答え合わせ
「って訳でな」
「はぁ、それはまた大変ですね」
食事を終え、先ほど起きたことをメーアに説明するティヤム。
一方のメーアは他人事というか、いかにも興味がなさそうだ。
「なんだよ、反応悪いな」
「大体、物事の流れが分かっちゃいましたからね。というか、ティヤム様もおおよその見当はついているでしょう?」
「さぁ、どうかな?」
もちろん、ティヤムにも大体の見当はついている。
とはいえ、細部までは掴めているわけではないのだが。
ここで、閑話休題とばかりに違う話題を上げる。
「そういえば、ラーイも魔法が使えるんだな」
「えぇ、そうですよ。あんまり、こういうことを言うのもあれですけど彼女は天才ってやつですよ。今の時点では、それほど抜きん出た存在というわけでもないですけどね。けど、いずれはいいところまで上り詰めてもおかしくないでしょうね」
「なるほどな。羨ましい限りだよ、俺にもそういう才能がほしかったな」
どこか、自虐的に笑みを浮かべつつ呟くティヤム。
「無い物ねだりをしたりしてもしょうがないですよ。それに才能の有無なんて分からないですからね、人間誰しも得意なことの一つや二つはあるものですよ」
「慰めてくれてありがとよ。そういえばラーイは本を読んで独学で使えるようになったらしいけど、お前はどうなんだ?」
「私ですか? そうですねぇ、まぁ真っ当に勉強はしましたよ。彼女みたいに本を読むだけで理解できるわけではなかったですからね。今となっては懐かしいだけですけど」
どこか、遠い目をしながら話すメーアの態度から、これ以上の深堀をするべきでないと判断し強引に話題を変える。
「ところで、メーアもラーイも魔法を使えるんなら、もう一人のあの子も魔法をつかえたりするのか?」
こんな辺境で魔法を使える人間がそうそういるとは思えないが、現に2人見てしまった以上は、まだいるかもしれないと、ティヤムが考えるの自然だろう。
「あぁルミのことですか? 彼女は使えませんよ。あの子は致命的に才能がないですからね、色々不憫な子ですよ」
憐憫の表情を浮かべるメーア。
「まぁ魔法を使うってのは、そんな簡単なことじゃないからなぁ。現に、俺も使えないしな」
「ティヤム様は割り切っているからいいですけどね。ルミの立場になって見てくださいよ。仲良しの友達が、いとも簡単に行っていることが自分にはできないんですよ。まぁ、私も使えないことになっているので仲間がいると思えているのもあるでしょうけど。それでも辛いと思いますよ」
「たしかに、そのぐらいの年ごろだと自分が一番でありたいと思うもんだからなぁ」
かつては、彼自身も自分こそが物語の主人公だと思っていたのだから、その気持ちは分かる。とはいえ、いつかは現実に嫌でも向き合わないといけないのだが。
「さてと、無駄話はここいらでいいでしょう。それじゃあ、本題の答え合わせでもしますか」
唐突にメーアが切り出す。
「さっきまで、どうでもよさそうだったのにどうしたんだ」
「何となくですよ。それじゃあ、ティヤム様の考えをお聞かせください」
これ以上は言わないと態度で示す。
「まぁ、分かった。とりあえず、今回の遺体を用意したのはフューラさんだというのは間違いないと思う」
「えぇ、そうでしょうね。私もそう思います」
「遺体の正体は分からないように顔を焼かれていたわけだけど、多分村外の人間なんだろうな。フューラさんの目的は俺と村人の危機感を煽ることだろうから、本来なら村の人間が襲われたって方が都合はいい。けど、それを用意できなかったからこそ顔を焼いて判別できないようにしたんだろう」
「それじゃあ、遺体の正体は誰だと思いますか?」
「さぁな。正直、遺体の正体は何でもいいんだよ。そこを明らかにすることは、ほとんど意味がないことだからな」
「流石ですね。じゃあ、他に重要なポイントはどこだと思いますか?」
「正直に言うと、今回の件で重要な点っていうのはフューラさんが遺体を用意したっていう一点に尽きるんだよな。そりゃあ、実際に犯行を行ったのは誰かとか、恐らくあの男の人を含めて共犯者がいるとか、気になることはあるけど明らかにすること自体は重要じゃないからな」
今回の事件自体は、フューラが仕組んだものであることは間違いない。とするならば、細部については無視しても構わない。問題となるのは、このことによってどのような影響が生じるかである。
「へー意外とティヤム様も考えているんですね」
「まぁ、大局的に物事を見ろって言うのは、ずっと言われ続けていたからな」
「いやぁ、いい事を教えてもらっていたんですね。素晴らしいことじゃないですか。」
「とにかく問題は明日だろうな、流石に村の人間を味方につけられたらフューラさんの要求を断りきれない。でも、たかだか銃程度にここまでするのもどうかと思うけどな」
ティヤムの疑問も最もである。銃など、最悪屋敷から盗み出してもいいのにわざわざ死体を用意してまで手に入れようとするなど労力の無駄である。
「多分ですけど、目的が変わったんじゃないですか? 恐らく、最初はここまでするつもりはなかったんでしょう。けど、今は銃の云々よりも軍の協力を得る方向にシフトしているのかもしれません。だからこそ、死体がわざわざ魔法で焼いたんでしょう。その方が、より脅威があるように見えますからね」
「だとしたら、取引を継続させて安全を確保してから行った方がいいんじゃないか?」
最もな疑問を挙げるティヤム。
「そこら辺が、あの人の残念なところなんですよ。要は先に自分の安全を確保したんでしょうね。恐らく死体は取引相手そのものなのでしょう」
「よく分からないなぁ、わざわざ取引相手ではなくても死体ぐらいなら用意できないこともないだろうに」
恐らく、彼女はその取引によって村の人間を犠牲にしているのだろうから。
「逆に考えてみてくださいよ。今回は村の人間の協力が必要なんですよ。流石に村の人間を殺すと言ったら協力も得られないでしょう。だからこそ取引相手を殺したんです。恐らくは何らかの言い訳をしてです。それくらいの信頼は彼女にはありますからね。まぁ、遅かれ早かれ始末はする予定だったんでしょうから、都合がよかったというのもあるんでしょう」
「もし、仮にだけど軍の協力が得られなかったり、得られたとしても準備が整う以前に攻められたら、フューラさんはどうするつもりなんだろうか?」
「さぁ、あんまり考えていないんじゃないんですかね。いざとなれば、銃が10丁あればどうにかはなるでしょうし。ティヤム様も流石に、実際に襲われれば銃を渡すと考えているんですよ」
「肝心なところで詰めが甘いな」
「というか全体的に行き当たりばったりなんですよね」
お互いにはぁとため息をつく二人。
何はともあれ明日になってみないと、物事がどう動くかは予想できない。




