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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
~ めぐりあい編 ~
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【Side:ブレイブ】中二病は伊達じゃない!

挿絵(By みてみん)


 人狼のキリコは、その小さな身体からは想像できない程の力で俺を襲いかかって来る!飛び散る血飛沫!!


 そのしなやかなバネを活かし加速することで威力を増幅させているのだろう。その速さはより捉え難く、威力はより増すという攻防一体の技だ。強くなったハズの俺は正直、敵を軽んじていた。だけど!


「その息吹で戒めろ、『スノーホワイト』。一の斬『フリーズ・ウィンド』!」


 淡く耀く氷の剣で空を切ると、その先にあるモノが瞬時に凍結して行く。地面、木々やモノなど、人狼が飛び回る道具を次々と凍らせた。


 凍結したモノは滑ってしまい、足場には出来ないようだ。動きが止まった。計画通り!


「くっ!『ダンス・ウィズ・ナイブス』。」


 人狼は高速でバク転するといくつもの煌めきが生まれた。


「うあっ!痛えっ!!」


 俺の右腿と左腕にナイフが刺さる!目にも止まらぬ速さでナイフを投げていた!?


「何だお前は!」


 人狼は驚いた顔で俺を見る。いや見てない!俺は警戒しながら後ろを振り向く。倒れるファナの前にはアリスが立っていた。その両手にはダガーが握られていた。


「ナイフを投げるなんて、危ないじゃないですか。」


 アリスのそばには何本ものナイフが落ちていた。


「お前、人間だよな。さっき巨人族のヤツに殺されたんじゃないのか!?」


「お陰様で。あの巨人はそこに居るブレイブが倒してくれました。」


 人狼の表情が明らかに曇る。


「嘘だろ、アレはそんな簡単にやられる奴じゃない。それにお前らの作戦の裏をかいたのに、何で!?」


 俺たちスピリットガーデン軍の奇襲にわざと掛かったフリをして、逆に温存した部隊で返り討ちにする予定で、手練れを残していたのだろう。多分、手練れの中でもあの巨人が倒されたことは想定外だったようだ。


「そう、この俺『アビスの氷剣使いブレイブ』があの巨人を凍らせて粉砕してやったぜ。次はお前の番だ、人狼。四肢を一本ずつ凍らせて動けなくしたら……ゆっくりと地獄の拷問を楽しませてもらおうか。ゆーっくりと嬲るようにな……。クフフッ!」


 俺は掌で片目だけ覗かせるようにし、冷酷な笑みを浮かべながら人狼を舐めるように見つめた。


「気持ち悪いな、お前、ブレイブだったな?その名は忘れない。次こそお前を殺す。」


 人狼キリコは指笛を鳴らすと器用に凍結していない場所に飛び退き、そのまま走り去って行く。その際、お腹を庇うように押さえていた……寒さでお腹を冷やしたのかな?


 残った敵兵たちも散り散りに撤退していった。


 それ以上、深追いはしなかった。あの強敵が退いてくれて正直安堵したから。目覚めたスノーホワイトの力ならまだ戦える自信はあったけど、これ以上戦いたくは無かったから。


 後で知ったことだが、先にファナが必殺の一撃をキリコに叩き込んだということ。つまり、手負の状態ですら俺を圧倒していたのだから、万全のキリコは……もう出逢いたくない敵だと思った。


 負傷して気を失ったファナとパチャムをアリスが回復魔法と薬で治療してくれた。流石に司祭のパチャムのように全治させるほどの治癒魔法はできないらしい。それでも一命を取り留めるに足るものだった。


 一通り負傷した味方の手当てが終わったアリスに水を差し入れる。


「ありがとう、ブレイブ。助かったわ。」


「そんな。俺の方こそありがとうだよ、アリス。また君に助けてもらった。」


 俺たちはお互いに感謝し労う姿に吹き出してしまう。あんな死闘の後なのにまた君と笑えて……俺は幸せを感じていた。


「その剣……精霊、目覚めたんだね。『スノーホワイト』……その子は『白雪姫』なんだね。良い名前だと思う。」


 アリスは……月島さんは覚えてるかな?


 最後にキミが図書室で手にしていた本が『白雪姫』だったことを。俺には14年前の記憶だけど、良く覚えてる。だから、この剣に『スノーホワイト』と名付けたんだよ……なんて言えない。


「うん、そう思うよ。」


 俺は顔が火照りそうになる。


「あと……最後、人狼の女の子に言った台詞……どうなのかなって。ブレイブってそうだったんだね。」


 あっ!アリスが居るのをすっかり忘れて中二病的イタイ発言をしてしまった。結果として強敵を撤退させることが出来たけど、アリスには俺が変態で異常な性癖があると誤解されたのではないか?


 焦る俺を眺めながら、アリスは少し悪戯な上目遣いをして笑う。


 そこにリフィーが立ち入ってくる。


「ブレイブ、そのアイスソード……覚醒できたのか?」


 明らかに怪訝そうな面持ちで俺を睨む。まさか精霊王に力をもらったとは口が裂けても言えない。どうしよう……。


「きっと、ブレイブの危機を救うために……アイスソードが目覚めたんですよ……きっと。」


 アリスがフォローを入れてくれたが、『きっと』が重なっているところが白々しいかなと感じた。リフィーは俺の『スノーホワイト』を凝視する。


「そうだ、きっと俺の窮地を察し、奇跡的に氷の精霊が目覚めたんだな……きっと。」


 しまった!?アリスの白々しさが無意識に俺にも伝染してしまった!!


「何にせよ……その剣は正真正銘の伝説級の武器に進化した訳だな。その力は勇者にも届き得るものだろう。せいぜい……大切にするのだな。」


 リフィーが俺に掛ける言葉としては珍しくまともな台詞だなと思った。こりゃあ雪でも降りそうだ。よし降らそう!


 ひとまず敵駐屯地強襲作戦は勝利で幕を引くことが出来た。


 人狼の少女キリコは逃したが、大物の巨人をはじめ多くの敵兵を倒すことができた。しかし、ジェイス曰く、こちらの被害も相当なもので、中隊30名のうち17名も命を失い、残りの者もほとんどが負傷していた。


 本当の冒険や戦争はゲームのようにはいかないと痛感させられた一戦だった。

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