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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
〜 スピリットガーデン編 〜
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【Side:ブレイブ】ステラとゴールドと俺

挿絵(By みてみん)


 俺は凹んでいた。


 どういうことかと言うと、火剣使いヒュールが口にした一言で俺の心は折れた。


 『アリスが金色のマスクを付けたヤツとキスをしていた』


「え?え?どういうこと?どういうことだよぉああ〜!?」


 俺は横になっているヒュールの胸元を掴み激しく揺らす!ヒュールの後頭部が石畳に何度も激突し白目を剥く。


「やめてよ、ブレイブ!ヒュールが死んじゃうよ。」


 パチャムが俺を羽交い締めにして制する。


「あぁ、そうだな。ヒュールじゃないんだよな、ソイツ。」


 俺がどんなにアリスに気持ちを伝えても通じることは無かった。きっと、元の世界に許嫁が居るからだと思っていた。そう思わないと自分の気持ちに押し潰されそうだったから……。


 転生前のブサメンならまだしも、転生してイケメンエルフになってなお、アリスからはふられているのだから一途に許嫁のことを想っているんだと思っていた。


 それなのに!


 アリスがヒュールの目の前でキスをした!?それも、許嫁でもなく、俺でもなく、知らないヤツと?


 本当に分からない。何で!?


 許嫁が居ないこの異世界なら、この今のイケメンな俺がアリスの一番だと思っていたのに……思い込んでいただけなのか。


 そうか……ブサメンだった僕のことを知っているからか。いくらイケメンに転生しても、元はブサメンだと分かっていれば僕なんか選ばない。眼中に無いよな。


 あぁ、何でだろう。胸が躍るほど恋していたアリス、いや月島さんに14年の時を超え、こんな異世界で再開できたことは僕だけの奇跡であって、彼女にとっては何の意味も無い偶然なんだろう。


 もうダメだ。最初は興奮と混乱とで高まっていた気持ちが、今はもう底無しの沼に飲み込まれていた。


「ゴメンみんな、俺……ちょっと、もう帰る。」


「え?」


 パチャムとファナがどんな顔をしているか知らないが、俺は下を見ながら歩き出す。


「帰るって……ヒュールを本部に連れて行かないと。」


 パチャムが何か言ってるけど、どーでもいい。


「ブレイブ、待ってよ。アリスのことで落ち込んだの?」


 ファナが何か言ってる。でも、どーでも……何かに掴まれた。先に進めない。何だかイライラしてきた。


「そうだよ。悪いかよ。」


 掴んでいた手が離された。俺は歩き出す。


「ブレイブ、ファナを悲しませるなよ!勝手すぎるよ!!」


 そうだな、自分勝手だよな。僕は元々そういうヤツなんだよ。


 転生したことを良いことに『吾妻あづま 勇樹ゆうき』ではない『ブレイブ』というキャラを演じていただけ。本質は根暗でキモオタでわがままな子供のままだ。悪いかよっ!!


 二人はもう俺を引き留めはしなかった。


◇◇◇


「あっれー?そこのイケメン君はブレイブだよね?顔暗いケド。どしたの?」


 聞き覚えのある声。


「牛子か。」


「ちょっ!だからウシコはやめてって。ステラだよ。」


 本当に牛子そっくりだな。エルフでなければ容姿も声も性格も全てが幼馴染みの牛子そのものだ。姉のようであり、初恋の相手でもあった。子供の頃の話だけど。


「ゴメン。」


 俺はそういうとステラに抱きついていた。昔から嫌なことや悲しいことがあると牛子に抱きついて泣いていたっけ。


「何かあったの?」


 頭を撫でてくれた。懐かしい感覚だ。心が安らぐ。


 ステラに手を引かれてメインストリートにある噴水に腰掛ける。そしてステラは俺に飲み物を渡してくれた。


「搾りたてのフルーツジュースだよ。」


「お酒が良かったな。痛たーっ!」


 本音を言い終わるやいなや耳をつねられた!


「未成年なんでしょ!お酒は20歳になってからだぞ!!分かった?」


※日本でのお酒は20歳になってから!


「わ、分かったよ〜。」


 懐かしい。牛子が怒る時も耳をつねってきたっけ。


「で、何があったの?」


 ステラは真剣な眼差しで俺の目を見つめていた。ステラなら……。俺は胸の奥に澱む思いを打ち明けた。


◇◇◇


「そうなんだ。その片想いのアリスって子が誰かとキスをしていたと聞いて苦しくなったんだね。分かるよ、その気持ち。」


 ステラは俺の手を握りながら頷いてくれた。


「何でも金色のマスクを付けたヤツらしいんだ。どこの誰なんだ!」


「金色の……マスク?」


 ステラは考え込んでいるようだった。


「ステラ、見つけた!」


 ステラの名を呼ぶその声。俺たちはその声の方に目を向けると、そこには金色のマスクを付けたエルフ……の女性が居た!


「ゴールド?」


 ステラは驚いた様子で立ち上がり、そのゴールドと呼ばれたマスクの女性に駆け寄る。


「こんなところで会えるなんて!急にゴーフ……んぐ〜」


 ゴールドは手でステラの口を塞ぐ。そして耳元で何かを囁く。


「そ、そーだね。危ない危ない。でも、何も言わずに居なくなるから寂しかったよ。」


「すまない。あの時は急いでいたのでな。それより、その耳は変……むぐっ」


 今度はステラがゴールドの口を塞いだ。


「すまない。しかし、道理で見つからない訳だ。」


 二人は知り合いらしいが、俺が気になるのはあの金色のマスク。


「もしかしてさ、ゴールド。アリスとキスしたのって貴女なの?」


 おぉ!確信部分をダイレクトに聞いてくれたステラ、神ってるよ!!


「何と!もうアリスのことを知っていたのか?そうか。私が君たちに贈るサプライズだったのだが。何よりだ。まあ、あのキスは成り行きなのだがな。ハハハッ!」


「ちょっと待って?女性の貴女がアリスとキスをしたっての?どういうことなんだ?」


 俺はゴールドに近寄り問い詰める。


「それは悪いことをしたかな、ブレイブ。では黒髪の姫から奪ったものを騎士殿にお返ししよう。」


 何が起きたのか分からないまま、俺は唇を奪われていた。

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