「これより、勝ち抜きトーナメントバトルを開催します!」
【イベント開催のお知らせ】
本日の15:00から、勝ち抜きトーナメントが開催されます。出場希望の皆様はイベントエリアへ移動してください。
この日、ログインをするとそんなお知らせが大々的に表示されていた。
あの地下11階を攻略してから五日後の日曜日。私はイベントを楽しむためにログインをしていた。
今思えば毎日毎日勉強に明け暮れる日々。ルリちゃんが教えてくれるとはいえ、つらく険しい日々だった。だから、今日くらいは思いきり遊ぼうと思っていたんだ。
実は私のレベルは、前回のバトルロイヤルの時から1しか上がっていない。今週はずっと勉強のためにログインは控えていたからだ。
とはいっても、全くログインしなかった訳ではない。勉強の息抜きに、少しだけ入っては神化の修行をやっていた。
キャラのレベルを上げるよりも、神化の理解を深めるのと、自分なりの戦術や戦い方を見つけるほうがいいと思ったからだ。
そんなわけで、私のイベントに対する準備はそれなりに整っていると思う。
テストは明日だけど、今は勉強の事は忘れて思いっきり楽しもう!
「沙南~! イベントエリアはこっち。急ごう!」
ルリちゃんがイベントエリアへの立て札の前で手を振っていた。
「よぅし! 頑張るよぉ!」
私はルリちゃんと一緒にイベントエリアへと進んでいく。画面が切り替わると、そこはまさに闘技場だった。
参加者が戦うフィールドを観客席でグルリと囲まれている形式の闘技場。しかも、この闘技場と同じ建物がたくさん並んでいた。
「なんだかいっぱいあるね?」
「参加プレイヤーが多いから、いくつものブロックに分かれてるっぽい。沙南はどのブロックで戦うか決まったらメールして。応援に行くから!」
なるほどね。……って、あれ?
「ルリちゃんは参加しないの?」
「うん。私はまだ神化できないし、沙南の応援をしていた方が絶対に面白い!」
嘘偽りのない様子で、本気で目を輝かせていた。
「そ、そうなんだ。それじゃあ決まったらすぐにメールするから」
「うん。一つのブロックに64人参加するみたい。つまり、六回勝てば決勝ブロックに進める」
「ほうほう! ……ん? 優勝するんじゃないの?」
「優勝にはまだ早い。この最初のブロックで勝ち上がったプレイヤーで再度トーナメントを組んで、そこで勝った人が本当に優勝できる」
ほへぇ~。なんだか大変そう。
「沙南なら優勝も目指せると思う。頑張って!」
「ありがとう。うん! 頑張ってくるね!」
そうして私はルリちゃんと別れてイベント参加エリアへと向かう。ここで待機していると、ランダムで戦うブロックに分けられて転送されるらしい。
いろんな人がいる。優勝できなくても、報酬目当てでとりあえず参加する人もいるらしい。
そんな人たちを見渡していると、見知った顔を発見した。
「あ、姫様! 間に合いましたね。心配しましたよ」
狐ちゃん、ナーユちゃん、烏さん、蜥蜴さんの四人だった。
「えへへ~、ちょっと遅れちゃった。チコちゃんとシルヴィアちゃんと瑞穂ちゃんは?」
「あのお三人は自信がないらしく、今回は出場しないそうですよ。姫様の応援をするって言っていました」
そう狐ちゃんが教えてくれた。
「そうなんだ。ルリちゃんも応援してるってさ。それにしても、みんなと同じブロックになっちゃったら戦いづらいよねぇ……」
するとナーユちゃんがクスクスと笑いながら教えてくれた。
「参加人数は一万人を軽く超えています。一つのブロックに64人ですから、200ブロック以上に分けられるみたいですよ。私たちが同じブロックになる確率はかなり低いので大丈夫です」
そんなに参加するんだね。すごいよぉ~。
「でも、勝ち進んでいったら、最後の決勝ブロックでは当たるんじゃないかな?」
「最初の予選ブロックで勝ち上がる人が200人だとして、その人数で今度は32人の決勝トーナメントを組まされます。ここで同じブロックになる可能性はありますね」
うぅ~……。みんなのこと大好きだから、イベントだからって戦いたくないよぉ……
「大丈夫ですよ姫様。このイベントは戦績に記録されないはずです。最強の座をかけて、全力で戦いましょう!」
狐ちゃんがそうフォローしてくれた。
「自分たちは、主殿と当たる前に敗退しそうですよ。なぁ蜥蜴丸」
「うむ。拙者たちは報酬狙いだからな。だが、この妖刀がどこまで通じるか試してやろうぞ!」
烏さんと蜥蜴さんも楽しそうだった。
そうだね。今日は私も楽しむために参加したんだもん。全力の腕試しだよ!!
そしてついにイベント開始の時間となった。プレイヤーのみんなは次々と転送されていく。これがブロック分けのランダム抽選なんだね。
私たちの体も光を帯びて、瞬きをしたその一瞬で景色が変わる。周りを見渡してみると、どうやら闘技場の中のバトルフィールドのようだった。
看板には、『第7ブロック』と書かれている。
第7かぁ。縁起のいい数字だよ。さっそくルリちゃんにメールしよ!
『さぁさぁお待たせしました。これより、勝ち抜きトーナメントバトルを開催します!』
NPCなのか運営なのか、よく分からないけどお姉さんの声がマイクで拡大されて流れてきた。
『第7ブロック、一回戦は~……クラン名、び~すとふぁんぐのクランマスター、沙南選手 VS クラン名、お試しクラン部屋のメンバー、ガッツ選手だ~!』
ふえ~!? いきなり一回戦から試合なの!? だからいきなりフィールドに転送されたんだね。
周りを見渡すと観戦するプレイヤーがどんどん増えていき、客席が埋まっていく。
うわぁ、なんだか段々と緊張してきたよっ!
「キャー沙南ちゃーん!!」
「沙南~、頑張って~」
「沙南先輩! ファイトなのです~!!」
声のする方を見ると、すでにルリちゃんとシルヴィアちゃんとチコちゃんが客席の最前列で手を振っていた。
よ~し。いつも通り、自分の戦いを頑張るだけだよっ!
『それでは両選手、フィールドの中央までお進みください!』
言われたとおり、校庭のグラウンドのような場所の真ん中まで進んでいく。そうして私は、対戦相手のプレイヤーと対峙した。
『それでは、沙南選手 VS ガッツ選手、試合ぃぃ始めぇぇ!!』
こうして、私のトーナメント戦が幕をけるのだった。




