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「地下五階に行ってみない?」

「次は何する? 入るクラン探す?」


 一旦街へ戻った私達は、次に何をするかを検討していた。

 正直、明日開催のイベントに向けて入れてもらえるクランを探したいのもあるけど……


「地下五階に行ってみない? 地下四階のボスが強かったから、地下五階のボスにはまだ行かないけど、そこの隠しフロアのアイテムも回収しておきたいんだ。クランに入れてもらうにしろ、イベントに参加するにしろ、戦力を上げておくに越したことはないでしょ?」

「なるほど。じゃあ早速行こ」

「あ、ちょっと待って!」


 私はコマンド画面を開きながらルリちゃんを止めた。


「知り合いに聞いてみる」


 そう言って、フレンド一覧からシルヴィアちゃんの簡易画面を表示させた。

 表示ではログイン状態になっている。

 隠しフロアは出来るだけ自分で探したいけど、今は色々と時間がない。地下五階はパパっと回収してしまいたかった。

 シルヴィアちゃんはいつも路地裏にいるんだけど、さっき見た時はいなかった。だから私は個人チャットを開いてメッセージを送ってみる。


沙南:シルヴィアちゃん、今お話しできる?


 すると五秒も待たずに返事がきた。


シルヴィア:今はダンジョンに潜ってますけど大丈夫ですよ~。沙南ちゃんからチャットを飛ばしてくれるなんて感激です♪(≧▽≦)


 顔文字は可愛いけど、変なタイミングで使うと改行されてただの記号になっちゃうから私はあまり使ったりしない。


沙南:あのね、地下五階の隠しフロアの場所を教えて欲しいの。なお、払えるだけの報酬は持ち合わせていない模様。ガクガク……


シルヴィア:前に貰った分で十分ですよ( v ^ – °)ぶぃ♪ で、場所なんですけど、入り口から――


 そうして場所を教えてもらった。


沙南:ありがとう。シルヴィアちゃん大好き!


