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「もっと練習に付き合ってほしいなって」

「な、なんで……?」


 意味がわからないと言った表情の忍者さんに、私は答える。


「えっとね、一度バトルを仕掛けると、同じ相手には五分間はバトルを挑めないんだよね? だから今度は私から仕掛ければ、効率よくバトルができるんじゃないかなって思ったの」


 小首を傾げる忍者さんに私は続けた。


「忍者さんの動き、とっても速くて凄いなって思ったの。だから私のブロッキングの相手に丁度良くて、もっと練習に付き合ってほしいなって思ったんだ。魔物相手だと動きが単調で、全然練習にならないんだもん。それでね、私から仕掛ける時は赤の紋章を奪えるから、みんなに返せて一石二鳥でしょ?」


 それを聞いて忍者さんの体が震え出した。


「く……くくく……くはーっはっはっは!!」


 そして大ジャンプをして私から大きく距離を取る。


「たまたま偶然ブロッキングが成功した程度でいい気になるなよ! 拙者を練習相手にしたいと? 笑わせてくれる。そのふざけた考えを後悔させてやるでござる! 大体言われた通りに接近戦を挑む訳がなかろうが!」


 そう言った忍者さんの手には手裏剣が出現した。

 再び大きくジャンプをすると、空中から私目がけてその手裏剣を投げて飛ばした。


【乃介が特技を使用した。封魔手裏剣】


 私はそれを、腕にはめている手甲にぶつかる瞬間に防御のイメージを強く持つ。すると、砕ける音と同時に手裏剣が弾け散るようなエフェクトが発生した。


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


「な、なに!? バカな!? ジャストガードまで!?」


 うんうん。このアビリティも練習したかったんだよね。


「沙南! 沙南!」


 少し離れているところでルリちゃんが呼んでいた。


「どうしたの?」

「あの忍者のLVが言った通り132だとして、さっき沙南が与えたダメージからおおよその目算を立ててみた。沙南が『力溜め』のスキルを使えば、特技を使わなくても通常攻撃一発で倒す事ができると思う。これでMPを少しは温存できるはず……」


【乃介が特技を使用した。火遁の術】


「戦闘中におしゃべりとは余裕でござるな。死ねぃ!」


 渦巻く炎が迫って来るが、私は冷静に、正確に、自分の手甲でガードする。


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


「わぁ~! ルリちゃんって頭がいいんだね! ありがとう。試してみるね」


【沙南がスキルを使用した。力溜め】


「ん……勉強は親に嫌ってほどやらされてるから、このくらいなら簡単……」

「へぇ~、私なんて勉強苦手だから、そういうの全然わかんないよぉ……」


【乃介が特技を使用した。乱れ手裏剣】


 複数の手裏剣が飛んでくる。


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


「バカな……まさかDEXと両立させて……? いやしかし、どの道こんな低レベルの相手に拙者が何度も負けるはずないでござるぅ~!!」


 一瞬で私の背後に回り込んだ忍者さんが小刀を振り下ろす。

 もちろん私にはそれが見えていたので、軽く後ろに向かってジャンプをした。

 振り下ろされた小刀と、相対的な角度で飛び上がった私の頭が触れた瞬間、再び稲妻が走るエフェクトが発生する。


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


 ジャストガードは防御の概念があるから手甲に当てなくちゃいけないのに対して、ブロッキングは体のどこに当ててもいいからこっちの方が簡単な感じはする。あくまでも私個人の感想だけどね。

 私は振り向き様に拳を構える。忍者さんはブロッキングの効果で仰け反っていた。


「な、なんなんでござるか!? お主は一体何者でござるか!? こんな、こんな事が――」


 私は構わずに、拳を忍者さんの胸元に叩きこんだ。


【沙南の攻撃】


 どっがーーーーん……!

「くっ!? これならどうでござる!?」


 忍者さんがスライディングを仕掛けてくる。


「下半身でござる! 足元を狙えばブロッキングの難易度は増すはず!!」


 私の足元に滑り込みながら、小刀を振るってきた。

 あ~……悪いけど足ってむしろブロッキングしやすんだよ……

 ボールを蹴るように、私は小刀に向かって足を真っすぐ前に出す。

 バキン!


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


 地面に倒れるようにして忍者さんが動けなくなる。

 私はそんな彼を、踏みつけた。


「ごめんなさい!」


 どっごーーーーーーん!!

「最速でケリをつけるでござる!!」


 バトルが開始した直後に忍者さんが地を蹴った。

 そうして一瞬で私の背後に回り込もうとしているが、さすがに私ももうその動きには慣れていた。

 キュッと片足を軸に体を回し、背後に移動しようとする忍者さんの動きに合わせる。忍者さんは下からの切り上げる攻撃を仕掛けようとしていた。

 この下からの攻撃なら、モグラさんを叩くような感じで……

 私は拳を振り下ろす。

 バキン!!


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


 振り下ろす攻撃で身を屈ませた私は、起き上がる反動を利用して渾身のアッパーを忍者さんのアゴに叩きこむ。


【沙南がスキルを使用した。力溜め】


 バチコーーーーーーーン!!

 拳が当たると忍者さんが空中へ吹っ飛んでいく。

 やった! 今回も私の勝ちだよ!

