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嘘つき

舞台は前日の夜に戻る。

  

「あれーティヤム様、どうかしましたかー?」

 ニヤニヤ笑いながらメーアが言う。


 今までのオドオドとした態度はどこにいったのか、突如キャラクターが変貌したかのような態度を見せるメーアに困惑を覚えるティヤム。


「いや、急に何というか印象が変わってね。少し戸惑っている」


「ははぁ、まぁ仲良くしましょう。それに何だったら、元のキャラにもどりましょうか?」


「その必要はないさ、それにそういう人を小馬鹿にしたような態度は実に好みだしね」


「え、もしかしてティヤム様ってそっちの気があったりするんですか? ちょっと、引きますねー」

 と、言葉だけでなく実際に後ずさりをする。もちろん、単なるポーズなのだが。


「それは黙秘しておこうかな。それよりも君はどうして、今まで態度は偽っていたんだい?」


「私も色々訳ありでしてね。あぁいう根暗な態度をとっておけば、ボロも出にくいでしょ? それと君とかいう他人行儀な呼び方は止めてくださいね。お世話したりされたりの関係なんですから」

 メーアは憂い気な表情を見せたかと思えば、ケラっと蟲惑魔のように笑みを浮かべる。


「それならなぜ、私にはその態度をさらけ出したんだい? 偽り続ける方が理にかなっている。私がみんなにそのことを吹聴して回るかもしれないのに」

 (最もそんなことはしないのだが)とティヤムは内心思いつつ発言をする。

 その発言を聞いたメーアはやれやれといった表情で首を竦め口を紡ぐ。


「下らない問答はここで打ち止めです。それにティヤム様も態度を偽っているでしょう? あんまり畏まりすぎても肩がこるだけですよ。お互い気楽に素でいきましょう」


「いやまぁ、多少は気を遣って喋ってはいたけどね。でも、そういうことなら普通に喋るかな」


「そうそう、その方がいいですよ。さて、お互いに素になった所で大事な話をしましょうか」


「大事な話?」


「そうですよ。まぁ端的に言うと、今後の身の振り方ってやつですよ」


「そんなのフューラさんにもいった通りのことをするだけだけど」


 その言葉をきいたメーアは口に手を当て大げさに驚く、振りをした。

「あぁ、あの時の言葉は本音だったんですね。てっきり面倒だから、その場を流すために適当に言ったのかと思ってましたよ」


「まあ、そこまで腐ってはいないよ。困っているんだったらできるだけ助けたいしな。もちろん自分の出来る範囲でだけど」


「へー。でも、ティヤム様ってそこまでエリートって訳でもないんでしょう? 薄々気づいているけど。実際に何とか出来るんですかー?」

 ケラケラといった擬音が聞こえてきそうな顔でメーアがいう。


「まぁ、そうだけど。メーアは何というか堂々とそういうことを言うんだな。でも、一応そこそこの立場ではあるんだぞ、断じてそこらの一兵卒っていう訳ではない。とにもかくにも軍のお偉方に色々聞いてみてからだ。それ位のことは出来るしな」

 何となく取り繕う気持ちで、ティヤムは虚勢を張る。


「ふーん。ティヤム様って軍ではエリートではないけれど平々凡々な人間でもない、中の上くらいな感じの立ち位置なんですね。でも、話しの本題はそこじゃないんで話を戻しますね。さて、本題に入りますね。この街に来るって言う亜人狩りですけど、そもそもそんなのはいませんから」


「は? じゃあ、さっきまでのやり取りは何だったんだ?」


「単純にティヤム様が騙されているだけですよ。大体、村が危険だっていうのにみんなが酒を飲んでどんちゃん騒ぎなんてしないでしょう? できるってことはそもそも危険ではないか、今日が危険じゃないと知っているのかのどちらかですよ」

 当たり前じゃないですかとばかりにメーアが言う。


「なるほどな」

 正直、全貌が見えていないのだが格好だけはつけようと相槌を打つティヤム。


「いや、いいですねー。ティヤム様のそういう小物っぽい所、私すきですよー。まぁ、それは置いといてさっきも言った通り亜人狩りなんていないんですよ。厳密にいうと亜人が嫌がらせをされていたのは本当ですし、一回は村にちょっかいをかけたこともありましたけど」


「ふーん。それで?」

 取り繕うこと止めて、先を促すティヤム。


「ちょっと話を変えますけど、ティヤム様、嘘に信憑性を持たせるにはどうすればよいと思いますか?」

 突如、質問を投げかけるメーア。


「そうだなぁ。そもそもの噓の規模を小さくしたり、周りの人間を巻き込むとかじゃないか? 前者は単純に気づきにくいだろうし、後者に関しては人間は流される生き物だからな」

 とりあえずは自分なりの回答を提示するティヤム。

 すると、メーアをポンっと手を叩き発言をする。

「概ね正解だと思います。あとは意識を嘘ではない他のところに移すとかですかね。今、手を叩いたときティヤム様はそちらに注目したでしょう? そう言う時、他のことが一瞬、意識から外れるんですよ。で、後で勝手に自分で整合性をとっちゃうんですね。さて、それらを踏まえて質問です。嘘を吐いているのは誰だと思いますか?」

 また、ニヤニヤと蟲惑魔的な笑みを浮かべ、メーアが質問を投げかける。


 夜はまだ、始まったばかり。


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