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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
102/147

「可能ですよ。そのための奥の手ですから」

「仕様……だと?」


 う~ん。どう説明したらいいのかな。


「はい。え~っとですね。今のジャンプで必要だったのは――」

「――いや、待ってくれ!」


 説明しようとしたらいきなり止められた。


「あなたが仕様だと言うのならそうなのだろう。わかった。後は自分で調べよう。それもまたゲームを楽しむ醍醐味というものだからな」


 彼は本当にこのゲームを楽しんでくれている。運営側としては非常にありがたいんだけど、今は倒すべき敵なのよね……


「それで、あなたはこれからどうするつもりかな?」

「どうするって、決まってるじゃないですか。戦いの続きを始めましょう」

「……本気か? てっきり逃げるという選択肢一択だと思っていたが……」


 私がさっき倒した魔術師と槍士。あの二人は多分、私が逃げようとした時に拘束をしたり、追跡をしたりするためのメンバーだったんだと思う。

 その二人が倒されたから、私が逃げるという選択肢を選ぶと思っているようだけど……


「逃げませんよ。こっちにも都合があって、あなたはここで倒しておきたいんです」


 このイベントは、沙南さんのために戦うと決めたのだから!


「ほう? だがあなたの攻撃力では俺にダメージを与える事はできない。それは先程までの闘いで十分に証明できたと思うのだが?」

「確かにその通りです。ですが、私にはまだ奥の手があるんですよ」


 といっても、まだ未完成なんだけどね。

 それでも勝てる可能性があるならそれに賭ける!


「奥の手、だと!?」

「はい。これです!」


【GMナーユがスキルを使用した。ソニックインパクト】


「ソニックインパクトか。なるほど。確かにそれなら俺にダメージを与える事ができる。という事は、あなたは前回のイベントの時からクランに加入していたと言うわけか」


 そう。このスキルは前回のイベントで46位に入った時の上位報酬だ。

 攻撃力が低い盗賊が、防御力の高い相手に唯一ダメージを与えられるスキル。


ソニックインパクト:一定時間、自身の攻撃が固定ダメージに変わる。ダメージの値は戦闘スピードによって変化する。


「だが、もちろん俺もそのスキルは知っている。戦闘スピードによってダメージが変わるという事で検証も行った。結果は、どんなにAGIを高めても5000しか出ない。ソニックムーブ中に攻撃を当てるという高難易度の技術を用いても1万が限界だった。それだと俺を倒すのには20回は攻撃を当てないといけない訳だが、果たしてそんな事が可能かな?」

「……」


 私は二本の短剣を構えて身を低くする。


「可能ですよ。そのための奥の手ですから」

「……ほう?」


 彼は目を細めて私を警戒する。


「あ~そうそう。先ほど、私が槍高跳びに追いついたあの技術ですけどね。ハルシオンさんは自分で調べるって言いましたけど、結局は今ここで知る事になりますよ」

「なに? どういう意味だ?」


 焦らず、落ち着いて頭の中で技のイメージをシミュレートする。

 ……大丈夫。決して不可能じゃない。実戦で使いながらでも完成させる!


「今から嫌というほど体験すると言う意味です!」


 そうして蹴り出す足に力を込めた!


「ソニックムーブ……改!!」


 ――ガオン!!


 それは地面を蹴り出す音か、はたまた音速を超えた時に発生する衝撃波ソニックブームか。

 なんにせよ、私がブレーキを踏んで動きを止めた後にその音は聞こえてきた。

 音速を完全に突き抜けた音速。今、私が出せる全力のスピード。

 それが、ソニックムーブ改だ。


「なっ!? ぐはっ!!」


【ハルシオンに1万5000のダメージ】

【ハルシオンに1万5000のダメージ】


「な、なんだ……? 今一体、何が起こった!?」


 さすがのハルシオンさんも、今の動きには反応できずに困惑していた。


「一言で言ってしまえば、私が使ったのはただのソニックムーブです」

「なんだと!? しかし、今のスピードは明らかにソニックムーブを超えていたぞ!」

「そうです。だから私はこの技を、『ソニックムーブ改』と名付けました。そしてこれが槍高跳びに追いついた正体ですよ。普通ソニックムーブはその名の通り、音速で移動できるスキルです。ちょっと前に進んだだけで音速という速さが出るので、扱い難いと誰もが全力で走ろうとしないんです」

「ま、まさか……」


 ハルシオンさんが顔をしかめた。


「そう。ソニックムーブは、『音速+キャラのAGI』の速さが出せるスキルなんです」

「ば、ばかな! うちのクランでも検証をしたが、それに気付く者は誰もいなかったぞ!?」

「まぁ、音速を越えてしまえば結局はただ速いだけっていう感覚になっちゃいますからね。しかも気付けるのは本当にAGIの高い盗賊か忍者くらいでしょう。けど実際にAGIの高いこのクラスでは無理にソニックムーブを極める必要がない。当然私も、これに気が付いたのはつい最近です」


 ハルシオンさんは開いた口が塞がっていなかった。

 まぁ、衝撃的だとは思うけど、ここまで驚いてくれるとこっちも気持ちがいいなぁ……


「盗賊は攻撃力が低い代わりに二刀流で、その手数が多いのが利点です。さぁ、私の体力が尽きるのが先か、あなたの体力が尽きるのが先か、勝負といきましょう!」


ソニックムーブ+5:高速移動が可能。ただし一秒間使用するごとに最大HPの10%をダメージとして受ける。


 再び私は両手の短剣を前に構える。ハルシオンさんもまた、歯を食いしばって武器を構えるのだった。

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