【Side:ステラ】営業時間外の招かれざる客、ご来湯!?
「しかし、この国は人間使いが荒いよね!あんなにがんばったのに、まだ働かせるんだからさー。まあ、あんな失態をしたから、その罰でやらされてるんだろうけどさ。自業自得だよね。ハハ。」
王宮武闘大会で勝ち残ったとは言え、魔獣王の御前での無礼な行動への罰なのだろう。命があるだけ儲けものと思う。
「ステラは頑張ってるよ!初めてなのにあそこまで活躍出来る人なんていないよ。失敗は誰にでもあるから気にしないで。」
ミッシェルが勤務初日に厨房での活躍を褒めてくれ、さっき寝過ごしたことは仕方ないと慰める。
「ステラの身体、傷やアザだらけだけど……その、大丈夫?痛そう。」
フェイトが心配そうに尋ねる。衣服を脱いだ時にわたしの身体を見たミッシェルとフェイトは正直驚いていた。ミッシェル曰く、いくら人間が最底辺の種族でも、ここまでの傷やアザを付けられるような虐待を受けることはそう無いらしい。
「あー、これは……わたしが弱いからかな。これも自業自得なんだよ。気にしないで。」
王宮武闘大会での戦いでできた身体中の傷やアザがフェイトやミッシェルには痛々しく見えたようだ。
「聞きにくいけど……その縛られたような跡。ここに来る前、酷い目にあったんじゃないの?」
ミッシェルは性格的に気になると聞かずにはいられないようだ。
「そうだね……ここに来るまでは奴隷だったし、思い出したくもない辱めを受けたんだよね。これはその時の跡なんだ。ハァ、もう死んだほうがマシだったよ、ホント。」
遠い目をするわたしにミッシェルとフェイトが抱きついてくる。
「ごめんなさい、ステラ!そんなことがあったなんて知らなかったから。これからは何でも言って。わたしがステラを助けるから!」
「ステラ……これからは一緒だからね。わたし、何もできないかもしれないけど、生きてればきっといいことあるから。ね。」
あれ?自虐ネタのつもりだったのだが、思いのほか2人の反応が真剣過ぎて面喰らってしまう。
「あ、ありがとう。こんなわたしのことを心配してくれて!!わたしも2人の大好きだよ〜。」
「パチパチパチパチ!いやぁ、感動じゃないか。なぁ、お前たち。じゃあ、感動の後は快感を楽しもうじゃないか、一緒にさぁ。」
大浴場に入ってきた裸のゴブリンが話し掛けてきた。続いて素っ裸のゴブリン3名とオーガ2名が入ってくる。この感じ……どこかで?まだ何かが潜んでいる気配がする。
怯えるミッシェルとフェイトだったが、ミッシェルは恐怖を振り払い言う。
「い、いまは入浴時間ではありません。清掃中なので出て行って下さい。」
「そんなこと言うなよ、女。人間は俺らに奉仕してないと生きていけないよなぁ?お前たちが言う事を聞けば今の生活がこれからも続けられるんだよ?言う事を聞かないとどうなっちゃうと思う?なぁ、仲良く風呂を楽しもうぜ。ゴヒヒヒヒッ!」
ゴブリンAが下卑た笑みを浮かべる。そして、素っ裸のゴブリン達が股間を弄りながら浴槽に入ってくる。
「いやっ!来ないで!!」
フェイトが涙目で拒絶する。
「おおお、素敵な泣き声で鳴くねぇ~。その声だけでもうビンビンだっぜ!この女は俺がいただきーっと!!」
ゴブリンBがフェイトに興奮する。
「あなた達、もしかして騎士団員?」
一応、ゴブリン達に尋ねてみる。
「あん?騎士団員寮にいるんだから、騎士団員に決まってるだろうが、お前馬鹿か?」
ゴブリンAが答えながら人間を見下した態度で嘲笑う。
「いやぁ、随分と品が無いので、ただの変質者だと思いました。それがまさか騎士団員とはね。あなた達の上官は誰よ?」
煽りながら問い正す。身体を隠すよう、ミッシェルとフェイトと固まって湯船に浸かりながらなので、あまり迫力は無いが。
「おい、人間。調子に乗るなよ!そんなことはお前には関係ないんだよ。これから俺らゴブリン様の溜まった性欲をお前等に処理させてから、オーガ先輩達が夜食をお望みなんだよ。硬くて臭いババァの肉じゃマズイよなぁ?だからさ、一石二鳥な訳よ、君達はさ。分かるよね?人間なんてそれくらいしか役に立たないんだからよ、大人しくしてりゃ可愛がってやるからよ。」
ゴブリンとオーガ達が近づいてくる。
「た、助けてください。何でもしますから、命だけは助けてください!」
「わたしも何でもしますから、わたし達を助けてください。死ぬのは嫌です。」
恐怖に打ち震えるミッシェルとフェイトはわたしに縋りながら涙ながらに懇願する。
「二人とも、それは!?」
それは自らを無条件で貶める『奴隷』への宣誓!