「もう……もう絶対にこっちからは攻撃しないでござる!」


 忍者さんは逃げながら、私に手裏剣を投げてくる。


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


 逃げても無駄だよ。だってそっちはボスの部屋で行き止まりだからね。


「来るな! 来るなーーーーー!!」


 連続で手裏剣を投げてくる。

 その特技はもう何回もみたもんねっ!


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


 さぁ追いつめたよ。

 私はジリジリと距離を詰めていく。

 忍者さんがそのスピードで無理矢理私の隣を駆け抜けようとした。もちろん私はそれを許すはずもなく、忍者さんの服を掴んで静止させた。

 攻撃力が高いせいか、忍者さんが必死に逃げようとしているけど重くもなんともない。

 ……なんだか捕まえた虫がバタバタ暴れて逃げようとしているような感覚だよぉ。


「つ~かま~えた♪」


 私が攻撃しようと拳を構える。


「ひっ!? うわああああああああああああ!!」


 私が攻撃するよりも早く、忍者さんが小刀で私を突き刺そうとする。私はその軌道をしっかりと見極めながら、体をグンッと前に押し出した。


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


「お、おかしいでござる! ゲームの中とはいえ、刃物でござるよ!? その切っ先に自分の体を突き出すなんてイカれてるでござる!!」


 私は仰け反って動けない忍者さんに拳を構える。


「ゲームだからこそ、勝つために覚悟を決めている人だっているんだよ!」


 そうして私は拳を振るい、再びその場にはけたたましい音が響き渡った……

【沙南は新たな称号を手に入れた。バトルマスター】

バトルマスター:対人戦で十連勝を飾る栄光を手にした。ステータスに300ポイントの振り分けができる。


 わ~い! なんか凄い称号を手に入れたよ!

 それはそれとして、次は忍者さんが私にバトルを挑む番だね。けど、忍者さんはガックリとうな垂れて動かない。ちょっとやり過ぎちゃったかな……


「あの、続きは休憩してからにする?」


 私は忍者さんに気を使ったつもりだった。けれど――


「うぅ……うわあああああ!? もう許してぇーー!!」


 忍者さんが一目散に走り出す。

 私は慌てて追いかけようとした。けど、いつの間にか集まっていた野次馬に突然囲まれてしまっていた。


「すっごーい!! こんなにブロッキングとジャストガードを成功させる人なんて初めて見たわ」

「なあ、俺とフレンド登録しねぇ? あ、いや、ここをクリアしたらぜひクランに入ってくれよ!」

「っていうかさ、初めて見るアバターなんだけど、フェイスパーツ何番使ってんの?」


 周りから色々と話しかけられてどうしていいかわかんない……

 私が困惑していると、ルリちゃんが割り込んできて、手を引いて抜け出させてくれた。


「沙南、さっさと先に進も」

「う、うん、そうだね。あ、でもその前に……」


 ルリちゃんに片腕を引っ張られながら、もう片方の手でコマンドを開く。そうして、忍者さんから奪った火の紋章をトレードで出品した。


「あ、俺が奪われた火の紋章だ! 回復薬とトレード!? 買った!!」

「おい! 俺だって奪われたんだ! 俺が先だよ!!」


 あっという間に火の紋章はトレード完了となった。

 そして一番奥の扉まで引っ張られていくと、私達の持っている四つの紋章が輝き出す。そしてそれに反応するかのように、大きな扉が開き出した。


「沙南、行こ」

「うん!」


 吸い込まれるように中へ入ると、巨大な骸骨のような魔物が待ち構えていた。

 わぁ、ここのボスなんだね。なんだか忍者さんと戦いすぎて、すっかりボスの存在を忘れてたよ……


「沙南、私が囮になるから、沙南がその攻撃力で叩いて」

「わかった。……あ、けどルリちゃんはボス戦の称号は選ばなくていいの?」

「特に決めてない。私は平均的に伸ばしてる。ボスを倒せば全体的に能力が上がる称号を貰えるから、それでいい。あと、MP回復させる魔法薬、プレゼントでまた送っとくから」

「ありがと~」


 そう言って、ルリちゃんはボスに向かって走り出す。気を引き付けて、私に後ろを向けるように誘導してくれていた。

 私は魔法薬を使用して、MPを回復させる。忍者さんと戦っている間も私をアイテムでサポートしてくれていた。

 よぉし! それじゃあ今のうちに攻撃するよっ!

 私は骸骨の足元まで行くと、拳を構える。


【沙南がスキルを使用した。力溜め】

【沙南が特技を使用した。咆哮牙】


 獣の咆哮と共に、私の攻撃が骸骨にヒットする。

 すると断末魔と同時に体中の骨がバラバラになり、みるみるうちに崩れ去っていく。

 いつも通り、一発で決着がついちゃった……


【がしゃドクロを倒した】

【沙南のレベルが26に上がった】

【沙南は新たな称号を手に入れた。がしゃドクロを屠る者】

【沙南は宝箱を開けた。ガチャチケット】


 やったー! これでガチャチケットがログインボーナスの分と合わせて二枚になったよ! さっそく街に戻って引きたいなぁ。

 私達は地下四階へ進む前に、転送装置を利用して街へ戻る事にするのだった。


――現在のステータス

LV :26

HP :2900

MP :185

ATK:2360(3068)

DEF:215

INT:45

RES:150

AGI:290

DEX:220

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼女がけなげに頑張ってること [気になる点] これレベル差がやばいリア友にわざと負けてもらったら結構差がつくんじゃね? [一言] 次も楽しみにしています。
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