シルヴィア:キャー(/∇\*)。o○♡ 私も愛してますよ~♡


 そうしてチャットを閉じた。


「……なんか、仲良さそうだったね……」


 後ろからチャットを覗き込んでいたルリちゃんが、なんだか不機嫌そうにそう言った。


「えっと、シルヴィアちゃんはこのゲームで初めて出来たお友達なんだ。明るくて頼りになるお姉ちゃんみたいな存在だよ」

「ふーん。そ、じゃあ行こっか」


 急に素っ気なくなったルリちゃんがスタスタと先行する。


「あ、あれ? ルリちゃん、なんか怒ってる……?」

「別に! なんで私が怒らなくちゃいけないの!?」


 あ、あうぅ……けど絶対怒ってるよぉ。頬っぺた膨らんでるし、声のトーンも少し低いし……


「……沙南はずるい。やろうと思えば誰とだって仲良くなれて……」

「え? な、何? どういう事?」

「……なんでもない。地下五階行くんでしょ! 早く行こ!」

「ふえぇ~……待ってよ~」


 なんで怒っているのかよく分からないまま、私達は地下五階へと向かった。


 <地下五階>


 この階層でまず驚くのが、ゴツゴツとした岩石が多い事だ。

 登山道かーい! ってツッコミをいれたくなるような高低差のある岩場を登ったかと思えば、そこから飛び降りながら下る場所もある。

 ゲームの中ではいくら動いても疲れる事は無い。だから、こういう道をヒョイヒョイと自由に進める人にとっては楽しいのかもしれない。

 ……ただ、私もルリちゃんも体が小さいせいで上り下りがキツイよぉ……


「……この辺だっけ?」


 シルヴィアちゃんから教えてもらった場所を、ルリちゃんと二人で手分けして探すこと数分。ようやくその入り口を見つけた。

 ……これは教えてもらって正解だったかも。今までのがすり抜ける壁や、スイッチ操作によるギミックなら、この場所は天然の隠し通路だ。

 高低差のある岩場の陰を利用した、死角となる狭い入り口。似たような場所が多い事もあって、これを見つけるのは至難の業だと思う。


「……なんにもない」


 中に入ると、ルリちゃんの言う通り何もない。強いて言うなら、大きな岩が一つ置いてあるだけだった。

 すると、その岩の頭上に突如としてHPゲージが出現した。


「……何これ? ……魔物?」

「けど動かないね。多分、強力な一撃を入れて割って見ろって事じゃないかな」

「ふ~ん。なら沙南にお任せね」


 よ~し! 全力でいっちゃうよ~!

 私はスキルを使い、全力の通常攻撃を仕掛けてみた。


【沙南の攻撃】


 私の拳がぶつかった瞬間、岩から快音が響く。


【岩のアビリティが発動。オートガード】

【岩のアビリティが発動。物理攻撃耐性強化+5】

【岩のアビリティが発動。鋼の意志+5】

【岩のアビリティが発動。弱ダメージ無効】


【岩に0のダメージ】


 えぇ~!? 何これ!? 鋼の意志って、石と意志をかけてるの!? ってそうじゃない! 岩がアビリティってどういう事なの!? 色々とおかしいよぉ。……まぁゲームだけどさ。


「物理攻撃耐性強化……? これって、攻撃を受けたらその分硬くなるんじゃない? しかも弱ダメージ無効まで発動してる」

「う~ん、つまり、防御力が上がり過ぎてダメージを与えられなくなる前に、一気に決めろっていうクエストみたいだね」


 そうじゃないと、一度この階層から出て、その後でまたここまで来なくちゃいけなくなっちゃう。

 とは言え、すでにそうとう硬そうだよぉ……

 あ、でもアレを使えば……


「もう一回試してみるね。ルリちゃんは少し離れてて!」


 そう言って、私は岩に向かって構えを取った。


【沙南が大技を使用した。奥義、咆哮牙・極】

 咆哮牙・極:消費150。普通の咆哮牙と同じに見えて、相手に密着した状態からさらに圧力をかけ内部を破壊する必殺技。これにより相手の防御力に影響されない。攻撃力10倍。


 私の咆哮牙が岩に直撃する。その刹那、さらにグンを押し込んで内部を圧迫する!


【沙南のアビリティが発動。コンボコネクト+2コンボ】

【沙南のアビリティが発動。HPMaxチャージ】

【岩に34万0704のダメージ】


 まさか初めての奥義をこんな無機物に使うなんて思わなかったよ……

 けどまぁ今の攻撃で岩は真っ二つに割れて、その中心部分に宝箱が埋め込まれていた。私はさっそく宝箱を開けてみた!


【沙南は宝箱を開けた。習得書】

【沙南は新たなスキルを習得した。クリティカルチャージ】

 クリティカルチャージ:消費40。次の攻撃のみ、攻撃力が3倍。


 やった! これでまたダメージが上がるよ。スキルは他のスキルと同時に使っても効果が重なるからね!


「ルリちゃんはどんな能力だった?」

「私は状態異常を回復させるスキルだった。これで沙南が何かの状態異常にかかっても治してあげられる」

「へぇ~。そういえば私、状態異常にかかった事ないよね。あまり使ってこないのかな?」


 するとルリちゃんが呆れたような表情で私を見た。


「いや、敵も結構使ってきてる。地下四階のフェニックスはダメージを受けると『火傷』状態になったよ。前に戦った忍者も色々と使ってきてた。それを沙南が全部アビリティで弾いてるだけ」


 あ、あはは。そうだったんだ。私の場合、ダメージを受けるともう即死だからね。一発ももらえないからなぁ。

 そんな話をしながら外に出た時だった。


「……やっと見つけました。あなたが沙南さんですね!!」


 声のする方を見ると、そこには小柄な女性が私を睨みつけていた……

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