぎて、蜥蜴さんが前に出た!
「悩んでいても始まらない。拙者が先頭に立とう」
真面目な表情で、みんなのために先陣を切って前に出てくれる蜥蜴さん。その背中はとても頼もしかった。
「蜥蜴さんありがとう。気を付けてね」
「ふっ、拙者は沙南様を守るための刀。危険など承知の上です。この命を賭けてお守り致す!」
か、かっこいい! 蜥蜴さんが初めてかっこよく見えるよ!
そんな蜥蜴さんが一歩踏み出した時だった。
――カチッ!
何やらスイッチを押したような音が鳴り、蜥蜴さんの足元がパカッと割れた。
――ヒュー……
そしてキリッとした表情のまま、蜥蜴さんは落とし穴の中へ落ちていく……
「あ、思い出したわ。ここ、トラップが多い階層ね」
「えええ~~!? なんか蜥蜴さんボッシュートされたけど!? ダンジョンで落とし穴ってどういう事!? 下の階層に行けたりするの!?」
「ううん。不思議な力でスタート地点に戻されるだけよ。ほら見て」
瑞穂ちゃんが真上を指差す。すると下に落ちたはずの蜥蜴さんが天井の見えない闇から落ちてきた。
――ズシーン!
そして地面にへばり付く。
「これすごろくと一緒だー!! ゴール手前で振り出しに戻されると面倒なやつだー!!」
しかもシルヴィアちゃんみたいな、クラフターが設置する罠みたいだよぉ……
「とにかく先へ進むわよ。今度は私が先頭を歩いてあげるから」
そうして私達は瑞穂ちゃんの後ろをついて行く。
何気に私が蜥蜴さんが落ちた落とし穴を避けて、壁に沿って歩いた時だった。
――ガゴン。
触れた壁が押し込まれ、嫌な音が鳴る。すると前方から放物線を描いて槍が飛んできた。
あわわ、ジャストガードを……いやでも、これってバトル中じゃないから発動しない!?
そんな迷っている私を、烏さんがヒョイと担いで高速移動で回避してくれた。
「あ、ありがとう烏さん」
「主殿を守るのは当然の事です。それよりもお気づきですか? この階層は入った瞬間からバトルモードになっている事を」
そういえば、みんなの頭上にHPゲージが常に表示されていた。
「本当だ。常に戦闘中になっている状態だからAGIが適応されて、忍者の烏さんは素早く動けるんだね」
「左様です。したがって、主殿は自分に負ぶさっているのが最適かと!」
「なるほどね。それじゃあお言葉に甘えようかな」
私は烏さんの背中にしがみ付くと、忍者らしい素早い動きで通路を駆け抜ける。
おぉ~。これは快適だよぉ。烏さん頼もしい!
――カチッ!
何かを踏んだ音がした。すると四方八方から丸太が飛んでくる。
しかし、烏さんは滑らかな動きで飛んでくる丸太を紙一重でかわしていく!
――ゴンッ!
【沙南に2000のダメージ】
でも私にはぶつかっているので意味が無かった……
カチッ!
避けている間にまた何かを踏んだ。
すると上から無数の岩が落ちてきた!
しかし、烏さんは間隙を縫って落ちてくる物を回避する。
――ゴンッ!
【沙南に2000のダメージ】
でも私の頭には岩が直撃している事を烏さんは知らない……
カチッ!
また何かを踏んだ。
サッと壁に身を寄せて、トラップを警戒する烏さん。
しかしその壁から毒ガスが吹き出してきて、みごと私に直撃した。
【沙南は毒に侵された】
「ふぅ、なんとかやり過ごせたか……って主殿!? どうしてそんなにHPが減っているのですか!?」
「……」
うん。烏さんは全部避けてるつもりだろうけど、そのほとんどは私にぶつかってるからね!
取りあえず、アイテムを使って回復させておく。
「やっぱ降ろして。私、自分で歩いた方がダメージ受けないと思う……」
「ああ、申し訳ありません主殿ぉ……」
私は烏さんから、半ば強引に降りた。
「全く、何やってんのよアンタ達。だから私の後ろから来なさいって言ってるのに」
先行した私達に、瑞穂ちゃん達が追いついてきた。
カチッ!
しかし、また何かのスイッチを踏む。するとどこからともなく矢が飛んできた。
「甘いわ!」
【瑞穂がスキルを使用した。魔力暴風】
すると瑞穂ちゃんを中心に風が巻き起こり、飛んできた矢が弾かれる! しかし、弾かれた矢は壁にぶつかり結局戻ってきた!
――プスッ!
そしてその矢はルリちゃんの頭に突き刺さった。
「ぷっ! 頭に矢が刺さってて、ギャグマンガみたくなってる。ぷぷぷ……」
私は思わず吹き出してしまった。
「そういう沙南こそ、頭に岩が乗っかってる。転んだ拍子に頭に物が乗っちゃうドジっ子みたい」
ガーン! わ、私ドジっ子じゃないもん……
「何をバカな言い合いしてるのよ。さっさと進むわよ」
「むっ! そもそも私の頭に矢が刺さったのは瑞穂のせい! わざとやったんじゃないの!?」
「そ、そんな訳ないでしょ。私は悪くないし! アンタがそんなとこにいるのがいけないんでしょ。ふん!」
今度はルリちゃんと瑞穂ちゃんが揉め始めた。
「むぅ~……瑞穂嫌い! もう瑞穂とはダンジョンに入らないから!」
「え、な、何よ……怒ったの? こ、こんな事くらいで怒らないでよ……」
瑞穂ちゃんの顔色がどんどんと青ざめていく。
「瑞穂いっつも偉そうにしてるから嫌い!」
「ご、ごめん。謝るから許してよ。ルリに嫌われたくない……やだ、私のこと嫌わないでよぉ……」
涙目になって懇願する瑞穂ちゃん。
「いつもそれくらい素直なら可愛いのに。瑞穂はちょっとツンツンしすぎ!」
そしてお説教を始めるルリちゃん。
「やっぱり可愛い! スクリーンショット撮っちゃおう~♪」
私は、頭に斜め45度の角度で矢が刺さっているルリちゃんを保存しまくる!
「主殿! 今一度、今一度チャンスを下さい!」
そんな私の足元で土下座をする烏さん。
――カチッ! ヒュー!
そして再び落とし穴に無言で落ちていく蜥蜴さん。
その場はちょっと……いや、かなり混乱している状況だった。
「あ、あわわ……」
そんな中で、狐ちゃんだけが戸惑いワタワタとしているのだった。




