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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
~ めぐりあい編 ~
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【Side:ブレイブ】復讐の鬼ごっこ

挿絵(By みてみん)


 アリスのご奉仕を目の当たりにした俺は驚愕した!これはアカンってー!!


 何度も言うけど、この世界での人間は最底辺の種族なのだ。アリスの正体を知らない奴らにしてみれば自分より身分の低い人間にコケにされたのだ。これはタダでは済まないっ!!俺がアリスの盾になるのはやぶさかではないが……多勢に無勢。気合だけで何とかなるとは思えない。ど、どうしよう!?


 案の定、ヒュール達から怒号が上がる。それは総じて人間がこんなことをしてタダでは済まさないというものだった。


「何をやっている!?」


 騒ぎを聞きつけてジェイスが走ってきた。


「これは……上級魔法か?お前はブレイブのトコのアリス。とにかく魔法を止めるんだ!」


 ジェイスの言葉にアリスは重力魔法を解除する。


「隊長、この人間が俺らに魔法で攻撃をしてきたんだ!!許せねぇぜっ!!」


 ヒュールに呼応するようにアリスを非難する声が上がる。


「ふざけるなぁ!お前らがアリスに吐いた言葉、か弱い女の子にしようとした卑劣な行いこそ……俺は許せない!!」


 俺は迷わずアイスソードを抜き、クズどもに刃を向ける!


「ブレイブ!これ以上は引き返せなくなるぞ。剣をしまえ!!」


 俺はジェイスに視線を向ける。怒気を孕んだその視線に気圧されそうになる。だけど……引けない!!アリスのためなら俺は無敵だ!!!


「中隊長、コイツ等をアンタが処分してくれるなら、引こう。だが、そうならないなら俺はココに居る全員を相手にしてやる。アリスへの侮辱だけは……引けない!!」


 そんな俺の横にアリスが並び、見上げるその顔には微笑みがあった。


「ブレイブ、ありがとう。……嬉しい。」


「アリス、俺は一緒にいるから。」


 ヒュール達は俺たち二人を取り囲もうとしていた。


「お前等!?」


 制止を聞かないヒュール達、そして、俺の間に入るジェイス。


「そこまでにしろ!」


 野次馬を掻き分けて現れたのはリフィーだった。彼女は堂々と渦中に入ると通る声で話す。


「聞け!その人間には一切手を出すことを禁ずる。これは我が主……勇者クリスティーナの言葉と知れ。」


 リフィーはその腕に輝くガントレットを掲げる。そこには勇者クリスティーナの紋章が刻まれていた!


 紋章を目にした全員が言葉を失う。


「その人間アリスは主クリスティーナの客人だ。この意味が分かるな!!以上だ。」


 一瞬であった。蜘蛛の子を散らすようにその場に居た奴らは走り去って行った。いや、一人を残して。


「勇者の客人だと?人間が!?どういうことなんだ?」


「聞こえなかったのか?以上だと言った。貴様などが知る必要は無い。消えろ。」


 あのリフィーに口ごたえるなんて、ヒュールは相当イカれてやがる!俺なら怖くて何も言えないよ……。


 ヒュールは唾を吐きその場を去る。


「俺が諫めるところをスマンな。しかし勇者の従者とは驚きだ。」


「中隊長殿、部隊の手綱を締め直してもらわんと困るぞ。」


 流石のジェイスも頭を下げていた。


「ありがとう、リフィー。」


 アリスもリフィーにお礼を言う。俺もそれに続けてお礼を言う。


「主の名は出さないつもりだったのに……貴女は。まぁ、私ならあの場で全員殺していたかもだが。慎むように。」


 物騒な台詞を残してアリスの腕を掴んでリフィー達はその場を去った。


「ブレイブ……何だアレは?怖ぇ。」


「うん。」


 残ったジェイスと俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。


◇◇◇


 俺たち第23中隊は敵軍が駐留すると思われるエリアに接近していた。狩人のリフィーを中心とした偵察部隊のお陰で敵軍の規模や場所が判明した。


 中隊長ジェイスと各小隊長、そして偵察隊リーダーのリフィーで戦略会議を設ける。


「私はアリスを囮とした打撃作戦を進言する。」


 リフィーはとんでもない作戦を言い出した!


「アリスを囮って!?」


 俺は真っ先に反応した。例えそれがリフィーでもアリスのことでは黙っていられなかった。


「人間を囮だと?すぐに殺されて終いだろが。ま、俺はそれでも構わんがな。」


 本来ジェイス小隊隊員のヒュールがこの場に居るところではないのだが、ジェイスは中隊長として参加するため、ジェイス小隊隊長代理としてコイツが参加していた。俺とヒュールはガンを付け合う!!


「勇者の客人を危険に晒しては問題ではないか?リフィー。」


「アレならうまくやるハズ。信じられないなら試すがいい。」


 リフィーは自信満々にアリスを囮に推薦する。俺はとにかく反対するが、そんな声は無視される。


 結果としてアリスを捕まえることができるか、つまり鬼ごっこでその実力を証明すると言い……その相手を指名するリフィー。


「俺だと?いいのか?恨みをぶつけて再起不能にしても知らんからな!」


 ジェイスはそれで了承する。すんなり過ぎるな……きっとリフィーが事前に根回ししていたのだろう。ということはアリスも承知だろう。


 俺は複雑な心境だった。ヒュールの鍛え抜かれた肉体は正直脅威だと感じた。復習に燃えるヒュールのことだ、どんな手を使ってでもアリスを潰しに来るだろう。アリスの身に何かあってはと不安がよぎる。


 しかし……アリスの実力は誰よりも俺が良く知っている。これは……この勝負はアリスの勝ちだろう。


 なんせ、彼女は『魔法少女』なのだから。

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